意外と知られていないエラーの種類 スリップとミステイクの違いを解説
エラー、スリップ、ミステイク
仕事をしていると「エラー」という言葉をよく目にしたり、耳にしたりします。
しかし「エラー」と一口にいっても、そこには「スリップ」と「ミステイク」の2種類のエラーがあることをご存知でしょうか。
今回は『誰のためのデザイン?』の記述をもとに、エラーの種類を解説していきます。
そもそもエラーとは何か?
エラーの種類の話をする前に、「そもそもエラーとは何か?」を考えていきましょう。
今日「エラー」と言うと、すべての間違った行為に対する一般的な用語として使われています。より詳しく言うと、「適切な振る舞いからの逸脱」と定義されます[1]D. A. … Continue reading。
つまり、本来できること・すべきことができなかった時、人はそれを「エラー」と呼んでいます。そしてこのエラーは「スリップ」と「ミステイク」に分けられます。
スリップ
スリップとは人が何か行為をしようとして、別のことをしてしまう時に起こるエラーのことです。そしてスリップは以下の2つの種類に分けられます。
- 行為ベースのスリップ
- 記憶ラプスのスリップ
行為ベースのスリップ
行為ベースのスリップは、間違った行為によるエラーのことです。たとえば、コーヒーにミルクを注いだ後、ミルクではなくコーヒーカップを冷蔵庫に入れてしまうようなエラーが行為ベースのスリップです。
記憶ラプスのスリップ
記憶ラプスのスリップとは、意図した行為が行われないか、結果が評価されないことによるエラーのことです。「物忘れ」と言われるのがこのエラーで、料理をし終わった後にコンロの火を消し忘れているというのは記憶ラプスのスリップに分類されます。
ミステイク
ミステイクは間違ったゴールか間違ったプランが形成されたことによるエラーです。このミステイクも、以下の3つに分けることができます。
- ルールベースのミステイク
- 知識ベースのミステイク
- 記憶ラプスのミステイク
ルールベースのミステイク
ルールベースのミステイクは、適切に状況を見ているものの、誤った行為を選択したために発生したエラーです。
このルールベースのミステイクには様々な種類があります。たとえば車を運転している時に状況の判断を誤ったが故に誤った交通ルールに従ってしまうこともルールベースのミステイクです。また、仕事をしている時にマニュアルに従って業務をしていたものの、従っていたマニュアルが誤っていたという場合もルールベースのミステイクです。
知識ベースのミステイク
知識ベースのミステイクは誤った知識や不完全な知識によって問題を間違って捉えたことによるエラーです。
たとえば「金額をドルではなく、円で換算してしまう」「センチとインチを間違える」というようなエラーは知識ベースのミステイクに分類されます。
記憶ラプスのミステイク
記憶ラプスのミステイクは行動を起こす時に想定していたゴールやその計画などで忘却が起こったために発生するエラーのことです。
たとえば書類の不備がないかをチェックしている時にテレビの放送が気になって注意散漫になり、十分な点検ができなかったというのは記憶ラプスのミステイクです。
エラーの知識を活用する
今回はエラーの種類を紹介しました。「エラー」と一口に言っても、様々な種類のエラーがあります。
このエラーに関する知識は、システムやデザインを考える際に役立てることができます。
つまり「ユーザーはどのようなエラーを起こす可能性があるのか?」を考えながらシステムのユーザー・インターフェースや商品のデザインを作成することで、ユーザーにとって使いやすい商品・製品を生み出すことができます。
さらにユーザーの行動を深く知るためにはドナルド・ノーマンの行為の7段階理論を理解するとよいでしょう。
ドナルド・ノーマンの行為の7段階理論は下記の記事で解説しているので、よろしければご覧ください。
注
↑1 | D. A. ノーマン(著)、岡本明・安村通晃・伊賀聡一郎・野島久雄(訳)『誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論』新曜社、2015年、236頁。 |
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