比率バイアスとは何か?数字の判断を誤らせるバイアスを解説

2023年10月3日

比率バイアスの概要

比率バイアス(ratio bias)は、統計的な判断や意思決定において、比率や割合を正確に評価することが難しい傾向を指します。人々はしばしば比率を誤解し、その結果、誤った判断を下すことがあります。比率バイアスは、統計思考や意思決定において一般的なバイアスの一つです。

比率バイアスが発生する理由

比率バイアスは以下のような理由で発生します。

分子と分母の影響

比率を評価する際、分子(数値の上部)と分母(数値の下部)の両方が評価に影響を与えます。
しかし、人々はしばしば分子の値が大きい場合、比率が大きいと誤解し、分母の値を無視します。逆に、分子が小さい場合、比率が小さいと誤解することもあります。

例題には以下の問題が挙げられます。

例題1

ある店で商品Aと商品Bが売られています。商品Aは100個のレビュー中、80個が5つ星評価を受けました。商品Bは1,000個のレビュー中、700個が5つ星評価を受けました。どちらの商品がより高い評判を持っていると思いますか?

商品Aの5つ星評価率は80%(80/100)であり、商品Bの5つ星評価率は70%(700/1,000)です。したがって、商品Aの方が高い評判を持っています。
しかし、商品Bの「700個」という大きな数字を見て、商品Bのほうが高い評判を得ていると錯覚してしまうことがあります。

文脈の影響

比率の評価は、その文脈によっても大きく影響を受けます。同じ比率でも、異なる文脈で提示されると、人々の評価が変わることがあります。

数字の表現

数字や割合が異なる形式で提示されると、人々の判断に影響を与えることがあります。たとえば、比率を割合ではなく小数で表現すると、評価が異なることがあります。

代表性バイアスに関連するもの

認知バイアス

今回の比率バイアスは認知バイアスの一つです。
認知バイアスについては下記の記事をご参照ください。

二重プロセス理論

二重プロセス理論(Dual-Process Theory)は、心理学や神経科学、認知科学などの分野で使用される重要な概念の一つです。二重システム理論(Dual-System Theory)二過程論とも呼ばれるこの理論は、人間の思考や意思決定プロセスを説明し、理解するために提案されました。
二重システム理論は、通常、直感で判断する「システム1」と熟慮で判断する「システム2」と呼ばれる2つの異なる思考プロセスに焦点を当てています。
比率バイアスは、二重プロセス理論でいう「システム1」による誤った判断により発生します。

二重プロセス理論については、下記の記事もご参照ください。