ゲシュタルト理論とは何か?プレグナンツの法則もあわせて解説
ゲシュタルト理論とは?
ゲシュタルト理論は、心理学の一分野で、人間の知覚や思考は、個々の要素の単純な総和ではなく、全体としてまとまった構造(ゲシュタルト)を形成して理解されるという考え方です。
つまり、私たちは物事を部分ではなく、全体として捉え、意味づけをしているということです。
たとえば、写真1と写真2はどちらとも「海」をテーマにしています。
写真1はヤシの実のジュースが写っており、バカンスをイメージさせます。
一方、写真2は女性が一人で座っており、旅行以上の何かを見た人に感じさせます。
このように、同じ「海」を映したとしても、一緒に写っている要素によって与える印象は変わります。
それは、人間が個々の要素だけを見ているのではなく、全体を見て、その意味を解釈しているからです。
ゲシュタルト理論の6つの要因
人は何かしらの要因によって、写真などのデザイン物に対してルールや秩序を見出し、全体としての意味を考えます。
そのルールや秩序の構築に影響を与えているのが、下記の6つの要因です。
- 図と地
- 類似
- 近接
- 閉合
- 連続
- 対称性
図と地
図(figure)と地(ground)とは、ある形とその周囲の部分のことを指します。
人間は写真などのデザイン物を見たときに、図と地を区別しようとします。
つまり、「このデザインは何が主役なのか?」を無意識に探しています。
「ルビンの壺」と呼ばれる写真3のように、あえて図と地の線引きをはっきりさせない面白さもありますが、図と地を明確にしておいたほうが、見た人がデザイン物を見たときに主題を理解しやすくなります。
類似
似た性質を持つもの(類似)は、一つのグループとして知覚されやすい傾向にあります。
似た形状、色、大きさの要素をグループ化することで、視覚的な統一感を生み出し、デザインがすっきりとした印象になります。
たとえば、同じフォントや色を用いて、テキストを区別することができます。
近接
近い位置にあるもの(近接)は、一つのグループとして知覚されやすい傾向にあります。
関連性の高い要素を近くに配置することで、ユーザーはそれらが一つのグループとして認識しやすくなります。
たとえば、メニュー項目や関連する画像をグループ化することで、情報を見つけやすくすることができます。
画像1は、波線より左は、写真とテキストが別のものを説明している印象を与えます。
一方で、波線の右では、画像とテキストが近いため、テキストには写真に関係した内容が書かれているという印象を与えます。
閉合
不完全な図形は、全体として閉じた形として知覚されやすくなります。
不完全な図形を、全体として閉じた形として認識させることで、図形を完成させ、視覚的な安定感を生み出すことができます。
輪郭線の一部を省略することで、よりシンプルで洗練されたデザインを実現できます。
たとえば、画像2には切り込みが入った四角形が4つ配置されていますが、中央に大きな四角形があるような印象を受けます。
このように人間は空いている空間を見つけると、その隙間を埋めるよう脳に働きかけをし、何かしらのパターンや形を見出します。
連続
人間は、画面の中の似た要素がパターンを作って続いていると、それが継続していくという印象を受けます。
たとえば写真4は家が続いているため、それが画面の奥まで続いていくという印象を与え、見ている人の目線を写真の奥の城まで誘導します。
対称性
人間は対称性があると、デザイン物に対して安心感を抱きます。
プレグナンツの法則
プレグナンツの法則はゲシュタルト理論の重要な法則の一つです。
プレグナンツの法則は、人は共通点やまとまりのない断片的な情報を見たときに、そこに秩序や調和、対称性、単純さ、構造性を見出そうとする心理が働くことを指します[1]リチャード・ガーベイ=ウィリアムズ(著)、ナショナル ジオグラフィック(編)、関利枝子(訳)、武田正紀(訳)『ナショナル … Continue reading。
つまり、人は、視覚に飛び込んできた情報を、最も単純で、規則的で、安定した形として捉えようとする傾向があるということです。
関連
このゲシュタルト理論に似たデザイン理論はいくつか存在します。
たとえば『ノンデザイナーズ・デザインブック』では、デザインの4つの原則を以下のようにまとめています。
- 近接
- 整列
- 反復
- コントラスト
このデザインの4つの原則については、下記の記事もご参照ください。
参考
- リチャード・ガーベイ=ウィリアムズ(著)、ナショナル ジオグラフィック(編)、関利枝子(訳)、武田正紀(訳)『ナショナル ジオグラフィック プロの撮り方 構図の法則』日経ナショナルジオグラフィック社、2017年
注
↑1 | リチャード・ガーベイ=ウィリアムズ(著)、ナショナル ジオグラフィック(編)、関利枝子(訳)、武田正紀(訳)『ナショナル ジオグラフィック プロの撮り方 構図の法則』日経ナショナルジオグラフィック社、2017年、23頁。 |
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