グリット(GRIT)とは何か?情熱と粘り強さの力で成果を出す方法をやさしく解説

2021年2月2日

グリット(GRIT)の概要

アンジェラ・リー・ダックワース(画像はWikiより)

グリット(GRIT)とは、ペンシルバニア大学教授で心理学者のアンジェラ・リー・ダックワース(Angela Lee Duckworth)が提唱した言葉です。

グリットは以下の4つの言葉の頭文字を取ったもので「やり抜く力」という意味になります。

  • Guts:度胸
  • Resilience:復元力
  • Initiative:自発性
  • Tenacity:執念

ダックワースは27歳のとき、経営コンサルタントの仕事を辞め、教職に就きました。
ニューヨークの中学1年生に数学を教える中で、生徒たちのIQの高さと成績の良さに関連性がないことに疑問を持ちます。彼女は数年間の教職を終えたのち、大学院へ進学し心理学者になりました。

彼女のチームは、以下のような疑問に焦点を当て、さまざまなシチュエーションにおいて誰が成功し、その原因は何なのかを研究しました。

  • 陸軍士官学校のどの士官候補生が厳しい訓練に残り、誰が中退するのか
  • 全国スペリング・コンテストではどの子どもが勝ち残るのか
  • 教育困難な地区で働く教師のうち、誰が学年の最後まで教え続けられるか
  • どの販売員が仕事を続け、最もお金を稼ぐか

これらの結果を正確に予測できたのは、グリット・スケール(ダックワースが考案したグリットの高さを測るテスト)のスコアでした。

そして、成功を左右する要因は、社会的知性やルックス、身体的健康でもIQでもなく、グリット 、つまりやり抜く力であるとの結論を導き出したのです。

近年、コミュニケーション能力やリーダーシップなど数値では測れない非認知能力に関心が集まっていますが、グリットも最も注目を集めている非認知能力のひとつです。

良いグリットと悪いグリット

キャロライン・アダムス・ミラーは著書『実践版 GRIT やり抜く力を手に入れる』の中で、グリットを良いグリットと悪いグリットの2つに分類しています[1]キャロライン・アダムス・ミラー(著)、宇野カオリ(監修)、藤原弘美(訳)『実践版 GRIT: やり抜く力を手に入れる』すばる舎、2018年。

良いグリット

  • 情熱
    情熱は人生の目的を生み出す原動力である。情熱がなければ、目標は単に仕事や課題をやり遂げるといったものにすぎなくなり、自分の人生(あるいは世の中)を変えるような使命にはならない。
  • 幸福感
    人は何かに成功して幸せになるのではなく、「幸せだから成功する」ととらえる。
  • 目標設定
    本物のグリットを持つ人は、高い目標(なかには非現実的な目標もある)を設定するという特徴がある。
  • 自制心
    自制心が強い人は、単に目標を達成し成功するというだけでなく、それに付随して、大きな自信や多くの友人、高いウェルビーイングなど、様々な恩恵を受けられるということを、研究結果がはっきりと示している。
  • リスク・テイキング
    本物のグリットのある人たちは、失敗に対する恐れがない。これは本物のグリットのある人たちとそうでない人たちとを分ける最も大きな特徴である。
  • 謙虚さ
    自分が成長するためのフィードバックを前向きに探し求めることができる。
  • 粘り強さ
    グリットがある人とそうでない人の違いは、困難に直面しても注意力や落ち着き、あるいは情熱を失わず、懸命に努力して乗り越える、つまり、「上手にもがく」ことができるかどうかにある場合が多い。
  • 忍耐
    満足感を先送りにする力が求められるような目標に向かうときは、焦りすぎると誤ったものを手にしてしまい、危険を伴う場合がある。

悪いグリット

  • 虚栄グリット
    周囲からの称賛を得るために、自分や他人を騙して何か困難なことを成し遂げたかのように振る舞い、実際には不正やごまかしや見せかけばかりの人たちのことを指す。
  • 強情
    長期的な目標に対する強情な追求は、状況が変化した場合、ポジティブな結果以上にネガティブな結果を生むことがある。
  • セルフィー
    大きな障害(現実のもの、あるいは架空のもの)を乗り越えて勝利を勝ち取るといった、困難な目標の追求を、執拗なまでに賛美すること。

良いグリットを発揮できると、成功して多くの人を活気づけることができます。悪いグリットは、偽りの成功を目指してしまい結果的に自滅してしまいます。

なぜグリットが必要なのか

私たちは、成功者を目にすると「才能が違うから」と思ってしまいがちです。成功者が見えないところでどれだけの努力をしてきたのか、分かっているにもかかわらずその事実から目を背けてしまいます。
なぜなら、その方が楽だからです。「自分は努力している。けれど才能がないから成功者のようにはなれない」と自分を肯定することができるからです。

ダックワースも才能の存在を否定してはいません。
しかし、才能だけでは決めたことを最後までやり抜けない人たちがたくさんいることを彼女たちの実験結果が示しています。
目標を達成するためには、才能よりもグリットが必要です。

グリットをどのように伸ばすのか

グリットは、ごくわずかな特別な人たちだけのものではありません。その特性の多くは行動によって習得が可能です。
ここでは、良いグリットを伸ばし、悪いグリットを排除するための方法を紹介します。

グロース・マインドセット

スタンフォード大学のキャロル・ドウェックによれば、人は「グロース・マインドセット(成長思考)」か「フィックスト・マインドセット(固定思考)」のいずれかのマインドセットを持っています

固定思考の人は、自分たちの能力は遺伝によって決められていると考えます。困難に直面したときに自分には何もできないと思い、あきらめてしまいます。
一方、成長思考の人は、一生懸命に取り組めば困難を乗り越えられると考えます。ドウェックによると偉大な人々はみんな成長思考を備えていたといいます。

ダックワースはグリットを身につける上で、最良の方法はグロース・マインドセットであると紹介しています。
グロース・マインドセットを実践するには「まだ」を口癖にすることです。「できない」というと永続的にできないということになりますが、「まだ」をつけて「まだできない」といえば、今はできないけれど、将来的にできるようになる、と考えることができます。

1キャロライン・アダムス・ミラー(著)、宇野カオリ(監修)、藤原弘美(訳)『実践版 GRIT: やり抜く力を手に入れる』すばる舎、2018年。