クレイジーキルトの原則とはなにか? 競合分析を重視しない起業の考え方
クレイジーキルトの原則の概要
クレイジーキルトの原則とは、エフェクチュエーションの思考法の一つで、今後経営に関わるかどうかわからない潜在的な関与者についての機会コストを考えるのではなく、実際にコミットをした関与者を考慮すべきだという考え方です[1]サラス・サラスバシー(著)、加護野忠男(訳)、高瀬進(訳)、吉田満梨(訳)『エフェクチュエーション』碩学舎、2015年、116頁。。
つまり、起業前に競合分析や環境分析に時間や費用をかけすぎず、自分のビジョンに賛同した人たちとビジネスを創っていこうという思考法です。
さまざまな関与者によって形ができていく様子を、エフェクチュエーションの発案者であるサラス・サラスバシーはクレイジーキルトに見立てました。
このクレイジーキルトの原則にもとづき、関与者の事前のコミットメントや相互協力により、不確実性を減らして、参入障壁を作ることができます。
クレイジーキルトの原則を実践するには
クレイジーキルトの原則を実践するために、サラスは「エフェクチュアルな起業家はビジョンをまず作り、それをターゲットとなる関与者に押し付けたり、“売り込んだり”するのではなく、関与者同士の動的な相互作用から、未来が融合されていく姿に対して取り込みを集中させる」と言っています。
つまり、ビジョンを掲げた後、計画した市場に固執することなく、集まった関与者との関係から柔軟に対応していきます。
体型的な競合分析を重要視しない
クレイジーキルトの原則を使わない起業法でも、ビジネスのビジョンを明確にすることから始めます。
ビジョンを掲げ、参入する市場を定めた後、従来はマイケル・ポーター(Michael Porter)のファイブフォース分析に代表されるように、競合分析が重要視されてきました。
しかし、エフェクチュエーションを使うようなスタートアップ期には決められた市場が存在しない場合もあるので、競合分析は重要ではありません。
むしろ、ビジョンに賛同する関与者とともに、自らの市場を探していきます。
自らの市場は独自性が高いので参入障壁も高くなり、結果として競争力を身に付けることができます。
許容可能な損失の原則との関係
クレイジーキルトの原則は、同じエフェクチュエーションの「許容可能な損失の原則」と密接に関係しています。
許容可能な損失の原則は、エフェクチュエーションの思考様式の一つで、これから始める事業でどこまでの損失を想定し許容できるのか、あらかじめ定めておくことです。
資力に乏しい起業家は、市場分析や競合分析に時間や費用を使うことができません。
そのため、損失の額を低下させるためにも、特定の市場にこだわることなく、関与者とともに自らの市場を探していきます。
許容可能な損失の原則については、下記の記事もご参照ください。
注
↑1 | サラス・サラスバシー(著)、加護野忠男(訳)、高瀬進(訳)、吉田満梨(訳)『エフェクチュエーション』碩学舎、2015年、116頁。 |
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