突出モデル(セイリエンスモデル)とは何か?ステークホルダーの分類法を解説

突出モデル(セイリエンスモデル )の概要

突出モデル権力・緊急性・正当性に注目して、ステークホルダーの顕著な特徴を把握し、これからのステークホルダーの関与の方法や対応方法を講じる一助としようとする手法のことです。
ステークホルダーの数が多い複雑なコミュニティやコミュニティ内での関係が複雑である場合に有効な手法であり、彼らの相対的な重要性を整理する時にも役立ちます。

突出モデルはセイリエンスモデルとも呼ばれますが、セイリエンス(Salience)とは、「突出、顕著性、顕著な特徴」という意味を持っています。
つまり、ステークホルダーの顕著な特徴を把握するというのが突出モデルです。

突出モデルでの権力・緊急性・正当性は以下のような意味を持っています[1]PMBOK第6版、513頁。

  • 権力:プロジェクトの成果に影響を及ぼすことができる権限または能力のレベル
  • 緊急性:時間の制約、または成果におけるステークホルダーの深い利害関係にかかわらず、即時の対応が必要
  • 正当性:プロジェクトに関与する権限とレベル、および彼らの関与が適切かどうか、および関与のレベル

突出モデルの実践

突出モデルによるステークホルダーの分類

突出モデルでのステークホルダーの分類
参考画像1:突出モデルでのステークホルダーの分類。権力・正当性・緊急性でステークホルダーをカテゴライズする。

突出モデルでは、権力・緊急性・正当性に注目してステークホルダーを分類していきます。
参考画像1のように、権力・緊急性・正当性の有無でステークホルダーを分類していくと、ステークホルダーはAからGまでの7つの種類に分類されます。

突出モデルのステークホルダー
  • A:コアのステークホルダー(Core)
  • B:支配的なステークホルダー(Dominant)
  • C:危険なステークホルダー(Dangerous)
  • D:依存関係のステークホルダー(Dependent)
  • E:休眠のステークホルダー(Dormant)
  • F:厳しいステークホルダー(Demanding)
  • G:裁量のステークホルダー(Discretionary)

ここからは、これらのステークホルダーについて、解説を加えていきます。

ステークホルダーの種類

コアのステークホルダー

権力・正当性・緊急性において、すべてを有しているステークホルダーは「コアのステークホルダー」と呼ばれます。
プロジェクトの中で最も注意しなければならないステークホルダーであり、こまめな報告を行うとともに、彼らがどのように関与してくるのかを注意深く観察する必要があります。
主に組織の経営層がこのコアのステークホルダーにあたります。

支配的なステークホルダー

「支配的なステークホルダー」とは、権力と正当性はありますが、緊急性はないステークホルダーです。
例えばプロジェクトの会議に定期的に顔を出す部門長などは、支配的なステークホルダーと言えるでしょう。
緊急性はないため、すぐに支配的なステークホルダーに対処しなければならないことはありませんが、正当性が高いということは、プロジェクトの進行に影響を与える存在であるため、彼らが何を求めているのか、気を配っていく必要があります。

危険なステークホルダー

権力と緊急性は高く、正当性が低いステークホルダーは「危険なステークホルダー」に該当します。
正当性が低いということは、プロジェクトに実際に参加していなかったり、直接プロジェクトを指揮する立場ではないものの、権力と緊急性が高いため、彼らの鶴の一声で、プロジェクトが手戻りになったり、振り出しにもどったりすることもあります。
このような存在であるが故、「危険なステークホルダー」という名前が付けられています。
例えば、組織の予算を牛耳っているような人物は危険なステークホルダーに該当します。

依存関係のステークホルダー

緊急性・正当性は高いものの、権力が低いステークホルダーは、「依存関係のステークホルダー」と呼ばれます。
例えば、プロジェクト・メンバーの平社員と別のプロジェクトを進めている同僚は、依存関係のステークホルダーと言えるでしょう。
そのプロジェクト・メンバーのタスクが増えてしまい、同僚と進めている別のプロジェクトが滞ってしまっては、その同僚が困ってしまいますが、その同僚自身も平社員であれば権力がありません。
依存関係のステークホルダーが直接プロジェクトに影響を与えることはないものの、多くの場合彼らは権力を持つ別のステークホルダーと結託して、自分の意思をプロジェクトに反映させようとしてきます。

休眠のステークホルダー

「休眠のステークホルダー」とは、権力はあるものの、正当性も緊急性もないようなステークホルダーです。
例えば、プロジェクトに直接関係もなく、緊急で相談することもない、組織の重鎮が休眠のステークホルダーに該当します。
「寝た子を起こすな」とは言いますが、休眠のステークホルダーも、彼らの助力を仰ぐ必要がないのであれば、寝かせたままにするのがベストです。
下手にプロジェクトに関心を持ってしまうと、意味もなく支配的なステークホルダーになってしまったり、危険なステークホルダーになってしまうかもしれず、面倒なステークホルダーを増やしてしまうことになってしまいます。
休眠のステークホルダーがプロジェクトに関心を持つのは、何かトラブルの影響を被った時であるため、そうならないようにプロジェクト・マネジャーはプロジェクトを管理していく必要があります。

厳しいステークホルダー

緊急性は高いものの、権力も正当性も低いステークホルダーは「厳しいステークホルダー」と呼ばれます。
例えば、公共の場を利用するプロジェクトにおいて、近隣住民がプロジェクトに関心を持ち、こまめな情報提供を求めてきたら、それは厳しいステークホルダーと言えるでしょう。
権力も正当性も低いため、厳しいステークホルダーとのコミュニケーションに時間をかけすぎるのは好ましくないものの、往々にして厳しいステークホルダーは声が大きく、自分の意思をプロジェクトに反映させようとしてくるため、放置しすぎてもプロジェクトのトラブルの原因となってしまいます。

裁量のステークホルダー

正当性のみあり、権力も緊急性もないステークホルダーは「裁量のステークホルダー」に該当します。
例えば、プロジェクトに関連するボランティア団体やNGO団体などは、裁量のステークホルダーと言えます。
裁量のステークホルダーはプロジェクトに関与する正当性はあるものの、彼らだけではプロジェクトに影響を与えられないため、権力をもつステークホルダーの協力を求めて、自分の意思をプロジェクトに反映させようとします。

ステークホルダーに優先順位をつける

突出モデルのメリットは、ステークホルダーを分類するだけでなく、その結果をみて、優先的に対応すべきステークホルダーを発見することができることです。

ステークホルダーの中で一番に対応しなければならないのは、コアのステークホルダーです。
コアのステークホルダーは権力・正当性・緊急性をすべて兼ね備えているため、彼らの動向によって、プロジェクトが状況を一変させてしまうこともあります。そのため、コアのステークホルダーと最も重点的にコミュニケーションをとっていく必要があります。

コアのステークホルダーに順じて優先的に対応したいのは、支配的なステークホルダー危険なステークホルダーです。彼らは権力をもっているため、プロジェクトの進退に影響を及ぼすことができます。

この他のステークホルダーは、権力を持っていないために、すぐにはプロジェクトに影響を与えることはありません。そのため、コアのステークホルダー、支配的なステークホルダー、危険なステークホルダーに比べると、優先順位を下げて対応してもよいでしょう。
しかし、権力をもたないステークホルダーは、権力をもつステークホルダーに協力を仰ぎ、プロジェクトへの影響力を付けようとするため、まったく対応しないことは推奨されず、残ったステークホルダーとのコミュニケーションも大切にしていかなければ、プロジェクトを成功に導くことは難しくなってしまいます。

参考

1PMBOK第6版、513頁。