ステークホルダー・エンゲージメントとは何か?PMPで出題されるPMBOKの用語を解説

2020年1月2日

ステークホルダー・エンゲージメントとは

ステークホルダー・エンゲージメントとは、直訳すると利害関係者との取決め・約束を意味します。
主にプロジェクトマネジメントの中で使用され、プロジェクトに関わる個人・グループ・組織との取決めや関係を表しています。

ステークホルダーとは

ステークホルダーとは一般的に「利害関係者」と訳されますが、PMBOKではステークホルダーを「プロジェクト、プログラム、またはポートフォリオの意思決定、活動、もしくは成果に影響したり、影響されたり、あるいは自ら影響されると感じる個人、グループ、または組織」と定義しています[1]PMBOK第6版、715頁。
つまり、プロジェクト・メンバーだけでなく、プロジェクトへの出資者やプロジェクトの結果によって影響を受ける個人などもステークホルダーに含めているのが特徴です。

エンゲージメントとは

エンゲージメントとは使用される文脈によって意味が変わってくるものの、「約束」や「愛着心」、「絆」など、相互の関係を表すことが多いように思われます。
ステークホルダー・エンゲージメントであれば、定着している日本語訳はないものの、「ステークホルダーとの約束」「ステークホルダーとの絆」をイメージすれば大過ないでしょう。

プロジェクトの中でのステークホルダー・エンゲージメント

プロジェクトの中でステークホルダー・エンゲージメントは「プロジェクト・ステークホルダー・マネジメント」プロセスで扱われ、「ステークホルダーの計画」「ステークホルダー・エンゲージメントのマネジメント」「ステークホルダー・エンゲージメントの監視」で議論されます。
以下、これら3つのプロセスについて概説していきます。

ステークホルダー・エンゲージメントの計画

ステークホルダー・エンゲージメントの計画とは、ニーズ、期待、関心、およびプロジェクトへの潜在的影響に基づいて、プロジェクト・ステークホルダーの関与を促す手法を開発するプロセスです[2]PMBOK第6版、503頁。
つまりステークホルダーたちのニーズや関心、期待を踏まえ、ステークホルダーたちがプロジェクトに関与する手法を検討するのがステークホルダー・エンゲージメントの計画の目的だと言えるでしょう。
上述の通り、ステークホルダーの範囲は広いです。例えば、市の公園にブランコを設置するというプロジェクトであれば、市の最終的な意思決定者である市長や、公園を使用している市民もプロジェクトのステークホルダーとみなされます。
こうしたステークホルダーの声を聴き、無理なくプロジェクトへ関与してもらう施策をステークホルダー・エンゲージメントの計画で講じていく必要があります。

ステークホルダー・エンゲージメントのマネジメント

ステークホルダー・エンゲージメントのマネジメントでは、ステークホルダーのニーズや期待に応え、課題に対処し、ステークホルダーの適切な関与を促すために、プロジェクト・メンバーはステークホルダーとコミュニケーションをとり、協働していきます [3]PMBOK第6版、503頁。
ステークホルダー・エンゲージメントのマネジメントでは、ステークホルダーからのニーズや期待に応える一方で、交渉やコミュニケーションを通してステークホルダーの期待をマネジメントすることも重要な活動となります[4]PMBOK第6版、524頁。
例えば先ほどの市の公園にブランコを設置するというプロジェクトであれば、市民からの期待が高まり、プロジェクトの中では達成できないような要望を寄せられる可能性があります。こうした状況に対処するために、市民との交渉を行いながら、期待をコントロールしていく必要があります。

ステークホルダー・エンゲージメントの監視

ステークホルダー・エンゲージメントの監視では、上記のステークホルダー・エンゲージメントの計画やステークホルダー・エンゲージメントのマネジメントが絵に描いた餅にならないように、プロジェクトのステークホルダーとの関係を監視し、ステークホルダーからの関与を引き出すための戦略をテーラリングしていきます [5]PMBOK第6版、503頁。
上記のブランコを設置するというプロジェクトで言えば、市長の関心がどうなっているか、市民からの声を当初のステークホルダー・エンゲージメントの計画通りに採り入れられているかを監視していくのがステークホルダー・エンゲージメントの監視です。

プロジェクトの成否はステークホルダー・エンゲージメントにあり

日本では「ステークホルダー・エンゲージメント」というものは、まだまだ浸透しきれていないアイデアのように思われます。
しかし、エドワード・ヨードンが著書『デスマーチ [6]エドワード・ヨードン(著)、松原友夫 (訳)、山浦恒央 (訳)『デスマーチ 第2版 ソフトウエア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか』 日経BP、2006年。 』の中で語るように、プロジェクトが失敗する可能性が50%以上あるデスマーチ・プロジェクトの大きな原因がステークホルダーをも含めた「政治」にあるのであれば、ステークホルダー・エンゲージメントはもっと見直されるべき内容のように思われます。
そのため、プロジェクト・マネジャーはプロジェクト・メンバー間の合意だけでなく、ステークホルダーをも巻き込んだプロジェクトの進行をしていく必要があると言えるでしょう。

1PMBOK第6版、715頁。
2,3,5PMBOK第6版、503頁。
4PMBOK第6版、524頁。
6エドワード・ヨードン(著)、松原友夫 (訳)、山浦恒央 (訳)『デスマーチ 第2版 ソフトウエア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか』 日経BP、2006年。