WANとは何か?LANやインターネットとの違い、その種類と選び方を解説

2022年9月6日

WANとは

WANは、Wide Area Networkの略で、距離が離れたネットワーク同士をつなぐネットワークです。
社内ネットワークなど限られた範囲をつなぐネットワークをLANと呼びますが、会社の支店が複数の都道府県をまたぐような場合、ひとつのLANでつなぐことは物理的に不可能です。そこで登場するのがWANです。
WANを利用すると、プロバイダが保有している回線を利用して、離れた拠点間をつなぐネットワークを構築することが可能です。

LANとの違い

LANは、Local Area Networkの略で、限定された範囲で接続できるネットワークです。WANがプロバイダ側で構築と管理を行うのに対し、LANは企業側で構築、管理を行います。

インターネットとの違い

WANと混同されやすいのがインターネットです。インターネットが誰でも使えるネットワークであるのに対し、WANは会社など限られた利用者のみが利用できるネットワークです。

WANの種類と選び方

WANにはいくつかの種類があり、それぞれメリット、デメリットがあるため、目的に応じて選定する必要があります。
ここからはWANの種類とそれぞれの特長について解説します。

専用線

専用線は、自社専用に回線を借りて、1対1の拠点間通信ができる回線です。
回線工事などの初期コストがかかりますが、通信速度の安定性や安全性が非常に高いのが特長です。
複数拠点での接続ができない点や、障害により回線が切れると使用できなくなるなどのデメリットがあります。

専用線は、WANサービスの中で最も品質が高い反面、コストがかかるため、企業のWANとして最近では利用されることが少なくなっています。

IP-VPN

IP-VPNは、IP Virtual Private Networkの略で、プロバイダなどの閉域IP網を使ったWANです。
レイヤ3のサービスで、拠点ごとにL2スイッチを用意する必要があります。
IP-VPNは、通信事業者専用の回線を利用するため、セキュリティレベルが高いのが特長です。自社のみが回線を独占して利用するため、外部のトラフィックの影響を受けず、通信速度が安定します。専用の回線を使うことや、インターネット上でデータを暗号化する仕組みがあり、他のWANに比べて費用が高くなる傾向があります。

IP-VPNは網側でルーティングを行うため、拠点数が増えてもルーターの負荷が増大しません。支店などWANで接続する拠点が30拠点よりも多い場合におすすめです。

インターネットVPN(IPSec VPN)

IP-VPNと似ているのがインターネットVPNです。
IP-VPNが通信事業者の専用の回線を利用するのに対し、インターネットVPNは、インターネット回線を利用します。そのため、他のトラフィックの影響を受ける可能性があり、通信速度の低下が発生する可能性があります。通信は暗号化されますが、IP-VPNと比較すると、セキュリティレベルが劣るデメリットがあります。

インターネットVPNは、各拠点で固定IPのプロバイダ契約が必要です。また、各拠点にルーターやファイアウォールといったVPN装置も必要となります。

パブリックな回線を使用するため、IP-VPNと比較して安全性が劣るものの、低コストで導入できるのが特長であり、通信料が少ない場合におすすめのWANです。イーサネットVPNを提供するサービスには、SoftbankのULTINA IP-VPNがあります。

広域イーサネット

広域イーサネットは、プロバイダなどが独自に用意したイーサネット網に、企業のLANを直接接続し、広域なLAN接続を可能にするWANです。レイヤ2のサービスで、各拠点にルーターまたはL3スイッチを準備する必要があります。

IP-VPNと比較して通信速度が速く、プロトコル変更や拠点追加などにも柔軟に対応できるメリットがあります。一方で、拠点側でルーティングを行うため、拠点が増えるとルーターの負荷が増大する可能性があります。拠点が30拠点以下の場合おすすめです。広域イーサネットを提供するサービスには、KDDIのPowerd Ethernetがあります。

利用できるIPアドレス

利用できるIPアドレスは、WANとLANで異なります。

WAN

WANに使用されるIPアドレスは、グローバルIPアドレスです。グローバルIPアドレスはプロバイダと契約することにより付与されるアドレスで、自由に決めることができません。グローバルIPアドレスは、はDHCP、PPPoEのいずれかを使って設定します。

LAN

LANではプライベートIPアドレスを利用します。プライベートIPアドレスは、LAN内にある機器に対して、重複しなければ決められた範囲内で自由に付与することが可能です。

しかし、プライベートアドレス自体はグローバルIPアドレスのように、インターネット回線を利用することができません。そのため、WANに接続するためにはプライベートIPアドレスをグローバルIPアドレスに変換する必要があります。アドレス変換には、ルーターのNAT機能を利用します。

参考