PMBOKのアクティビティ資源の見積りとは何か?

2020年11月27日

アクティビティ資源の見積りの概要

アクティビティ資源の見積りはPMBOKの中のプロセスの1つであり、プロジェクトの作業を実施するために必要な資源を見積るプロセスです[1]PMBOK第6版、320頁。
ここで言う「資源」とは、プロジェクトの遂行に必要なヒト・モノを意味します。
アクティビティ資源の見積りでプロジェクトに必要なヒト・モノの種類および数量を特定し、コストの見積りのプロセスで必要な金額を見積っていきます。

アクティビティ資源の見積りのアウトプット

まずはアクティビティ資源の見積りのアウトプットを確認し、このプロセスのゴールを明確にしていきましょう。
アクティビティ資源の見積りのアウトプットは以下の通りです。

  • 資源要求事項
  • 見積りの根拠
  • 資源ブレークダウン・ストラクチャー
  • プロジェクト文書更新版
    • アクティビティ属性
    • 前提条件ログ
    • 教訓登録簿

ここからは、これらのアウトプットに説明を加えていきましょう。

資源要求事項

資源要求事項はプロジェクトのアクティビティの遂行に必要な資源の種類と数量を特定し、プロジェクト全体としての資源の見積りを決定するためにそれらをまとめた資料です。
通常、WBSの分岐ごとに資源は集約されます。
資源要求事項の記載内容はプロジェクトによって変わりますが、概ね以下の内容が記載されます[2]PMBOK第6版、325頁。

  • 資源の種類
  • 可用性
  • 必要な量とその前提条件

見積りの根拠

アクティビティ資源の見積りのプロセスでは、資源要求事項の補足資料として、見積りの根拠を作成していきます。
見積りの根拠は、なぜ資源要求事項に掲載した資源が、その量で必要なのかを記載していきます。
主な項目は以下の通りです[3]PMBOK第6版、326頁。

  • 見積りの作成に使用される方法
  • 見積りの作成に使用された資源
  • 前提条件
  • 制約条件
  • リスク
  • 見積りの範囲
  • 信頼水準

「見積りの作成に使用された資源」は、例えば過去の同様のプロジェクトの情報などが該当します。

資源ブレークダウン・ストラクチャー

資源ブレークダウン・ストラクチャーのイメージ
資源ブレークダウン・ストラクチャーのイメージ

資源ブレークダウン・ストラクチャーとは、必要とされる資源を、その種類によってカテゴリー分けし、階層的に図示したものです。
カテゴリーにはヒト、資材、装置、サプライなどがありますが、プロジェクトに応じて調整していきます。
場合によっては、資源のレベルやスキル、等級なども含めて記載していきます。

プロジェクト文書更新版

アクティビティ資源の見積りのプロセスを進める中で、各プロジェクト文書に更新が必要となることがあります。
例えばアクティビティの詳細が分かればアクティビティ属性が更新され、資源の前提条件が明らかになった場合は前提条件ログが更新されます。
また、アクティビティ資源の見積りのプロセスの中で得られた教訓があれば、教訓登録簿に教訓が登録されます。

アクティビティ資源の見積りのインプット

アクティビティ資源の見積りのプロセスを進めるために使われる主なインプットは以下の通りです。

ここからは、これらのインプットから、アクティビティ資源の見積りのプロセスを進めるためにどのような点を確認していけばよいのかを解説していきます。

資源マネジメントの方針

アクティビティ資源の見積りのプロセスを進めるために、資源マネジメント計画書から、資源マネジメントをどのように進めていくのかを確認していきます。

どのような作業があるのか

「どのような資源が必要なのか」に答えるには、プロジェクトに「どのような作業があるのか」を明らかにする必要があります。
プロジェクトの作業を知るには、スコープ・ベースラインアクティビティ属性アクティビティ・リストを確認していきます。

どの程度のコストがかかるのか

プロジェクトに使用する資源はすべて良質なものを揃えられればよいのですが、それができるかは資源のコスト次第です。そのため、コスト見積りに目を通し、必要な資源がどの程度のコストなのかを確認します。

様々な前提条件

必要なアクティビティ資源がどのようなものか、利用できるかどうかは様々な前提条件に影響されます。
例えば、資源カレンダーを見ると、組織内の人的資源、つまりスタッフの予定を確認することができます。資源カレンダーを確認した結果、「プログラマーのAさんにお願いしようとしていたけれども、空いていないようだから、アウトソーシングしなければならない」という事実が見つかるかもしれません。

また、組織体の環境要因を確認し、チームの力量を再確認することで、必要とされる資源が異なることもあります。例えば、「プログラマーBさんのスキルが向上したことで、必要となる資源が少なくなった」というようなことがあります。
組織の文化や立地という組織体の環境要因は、必要とする資源の種類に影響を与えます。例えば、組織の文化として、フリーランスとは付き合いをしないというものがあれば、調達する資源は会社形態の組織に限定されます。

このように、前提条件ログに記載されている条件だけでなく、資源カレンダーや組織体の環境要因などからも、資源の前提条件が発見されることがありますので、これらを反映させながらアクティビティ資源の見積りのプロセスを進めていきましょう。

アクティビティ資源の見積りのツールと技法

アクティビティ資源の見積りのプロセスで使われるツールと技法は以下の通りです。

ボトムアップ見積り類推見積りパラメトリック見積り、データ分析の代替案分析プロジェクトマネジメント情報システム(PMIS)については、リンクから各詳細ページをご覧ください。

専門家の判断

アクティビティ資源の見積りのプロセスで求められる専門家とは、チーム資源や物的資源の計画と見積りの知識を有している人です。
これらの知識をもとにアクティビティ資源の見積りのプロセスでの判断を下していきます。

会議

プロジェクトには多種多様な資源が求められます。
そのため、アクティビティ資源の見積りのプロセスにおいて、プロジェクト・マネジャーは組織の各部門の責任者やステークホルダーなどと話し合い、資源の調達や調整を成功させなければなりません。

1PMBOK第6版、320頁。
2PMBOK第6版、325頁。
3PMBOK第6版、326頁。