起業家とはドン・キホーテである ~行動に必要なマインド~

熟達した起業家のマインド

サラス・サラスバシーの『エフェクチュエーション』の中で、熟達した起業家は「アイデンティティ」「知識ベース」「社会的ネットワーク」という3つのカテゴリーからスタートしていると書かれています(サラス・サラスバシー(著)、加護野忠男(訳)、高瀬進(訳)、吉田満梨(訳)『エフェクチュエーション』碩学舎、2015年、102頁。))。

つまり、「私は誰であるか」「何を知っているか」「誰を知っているか」という観点から起業に至るまでの決断をします。

自分は誰なのかを知っていたドン・キホーテ

ドン・キホーテ
ドン・キホーテとサンチョ(画像はWikipediaより)

『エフェクチュエーション』では、「私は誰であるか」の大切さをドン・キホーテを例にして解説しています。

ドン・キホーテは、現在では時代に取り残された理想主義者の代名詞とされています。
風車を巨人と思い込み、立ち向かうエピソードが有名です。

では、なぜドン・キホーテは無謀にも風車に挑んでいったのでしょうか。
それは、ドン・キホーテが自らの騎士道精神に則って行動したからにほかなりません。

サラス・サラスバシーはこのドン・キホーテの決断の源泉をジェームス・マーチ(James Gardner March)の以下の言葉を引用して説明しています[1]前掲『エフェクチュエーション』103頁。

「信頼」が保証されている時に信頼し、
「愛」にお返しがある時に愛し、
「学ぶ」に値する時に学ぶ、というのは、
人間性の大事な一面を放棄してしまっているということを、
ドン・キホーテは思い出させてくれる。

つまり、ドン・キホーテは「巨人を討伐すれば報酬がもらえる」「巨人を倒せば信頼を得られる」という打算から行動をしたのではなく、「私は騎士であるから、害をなす巨人を倒さねばならない」と風車に立ち向かっていったのです。

起業家にも必要なドン・キホーテの精神

起業家は時にこのドン・キホーテの精神を持つことが大切です。
VUCAと呼ばれる不確実性の高い現代では、確実なリターンなどを期待していたらなかなか起業に踏み切れません。
そんな時はドン・キホーテの精神を思い出し、「私はこういう人間だからこの仕事を始める」というように「私は誰であるか」からビジネスをスタートすることが大切です。

つまり、「この地域で儲かりそうだからパン屋をする」というマインドで起業をするのではなく、「私はパンづくりが好きで、みんなに喜んでもらいたいからパン屋を始める」という思考でビジネスの準備を進めます。

ドン・キホーテは無謀の代名詞でもありますが、ドン・キホーテのように無謀なチャレンジにしないための思考法がエフェクチュエーションにはつまっていますので、下記の記事もぜひご参照ください。

参考

文献

  • サラス・サラスバシー(著)、加護野忠男(訳)、高瀬進(訳)、吉田満梨(訳)『エフェクチュエーション』碩学舎、2015年

Webページ

  • https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%81(2024年10月10日確認)

1前掲『エフェクチュエーション』103頁。