マーケティングの「ベネフィット」とは何か?|『ドリルを売るには穴を売れ』に学ぶマーケティングの本質

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[画像:ドリルを売るには穴を売れ]

「マーケティング」と聞くと、市場調査や広告宣伝といった難しい言葉を思い浮かべるかもしれません。しかし、その本質は至ってシンプルです。

マーケティングの入門書として名高い『ドリルを売るには穴を売れ』(著:佐藤義典)では、マーケティングの中心概念は「ベネフィット(価値)」であると断言しています。

今回は、この「ベネフィット」を中心に、お客様がモノを買う心理と、売れる仕組みについて解説します。

目次

マーケティングとは「価値」を売ること

そもそも、ビジネスとは何でしょうか? それは、「顧客にとっての価値(ベネフィット)」を提供し、その対価として「お金」をいただくことです。

有名な格言に「ドリルを買いに来た人が欲しいのはドリルではなく『穴』である」というものがあります。
顧客は「ドリル」という製品そのものが欲しいわけではありません。「棚を取り付けたいから穴を開けたい」という価値(ベネフィット)を手に入れるために、お金を払っているのです。

人がモノを買う「決定的な瞬間」とは?

では、顧客はどのような時に財布の紐を緩めるのでしょうか? その答えは、以下の不等式で表せます[1]佐藤義典『ドリルを売るには穴を売れ』青春出版社、2006年、46頁。

顧客が得る価値(ベネフィット) > 顧客が払う対価(コスト)

[画像:顧客が得る価値(ベネフィット) > 顧客が払う対価(コスト)]

顧客は、商品から得られる「価値」が、支払う「対価」を上回ったと感じた時にのみ、購入に至ります。 ここで重要なのは、対価とは「お金」だけではないということです。買いに行くための「時間」や「手間(エネルギー)」もコストに含まれます。

つまり、マーケティングの基本方針は以下の3点に集約されます。

マーケティングの基本方針
  1. 「顧客にとっての価値」を高める(より良い穴を開けられるようにする)
  2. 顧客の手間、時間、エネルギーを減らす(近くで買える、すぐに届く)
  3. 値下げをする(金銭的コストを下げる)

「機能的ベネフィット」と「情緒的ベネフィット」

「価値を高める」と言っても、具体的にどうすればよいのでしょうか? 実は、ベネフィットには大きく分けて2つの種類があります。

機能的ベネフィット(Functional Benefit)

「その商品で何ができるか?」という、物理的・機能的な価値です。 「軽い」「速い」「便利」「壊れにくい」など、計測可能で合理的な価値を指します。

情緒的ベネフィット(Emotional Benefit)

「その商品を持つことでどういう気分になれるか?」という、心理的な価値です。 「かっこいい」「かわいい」「安心感がある」「ステータスを感じる」など、感情に訴えかける価値を指します。

なぜ「スポーツカー」は売れるのか?

この2つのベネフィットの違いを、「車」を例に考えてみましょう。

ベネフィットの違いの例
[画像:ベネフィットの違いの例]
  • ファミリーカー
    • 機能的ベネフィット: 燃費が良い、荷物がたくさん積める、家族全員乗れる。
    • 多くの人にとって実用的で便利な車です。
  • スポーツカー
    • 機能的ベネフィット: (ファミリーカーに比べると)燃費が悪い、荷物が積めない、2人しか乗れない。
    • 機能面だけで見れば、不便な乗り物かもしれません。しかし、高額でも飛ぶように売れます。なぜでしょうか?
    • 情緒的ベネフィット: 「運転していてワクワクする」「デザインがかっこいい」「成功者の証(ステータス)」が得られるからです。

このように、顧客は単に「機能」だけで商品を選んでいるわけではありません。「情緒(感情)」もまた、強力な購入理由になります。

あなたの扱っている商品やサービスは、顧客にどのような「機能的ベネフィット」と「情緒的ベネフィット」を提供できているでしょうか? これを突き詰めて考えることこそが、マーケティング脳を鍛える第一歩となります。

1 佐藤義典『ドリルを売るには穴を売れ』青春出版社、2006年、46頁。
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