ネット・プロモーター・スコア(NPS®)とは何か?算出方法や長所・短所を解説

2022年6月16日

ネット・プロモーター・スコア(NPS®)の概要

ネット・プロモーター・スコア(NPS®)とは、ステークホルダーがプロダクトやサービスを他者に推奨する度合いです。ネット・プロモーター・スコアは後述する計算式により-100~+100の範囲で算出されます。この数値は顧客のロイヤリティや満足度、企業に対する熱意を評価するために使用されます。

ネット・プロモーター・スコアの計算方法

ネット・プロモーター・スコアを計算するには、まずアンケートを行い、その結果を集計し、その数値をNPS式に入れて算出します。ここからはネット・プロモーター・スコアの計算方法を解説します。

アンケートの実施

ネット・プロモーター・スコア(NPS)のためのアンケート調査のイメージ

ネット・プロモーター・スコアを得るために、顧客などのステークホルダーにアンケート調査を実施します。
アンケートの質問は「自社の製品(サービス)を他者に推薦する可能性はどのくらいありますか?」という内容のもので、0から10の数値で評価してもらいます。そのアンケートの結果をもとに、ステークホルダーを以下の3つに分類します。

点数評価
0~6批判者(Detractor) 劣悪な関係を強いられた不満客。放置しておくと悪評を広める恐れがある。
7~8中立者(Passive) 満足はしているが、それ程熱狂的ではなく、競合他社になびきやすい。
9~10推奨者(Promoter) ロイヤリティが高い熱心な顧客。自らが継続購入客であるだけでなく、他者へサービスを勧める『推奨』の役割も担う。

NPS式

ネット・プロモーター・スコアを算出するために、批判者と推奨者の割合(パーセント)を調べます。そして、その数値を以下のNPS式に代入します。

  • ネット・プロモーター・スコア(NPS) = 推奨者の割合(パーセント)-批判者の割合(パーセント)

たとえば、アンケートの結果、推奨者の割合が100%だった場合、ネット・プロモーター・スコアは100になります。また、批判者が100%だった場合は、ネット・プロモーター・スコアは-100です。
ネット・プロモーター・スコアは+100に近ければ近いほど、ステークホルダーの満足度が高いことを示しています。

ネット・プロモーター・スコア調査の手法

ネット・プロモーター・スコアの調査には主に2つの手法があります。

リレーショナル調査

リレーショナル調査は、自社サービスやブランドに対する顧客体験を総合的に評価する調査方法です。年間を通して顧客からの総合的な評価を把握するための調査であり、自社のイメージや顧客体験としての満足度も把握できるため、事業の成果確認にも活用できます。

トランザクション調査

トランザクション調査は、顧客が特定の利用体験を行った後に実施する調査方法です。商品購入後やサービス利用後に行われ、それぞれの満足度を評価します。利用体験を行った直後に行われるため、サービスや商品に対する課題を発見しやすいことが特徴です。また、実施頻度も特に定められておらず、サービス提供時の度に行う場合もあります。

ネット・プロモーター・スコアを効率的に活用する方法

経営層からのコミットメント

ネット・プロモーター・スコアを実施するにあたり、調査内容が利益に繋がるのかどうかが曖昧なまま、現場の判断でネット・プロモーター・スコア改善に取り組むよりも、ネット・プロモーター・スコアを用いた顧客ロイヤルティの改善を「取り組むべき優先事項」と位置づけ、経営層から必要性を説明した上で全社を挙げて取り組みを行った方が効果的です。

社内への定着

ネット・プロモーター・スコアは「検証と改善」を繰り返し行うことで指標を高めていきます。一過性なものとならないよう、顧客からのフィードバックと結果からの改善案を検討し、企業文化として定着するまで続けていきます。

批判者の見定めを行う

ネット・プロモーター・スコアの目的としては、批判者の割合を減らしていくことにありますが、全ての批判者を推奨者に変えることが適切なのかを見定める必要があります。批判者に焦点をあてた改善が他の推奨者に合った改善にならない場合もあり、推奨者の数が減少してしまう可能性もあります。提供する商品、サービスとして企業が定めるターゲット層と異なる層が、批判者としての割合を占めているのであれば、異なった層が誤って購入しないようにする取り組みも一つの方法となります。

ネット・プロモーター・スコアの長所と短所

ネット・プロモーター・スコアの長所は簡潔にステークホルダーの満足度を測定できる点です。自社の製品・サービスを他者に薦めるかどうかをアンケートするだけでネット・プロモーター・スコアを計算することができるため、現代においてはメールなどで簡単に調査することができます。

しかしその簡潔さはネット・プロモーター・スコアの短所にもつながり、満足度がどのような要因によって支えられているかなど、複雑な分析・調査をするには向いていません。

ネット・プロモーター・スコアと顧客満足度の違い

ネット・プロモーター・スコアと類似するものとして「顧客満足度」がありますが、顧客満足度は現時点で顧客がどの程度サービスに満足しているかを調査します。ネット・プロモーター・スコアでは、将来的に周りにサービスを勧めたいかといった今後の行動に対する調査を行うものであり、商品やサービスへの愛着や信頼度を測るものです。顧客満足度として現段階の満足度だけを把握しても、今後も継続して商品やサービスを利用したいかどうかまでは読み取れないため、今後の行動を数値化できるネット・プロモーター・スコアでは長期的な収益性を把握できる調査でもあります。
また、ネット・プロモーター・スコアは世界共通の標準的な測定法として定められており、他社との比較も柔軟に行うことができます。標準的であることからどの企業でも導入が容易にできる点も顧客満足度との違いとなります。

参考