標準原価計算とは何か?目標値である標準原価と実際原価を比較し、差異を分析する手法

2022年1月12日

標準原価計算の概要

標準原価計算とは、原価計算の手法の1つです。
大蔵省企業会計審議会から公開されている原価計算基準によると、「製品の標準原価を計算し、これを財務会計の主要帳簿に組み入れ、製品原価の計算と財務会計とが、標準原価をもって有機的に結合する原価計算制度である」「必要な計算段階において実際原価を計算し、これと標準との差異を分析し、報告する計算体系である」と説明されています。
より簡単に説明すると、目標値である標準原価と実際原価を比較し、これらの差異がどれくらいあるかを分析する手法です。

また、標準原価は当座標準原価・基準標準原価・理論標準原価の3種類に分けられます。

当座標準原価

通常発生する仕損・減耗・遊休時間などのロス率を含む、達成可能な目標原価です。

基準標準原価

過去の実績や指標を統計的に分析し、次年度以降も継続して使用するために将来の原価動向を把握するための基礎原価です。

理論標準原価

努力目標として、理論的に達成可能な最高の操業度・最大の能率によって計算された最低の原価です。

標準原価計算の必要性

競合他社との価格競争において、原価をいかに抑えて商品を製造するかは重要なポイントです。それゆえに、どんな企業にでも原価管理は必要不可欠と言えます。

標準原価計算は、事前に目標となる原価を決めておくことで、どこに不要なコストがかかっているかを確認でき、そこから分析・改善できます。そして、標準原価と実際原価の差異が小さいほど利益を確保でき、棚卸資産を素早く決定できるといった利点があります。

一方で、標準原価と実際原価の差異が大きい場合は、その要因を分析し、改善することが必要です。

このように、原価管理に標準原価計算を用いることで、価格競争で他社より優位に立つことができ、最適な分析・改善を行うことでより多くの利益をもたらすことに繋がります。

標準原価計算の方法

標準原価計算の具体的なやり方は、以下の手順に沿って進めます。

  • 原価標準を設定
  • 標準原価を算出
  • 実際原価を算出
  • 差異分析を実行
  • 改善案を策定

原価標準を設定

まず、1単位ごとの目標原価である原価標準を設定します。この原価標準は標準直接材料費・標準直接労務費・標準製造間接費の合計額です。

  • 直接材料費:仕入単価・使用量・歩留まり率などから算出
  • 直接労務費:作業工数・予定賃率から算出
  • 製造間接費:製造に必要な設備費・光熱費・管理部門の人件費などから算出

「1単位」というのはその製品における最小単位です。たとえば鉛筆のような個別に分けやすいものなら1単位は「1本」、小麦粉のように個別で分けにくいものなら1単位は「100g」といった具合で、製造する製品によって設定されます。

原価標準は製品1単位を製造するために必要とされる「直接費」「間接費」を合計して算出します。直接費とは、サービスの提供や製品の製造に関して、発生したことが直接的に認識できる費用のことです。逆に、間接費は直接的に認識できない費用を指します。
たとえば鉛筆を製造する場合、使用する木材は直接費にあたりますが、販売スタッフの労賃や広告費などは間接費に該当します。直接費は1単位あたりどの程度使用したかが比較的容易にわかるものの、間接費はそうではありません。
そのため、間接費は過去の経験や収集したデータに基づいて算出する必要があります。

原価標準は、実際の現場と同環境を想定することで最適な金額が求められ、標準原価カードにまとめられます。

標準原価を算出

実際の製造量に原価標準を乗算することで、完成品と月末仕掛品の標準原価を算出します。計算式は以下の通りです。

  • 当月標準原価 = 原価標準 × 生産実績

実際原価を算出

実際原価は生産で実際に費やした原価を、費目別・部門別・製品別に集計して算出します。
それぞれの算出方法は以下の通りです。

  • 費目別:勘定項目を材料費・労務費・経費に分けて各項目で直接費と間接費を算出
  • 部門別:製造間接費を製造部門費に割り当てて算出
  • 製品別:各製品で直接材料費・直接労務費・直接経費・製造部門費を算出

また、原価の集計方法は個別原価計算と総合原価計算の2つに分類されます。

個別原価計算は注文ごとに原価を算出し、総合原価計算は大量受注した商品の原価を総合して集計する方法です。総合原価計算は加工形態ごとに、単純総合原価計算・組別総合原価計算・等級別総合原価計算・工程別総合原価計算・連番品総合原価計算の5つに分類されます。

差異分析を実行

標準原価と実際原価を比較して、原価の差異を計算します。計算式は以下の通りです。

  • 原価差異 = 当月標準原価 - 当月実際原価

原価差異から、目標としていた標準原価と、実際にかかった原価がどれだけかけ離れているかがわかります
直接材料費・直接労務費・製造間接費においても標準原価と実際原価の差異を計算することで、どこで費用がかかったのかを分析できます。

たとえば直接材料費に大きな差異があるようなら、材料の仕入れ先の変更を検討したり、直接労務費に大きな差異があるようなら、作業時間削減に向けて製造機器の導入を検討したりと、実際原価が理想とする標準原価に近づけるように改善案を考えます。

改善案を策定

差異分析によってわかった標準原価と実際原価の差異から、改善案を策定します。製造部門であれば、作業工数の削減や生産技術の向上など、購買部門なら仕入先の変更や材料費の見直しなどの改善案が出てくるはずです。

まとめ

この記事では原価計算の基礎的な考え方や標準原価計算について解説しました。
ポイントは以下の通りです。

  • 原価計算には標準原価計算と実際原価計算がある。
  • 標準原価とは製品の製造において目標となる原価。
  • 標準原価計算では、標準原価と実際原価の差異から、コスト削減の改善案を考える。

参考