ISO/IEC 15504とは何か?SPICEと呼ばれるソフトウェア開発固定の評価の枠組み
ISO/IEC 15504の概要
ISO/IEC 15504とはSPAの1つであり、国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)の合同技術委員会が策定したソフトウェア開発を中心とした工程評価の枠組みのことをいいます。
ISO/IEC 15504はSPICE(Software Process Improvement and Capability dEtermination)とも呼ばれ、これを直訳した「ソフトウェア工程の改善と能力の決定」という言葉の通り、ソフトウェア開発工程の改善とその組織の能力がどのようなものであるのかの基準を定めています。
ISO/IEC 15504は、プロセス改善と能力判定のためのアセスメント体系を規定する国際基準で、プロセス能力を議論するための会社間、国を超えた共通の基盤を整えるために策定されました。この枠組みを活用した評価は、調達目的で外部の視点で評価する方法と、改善目的で評価する方法があります。
ISO/IEC 15504の必要性
ISO/IEC15504は、国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)の合同技術委員会が策定したものですが、どのようなときに利用されるのでしょうか?
ここでは、ISO/IEC 15504の必要性について解説していきます。
国際基準で評価するため
さまざまな企業でソフトウェアが開発されていますが、ISO/IEC15504は評価方法に共通構造を作成し、評価する際の共通基準を設定するために策定されました。
そのため、プロセスの妥当性をチェックリストとして活用したり、従業員育成に関する研修文書として活用したりすることができます。
顧客に妥当性を判断させるため
IT開発を行う人間であれば、ソフトウェアサービスの品質を説明することに苦戦したことがあるでしょう。如何に「わが社は品質改善に取り組んでいます」と営業したとしても、顧客にそれが対価に見合ったソフトウェアなのかを判断してもらうには十分ではありません。
こうした時に、ISO/IEC15504の規格に適っていれば、顧客に品質の高さを証明することができ、価格の妥当性を説明することができます。
業者の能力判定をするため
ソフトウェア開発のアウトソーシングを検討している企業は、アウトソーシング先の業者を正しく判定しなければいけません。ISO/IEC15504は、業者の能力判定基準を提供しているため、その基準を活用すれば業者の能力判定が行えます。
プロセス評価が行える
ソフトウェア開発において、どのプロセスが重要であったか、難しかったかを検証することが大切です。プロセス改善は難しくて失敗することも多いため、最初に正しく把握することが大切です。そのため、実施前後でプロセス評価を忘れてはいけません。ISO/IEC15504の工程評価の枠組みを利用すれば、各プロセスの検証が行えます。
ISO/IEC 15504の利用方法
ISO/IEC 15504は、5つのパートと9つのプロセス属性が定義されています。各プロセス属性を4段階(N-P-L-F)で評価していきます。
プロセス属性
プロセス属性 | 特定の側面 | |
---|---|---|
不完全なプロセス | 0 | (プロセス実施前) |
実施されたプロセス | PA1.1 | プロセスが成果をどれだけ達成しているか |
管理されたプロセス | PA2.1 | プロセスの実施管理が行われているか |
PA2.2 | プロセスの作業生産物を管理しているか | |
確立されたプロセス | PA3.1 | 組織として標準プロセスを定義しているか |
PA3.2 | 標準プロセスに基づいたプロジェクトプロセスを定義しているか | |
予測可能なプロセス | PA4.1 | ビジネスのゴールに役立つ尺度をどの程度使用しているか |
PA4.2 | 予測可能なプロセスにするため、プロセスの定量的な管理をどこまで行えているか | |
最適化しているプロセス | PA5.1 | 事業目標を達成するために、プロセスの定義・管理・変更をどこまで制御しているか |
PA5.2 | プロセス改善の目的を達成するためのプロセスの定義・管理および実施に対する変更が効果的な影響をもたらしているか |
プロセス属性とは、組織のプロセスの状態を表したものです。
例えばとくにプロセスの改善になにも取り組んでいない組織は「不完全なプロセス」の状態にあります。
こうした状態から、「最適化しているプロセス」の状態を目指していくのが ISO/IEC 15504です。
プロセスの評価
評価 | 意味 |
---|---|
Not achieved(1%~15%) | ほとんど達成できていない |
Partially achieved(15%~50%) | 部分的に達成できている |
Largely achieved(50%~85%) | ほとんど達成できている |
Fully achieved(85%~100%) | 完全に達成できている |
ISO/IEC 15504は上記の4つのランクでプロセスを評価していきます。つまり、 ISO/IEC 15504を導入してプロセス改善に取り組む場合は「最適化しているプロセス」の評価が「完全に達成できている」の状態にもっていくことが最終目標であると言えるでしょう。
この他の品質評価
ISO/IEC 15504はソフトウェアプロセス評価と呼ばれるSoftware Process Assessment(SPA)の1つです。
ISO/IEC 15504以外のSPAとして、最も有名なのが品質マネジメントの標準であるISO9001です。
また、ISO/IEC 15504のアイデアに近いものがCMMIです。
いずれも品質改善をする際には大いに参考になるアイデアです。