エコーチェンバー現象とは何か?SNS時代に見られる現象を解説

2021年12月1日

エコーチェンバー現象の概要

エコーチェンバー現象とは、人が自分自身を反映し、強化する情報や意見にのみ遭遇する環境のことです。この環境の中では、ある人物の意見や主張が肯定され評価されながら、集団内のメンバーによって繰り返されていきます。
とくにSNSなどのインターネット上の集団の中で発生する現象です。

エコーチェンバー(Echo chamber)は「残響室」と訳され、大きな部屋や洞窟にいるような音を得るために、わざと音を響かせるものです。
これがtwitterなどのSNSで見られる、同質の意見が拡散されていく環境に似ていることが「エコーチェンバー現象」という名前の由来です。

ドレスデン工科大学のエコーチェンバー(画像はWikiより)

エコーチェンバー現象は何故発生するのか?

このエコーチェンバー現象は何故発生するのでしょうか?
インターネットでは、多くの情報に触れる機会がありますが、一方でどの情報に接触するかはユーザーに委ねられています。
そのため、自身の考えや信念を補強するような情報や意見にばかり触れることが可能です。
さらに、同質の意見を肯定し、SNSで拡散することで、同じ意見をもつ人とのコミュニティが強化されていきます。

エコーチェンバー現象の例

エコーチェンバー現象の例として挙げられるのが最近のアメリカ大統領選です。
第44代アメリカ大統領となったバラク・オバマも、第45代アメリカ大統領のドナルド・トランプもSNSの力を利用し、大統領選を戦いました。
とくにドナルド・トランプの過激なtwitterの投稿は、熱狂的なフアンに支持され、拡散されながら、彼の主張に反する意見を排除していきました。エコーチェンバー現象が注目されたのは、このドナルド・トランプの大統領選のころと言われています。

エコーチェンバー現象の問題

異なる主張を認められない

このエコーチェンバー現象は様々な問題が指摘されています。
最も大きな問題は、エコーチェンバー現象が見られる集団では、集団の意見に反する主張・意見を排除していることです。
つまり、SNS上で発信されている意見や主張は、もっぱら同質な意見・主張の補強に使われ、異質な意見との議論には使われません。活発な意見交換ができているように見え、自分とは異なる意見には耳を傾けていないというのが、エコーチェンバー現象の問題です。

十分な証拠がない意見が拡散してしまう

エコーチェンバー現象が見られる集団の中では、十分な証拠がない意見であっても拡散されてしまう恐れがあります。
近年陰謀論がネット界隈を賑わすことが増えてきましたが、その背景にはエコーチェンバー現象があります。

真実が無視される

エコーチェンバー現象が発生すると、真実が無視されてしまうこともあります。
異なる意見に耳を傾けず、十分な証拠もない意見に囲まれる環境ができてしまうため、「何が真実か」を考えることができなくなってしまいます。

情報との向き合い方が大切

今回はSNSが浸透した現代で見られるエコーチェンバー現象について解説してきました。SNSを使ったマーケティングでは、このエコーチェンバー現象を意図的に発生させようとすることもありますが、これまで見てきたように様々な問題を抱えているため、好ましい現象であるとは言えません。
エコーチェンバー現象が発生している集団に、知らず知らずのうちに属していることもありますが、エコーチェンバー現象を回避するためには、正しく情報と向き合うことが大切です。
特定の情報源だけでなく、様々なメディアから情報を入手したり、証拠を確認したり、異なる意見の人と交流したりすることで、エコーチェンバー現象を回避していきましょう。

参考

書籍

  • 佐藤優『未来を生きるための読解力の強化書』クロスメディア・パブリッシング、2021年

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