能力成熟度モデル統合(CMMI)とは何か?失敗しないベンダー選びの手法

2020年3月17日

能力成熟度モデル統合(CMMI)とは

能力成熟度モデル統合(CMMI)の5つのレベルのイメージ図

CMMI(能力成熟度モデル統合)“Capability Maturity Model Integration"の略で、ソフトウェアを開発する組織の成熟度を測るものです。
まったくプロセスが確立されていないレベル1の状態から、プロセスが確立され、定量的フィードバックを行いながら改善活動を行うレベル5までの5段階で組織を評価します。

組織の成熟度をなぜ測る必要があるのか?

このCMMIですが、もちろん社内の自発的な組織改善・プロセス改善の指標にもなります。しかし、CMMIはもともとアメリカの国防総省が失敗続きのソフトウェア開発を改善するために、カーネギーメロン大学ソフトウェアエンジニアリング研究所に依頼して策定した指標です[1]深沢隆司『48のキーワードから学ぶ実践プロジェクトマネジメント』翔泳社、2004年、224頁。
こうしたCMMIの成り立ちを見ると、どちらかといえば発注者・取得者が適切なベンダー・供給者選びのために使う方が適切だと言えるのかもしれません。

CMMIの5つのレベル

CMMIでは組織の成熟度を5つのレベルに分けています。ここからはCMMIの5つのレベルについて紹介していきます。

レベル1:初期段階

CMMIのレベル1は初期段階で、その組織のスタッフが個人レベルで働いているような組織です。
例えば「担当者が休んでしまうと仕事が先に進まない」「やたら書類不備が多い」という組織はこのレベル1に該当するかもしれません。
こうした組織では、まず文書化やマニュアル化を進め、組織にソフトウェアエンジニアリングの手法を取り入れていくことから進めていかなければなりません。

レベル2:管理されはじめた段階

CMMIのレベル2は管理されはじめた段階で、計画、実行、測定、そして管理がなされはじめたものの、まだまだ課題が多く残されているような組織です。
レベル1から脱却し、文書化やソフトウェアエンジニアリングの手法を取り入れたものの、まだまだそれが定着していない状態がこのレベル2です。
次の段階にいくために、さらに文書化を推進し、導入した手法の徹底が必要です。
こうしたレベル1からレベル2の過渡期では、往々にしてスーパープログラマーが求められます。
つまり、品質の改善が必要であることが認知されはじめたものの、それをまだまだ個人的な能力に頼っているような状態では、スーパープログラマーがさっそうと現れ、プロジェクトを成功に導いてくれることを期待しています。
このスーパープログラマーについては、以下の記事もご参照ください。

レベル3:定義した段階

CMMIのレベル3は、文書化やソフトウェアエンジニアリングの手法が定着した組織が該当します。
ようやく組織としての力が発揮されはじめるのが、このレベルではないでしょうか。
しかしまだまだ改善する点はあります。ここから先の段階に進むには、定量的な手法、すなわち数値で判断できるような管理手法で、組織がまとまっていかなければなりません。

レベル4:定量的に管理された段階

CMMIのレベル4は、数値的なデータを使って、定量的な業務の管理や分析が始まった組織です。
例えば「各プロセスの欠陥数の測定」など定量的な品質管理などが導入されはじめた組織がレベル4の組織と言えるでしょう。
ここまで来たら、あとは測定したデータから、継続的に改善活動ができるかどうかです。

レベル5:最適化された段階

CMMIのレベル5は最適化された段階です。つまり、組織の業務は文書化がなされており、管理手法が定着し、定量的に業務が管理されています。さらに、その管理の中でデータから組織の問題が点検され、継続的に改善がなされているような組織です。
レベル5は組織の一つの終着点ですが、ここから転落しないように注意していかなければなりません。

失敗しないベンダー選びのためにCMMIのアイデアを使う

今回はCMMIについて紹介してきました。
冒頭でお話ししたように、そもそもこのCMMIはベンダー選定の時に使用してこそ価値のある手法です。
しかし、CMMIをベンダー選定の際にどのように使えばよいのでしょうか。
一つの方法としては、ベンダー選定の際の打ち合わせやプレゼンテーションの際に、CMMIを意識した質問をすることのように思われます。
例えば「トラブルが発生した際にどのような対応をしていますか?」と質問し、「ミスが起こらないように確認を徹底します」というような個人的な回答しか得られなければ、その業者はレベル1程度の成熟度しかないかもしれません。
トラブルに限らず、しっかりと文書化されているか、標準化の努力がなされているか、そしてそれらを定量的に測定しているかをプレゼンテーションや打ち合わせの場で聞き出すことが大切です。
あるいは、提案書の中にベンダーの組織体制を記述させてみるのもよいかもしれません。
このように、CMMIのレベルを意識しながら、ベンダーの選定をしていき、プロジェクトの失敗を防いでいきましょう。

1深沢隆司『48のキーワードから学ぶ実践プロジェクトマネジメント』翔泳社、2004年、224頁。