「実行におけるへだたり」と「評価におけるへだたり」とは何か?ユーザーインターフェースの問題を解説
「実行におけるへだたり(gulf of execution)」と「評価におけるへだたり(gulf of evaluation)」の概要
「実行におけるへだたり(gulf of execution)」と「評価におけるへだたり(gulf of evaluation)」とは、ユーザビリティ研究者であるドナルド・ノーマン(Donald Arthur Norman)が考案した概念です。
これら2つの概念は、ユーザーインターフェースの設計が効果的であるかどうかを考える際に使われます。
実行におけるへだたり
実行におけるへだたりとは、「あるモノがするであろうことへの人の期待に、そのモノが一致する度合い」のことです[1]PMBOK 第7版、158頁。。
実行のへだたりを最小限にとどめている代表例が部屋の照明のスイッチです。電気のスイッチは「スイッチを押せば、照明がつく」という、実行で得られるであろう効果に対する認識のズレが製品の設計者と使用するユーザーで発生しにくく、発生したとしても軽微なものです。
しかし、全てのスイッチやボタンがこのように認識のズレなく使用できるわけではありません。たとえば、パソコンにマイクのアイコンが付いたボタンがついていたら、それで何ができるか予想がつくでしょうか。
人によっては録音ボタンと思うかもしれません。録音ボタンだと思ってボタンを押したのに、実際は消音ボタンであったり、録音ボタンであるものの、ボタンの押下の前にパソコンから何か設定しないといけなかったりすることがあるでしょう。
このように、ユーザーの意図と、そのモノや機能を実行することで得られる結果との差異が実行におけるへだたりです。
評価におけるへだたり
評価におけるへだたりとは、「ユーザーがモノを解釈し、効果的にやり取りする方法を発見することを、そのモノが支援する度合い」を指します[2]PMBOK 第7版、158頁。。
たとえば先ほどのマイクのアイコンが付いたボタンであれば、それが録音のためのものであれば、「録音」という文字を掲載すると、ユーザーはそれが録音のためのボタンであることに気が付きやすくなるでしょう。
また、現在録音しているのかどうかを確認するために、録音中はボタンの色が変わればユーザーにとって親切です。
このようにユーザーがどの程度容易に機能を開始する方法がわかるか、そしてどの程度容易にその機能の状態がわかるかという度合いが評価のへだたりです。