ベンダーとは何か?ベンダーの選定方法と管理方法を解説
ベンダーの概要
ベンダー(vendor)とは、「売る人」「売り手」「販売者」「販売店」という意味を持つ英単語です。そのため、製品やサービスを販売する事業者のことをいいます。
自社で製品開発をしている企業に絞り込んだものではなく、販売代理店などをベンダーとして呼ぶことがあります。また、ベンダーの対義語として利用される言葉は、ユーザー(user)です。
ベンダーは、あらゆる分野で使用される言葉ですが、IT業界では歴史が長く、現在も頻繁に使用されます。
ITベンダーとは、文字通りでIT製品を販売する企業のことです。ITベンダーは専門知識を豊富に持っていることが求められ、ITシステムの最善案や代替案を提示することが要求されます。また、プロジェクト上の問題が出れば、ユーザーを巻き込んで解決を主導していく役割を持っています。
ITベンダーは、販売する製品の種類によって「ハードウェアベンダー」「ソフトウェアベンダー」「システムベンダー」と呼ばれます。日本国内の代表的なITベンダーは、下記の通りです。主要ITベンダーが、IT市場の5割を占めています。
企業名 | 特徴 |
---|---|
富士通 | コンピューターCPUを独自開発しており、ハードウェア製品を積極的に開発している |
日立製作所 | 豊富な種類の電化製品を販売しており、海外展開にも注力している |
NTTデータ | 官公庁や金融機関向けのシステム開発を得意としている |
NEC | 官公庁向けのシステム開発に取り組んでおり、顔認証や5Gなどの最新テクノロジー技術に積極的に取り組んでいる |
日本IBM | 日本IBMが独自開発したAI「watson」に大きな注目が集まっている |
ベンダーが与える影響
ITシステムを導入するプロジェクトを実施する場合、ベンダーはプロジェクトを円滑に運営するため、さまざまなことを働きかける義務があります。
例えば、ITプロジェクトのプロジェクト・マネジメントを担当するのがベンダーであることは少なくないですし、求められているシステムについて最善案を提示するだけにとどまらず、問題点や注意点などをアドバイスすることも期待されます。
このようなことからも分かるように、ITプロジェクトにおけるベンダーの役割と責任は広範にわたるため、ベンダーは適切に選び、良好な関係を構築していかなければいけません。
主なベンダーの選定方法
ベンダーはプロジェクトの成否を分ける重要な存在です。力量不足のベンダーに仕事を依頼してしまえば、プロジェクトの成功率を下げてしまうことになります。
そのため、求めているITシステムの開発を委託するのにふさわしいベンダーを選ぶことはプロジェクト成功のための不可欠な要素です。
ここでベンダーを選定する手法を紹介していきます。
発注先選定分析
発注先選定分析とは多基準意思決定分析の一種で、様々な角度から発注先を評価し、適切なベンダーを選定しようとする手法です。
一面的な評価でベンダーを選択してしまうと、金額は安いけれども技術力がなく、プロジェクト進行も拙い会社を選んでしまうことも少なくありません。
そのため、発注先を判断する軸を複数持ち、各基準においてどのくらいの水準にあるのかを見定めるのが発注先選定分析です。
主にベンダーを広く公募する時に使う手法であり、RFPなどにあらかじめ発注先選定のための基準を記載するのが一般的です。
CMMI(能力成熟度モデル統合)
CMMI(能力成熟度モデル統合)は“Capability Maturity Model Integration"の略で、ソフトウェアを開発する組織の成熟度を測るものです。
まったくプロセスが確立されていないレベル1の状態から、プロセスが確立され、定量的フィードバックを行いながら改善活動を行うレベル5までの5段階で組織を評価します。
このCMMIはもともとアメリカの国防総省が失敗続きのソフトウェア開発を改善するために、カーネギーメロン大学ソフトウェアエンジニアリング研究所に依頼して策定した指標です[1]深沢隆司『48のキーワードから学ぶ実践プロジェクトマネジメント』翔泳社、2004年、224頁。。
組織の状況をじっくりと見定める手法であるので、長期にわたるプロジェクトや保守を行う業者を選定する時に役に立つ考え方です。
ベンダーの管理方法
プロジェクトで必要となる開発者を管理することをベンダー・マネジメントといいます。ベンダー・マネジメントは個人に依存することなく、社内で蓄積・継承していく必要があります。そのため、VMO(ベンダーマネジメント組織)の設立が望ましいです。ベンダーマネジメントは、「契約管理」「リスク管理」「パフォーマンス管理」「モチベーション管理」の4つの役割を持ちます。
契約管理
妥当な見積金額になっているか精査する役割を担います。また、契約書の内容を確認しておき、トラブルが起きないように規定を定めておく必要もあります。
リスク管理
開発会社の経営状態の把握をして依頼する上でのリスクがないか検証する役割を担います。プロジェクト期間中に、開発会社が倒産すれば、発注者側も大きな影響を受けることになるため、リスク管理は慎重に行わなければいけません。
パフォーマンス管理
プロジェクトを成功させるためには、生産性に関する目標を設定して、PDCAサイクルを回す必要があります。最大限のパフォーマンスができるように運営をする必要性があります。
モチベーション管理
開発会社と良好な関係を築くことが大切です。モチベーションが高ければ、高い品質のサービスが受けられます。そのため、モチベーション管理もプロジェクト成功に欠かすことはできません。
注
↑1 | 深沢隆司『48のキーワードから学ぶ実践プロジェクトマネジメント』翔泳社、2004年、224頁。 |
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