【PMBOK第7版】ステークホルダー・パフォーマンス領域について解説
プロジェクト・マネジャーとして、プロジェクトを成功させるためにはどこに注目すればよいのでしょうか?
プロジェクトマネジメントのガイドラインであるPMBOK第7版では、「プロジェクトの成果を効果的に提供するために不可欠な、関連する活動」をプロジェクト・パフォーマンス領域と呼び、以下の8つの領域に注目しています[1]PMBOK第7版「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド」、7頁。。
- ステークホルダー
- チーム
- 開発アプローチとライフサイクル
- 計画
- プロジェクト作業
- デリバリー
- 測定
- 不確かさ
プロジェクトは様々な要素が影響して成否が決まりますが、これら8点に注意をすることで、プロジェクトの成功率を大きく高めることができます。
今回は8つのパフォーマンス領域の1つである「ステークホルダー・パフォーマンス領域」について解説していきます。
ステークホルダー・パフォーマンス領域とは何か?
プロジェクトは様々な人間が関わりながら進められます。
プロジェクトに関わったり、影響を受けたりする人を「ステークホルダー」と呼びますが、プロジェクトを成功させるにはこれらステークホルダーの協力が不可欠です。
ステークホルダー・パフォーマンス領域では、ステークホルダーと協力して作業したり、連携して良好な関係を築いたりして満足度を高めていきます。
PMBOK第6版では、ステークホルダー・パフォーマンス領域で行われる活動を「プロジェクト・ステークホルダー・マネジメント」で実施しています。
ステークホルダーとは何か?
ステークホルダーとはプロジェクトの関係者を指します。プロジェクト・マネジャーを中心とするプロジェクト・チームのメンバーもステークホルダーですし、プロジェクトで生み出すプロダクトやサービスを使うユーザー(エンド・ユーザー)もステークホルダーです。
さらには、チーム・メンバーの上司や、関係する公共機関など、直接プロジェクトに関係しない人もステークホルダーに含まれます。
プロジェクトを成功させるためには、直接的・間接的にプロジェクトに関わる様々なステークホルダーと良好な関係を築くことが肝心です。
そのため、ステークホルダー・パフォーマンス領域では、ステークホルダーとの関係構築を考えていきます。
このステークホルダーについては、下記の記事もご参照ください。
ステークホルダーとの関係を良くするには? ―ステークホルダー・エンゲージメントの概要―
ステークホルダーとの良好な関係がプロジェクトの成功の鍵といっても、実際にどのようなことをすればよいのでしょうか?
PMBOKではステークホルダーと良好な関係を築くための一連の活動を「ステークホルダー・エンゲージメント」としてまとめています。
ステークホルダー・エンゲージメントの活動は以下のとおりです。
- 特定
- 理解と分析
- 優先順位付け
- エンゲージメント
- 監視
ここからは、これらのステークホルダー・エンゲージメントの活動を概観していきましょう。
特定
「特定」では、プロジェクトのステークホルダーを特定していきます。
チーム・メンバーやエンド・ユーザーのように、プロジェクトに直接関係するステークホルダーはプロジェクトの開始前からその存在が認識されますが、プロジェクトに間接的に関係するステークホルダーは特定が困難な場合もあります。
特定されなかったステークホルダーの存在によってプロジェクトが台無しにならないように、ステークホルダーを特定していく必要があります。
特定されたステークホルダーは、ステークホルダー登録簿としてまとめると、管理が楽になります。
ステークホルダーの特定については、下記の記事もご参照ください。
理解と分析
「理解と分析」は特定されたステークホルダーのプロジェクトに対する態度や感情、価値観や信念などを理解し、分析していきます。
ステークホルダーを分析していく際には、主に以下の8つの点に注意していきます。
- 権力
- 影響度
- 態度
- 信念
- 期待
- 影響力
- プロジェクトとの近さ
- プロジェクトにおける利害
ステークホルダーの理解と分析には、以下のような手法を駆使していきます。
優先順位付け
ステークホルダーが多く存在する場合、全てのステークホルダーに関与することは難しくなります。
そのため、「優先順位付け」では、ステークホルダーに優先順位を付け、関与すべきステークホルダーを決定していきます。
エンゲージメント
「エンゲージメント」では、ステークホルダーと実際にコミュニケーションをとっていきます。
コミュニケーションの方法については、下記の記事もご参照ください。
監視
「監視」では、エンゲージメントで実施したコミュニケーションが効果的に作用しているかどうかのみならず、プロジェクトの進行とともに新たに生まれたステークホルダーや、反対に外れたステークホルダーがいないかどうかを確認します。
新たなステークホルダーが発見された場合は、再度ステークホルダーの特定からステークホルダー・エンゲージメントの活動を始めていきます。
ステークホルダー・パフォーマンス領域の成果をチェックする
ステークホルダー・パフォーマンス領域で実施した活動が効果を上げているかは、以下の3点の状態に現れてきます[2]PMBOK第7版、15頁。。
- プロジェクト全体を通じたステークホルダーとの関係
- プロジェクトの目的に関するステークホルダーの合意
- ステークホルダーの振る舞い
つまり、以下のような問いをプロジェクト・チーム内で考えながら、ステークホルダー・パフォーマンス領域の効果をチェックしていきます。
- ステークホルダーと良好で生産的な関係を築けているか?
- ステークホルダーの合意を得られているか?
- ステークホルダーはプロジェクトに満足し、悪影響を与えていないか?