教訓登録簿とは何か?組織にノウハウを蓄積するための手法
教訓登録簿の概要
私たちはプロジェクトに関わると、何らかの学びを得ます。プロジェクトマネジメントでは、これを「教訓」と呼びます。教訓は、PMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系ガイド)にも記載されている項目の1つです。
教訓の例として、以下のものが挙げられます。
- 成功
- 失敗
- うまくいく、あるいは失敗する条件
- プロジェクトを遂行するための注意事項
組織のノウハウとするために、これらの教訓をまとめた資料が教訓登録簿です。
先ほどの教訓の情報に加え、教訓登録簿には、以下の項目も記載されます。
- 実際の状況や背景
- 実際に行った行動
- 本来行うべきであった行動
- 影響範囲
教訓登録簿に保管する情報の形式は、文字にとどまりません。音声や映像、動画なども活用できます。
教訓登録簿の作成によりミスを減らし、プロジェクトをスムーズに進めやすくなることは大きなメリットに挙げられます。
教訓登録簿は「教訓」という用語を使っているものの、成功事例や成功する方法なども教訓登録簿に記載すべき事項であるという点には留意が必要です。
なぜならこれらは失敗と同様、プロジェクトにより学んだことであり、組織で共有すべき内容であるためです。
教訓登録簿は一度作ったら終わりというものではなく、プロジェクト期間中は随時アップデートされていきます。
またプロジェクトが終了したら「教訓リポジトリ」や「教訓データベース」として保管され、組織知として活用され続けることになります。これにより同様の、または類似のプロジェクトに関わった方が教訓リポジトリを参照し、プロジェクトの円滑な遂行に役立てることが可能です。
教訓登録簿はなぜ必要なのか
教訓登録簿はプロジェクトの、そして組織知の蓄積において大変重要な文書です。教訓登録簿が活用されていると、以下に挙げるメリットを得られます。
- 試行錯誤することなく、成功する方法を繰り返し実行できる
- 失敗する方法は周知され、また事前にチェックできる。そのため、過去のミスを繰り返さない
- より良い方法を考えるヒントになる
- 業務改善のモチベーションがアップする
例えばプロジェクトメンバーのうち誰かがミスをすると、その内容は教訓登録簿に記載されます。
またトラブル対応など手探りで進めざるを得ない作業の場合、試した方法も教訓登録簿に記載することが可能です。
その内容は自分自身だけでなく、他のメンバーも確認できます。このため同じ失敗を防ぐ効果が期待でき、また無駄な作業を何度も行わずに済みます。
また成功した方法や条件、注意事項なども、教訓登録簿に記載される項目です。この情報がきちんと共有されていれば、担当者が変わっても試行錯誤することなく、スムーズに業務を進めることが可能です。
もし教訓登録簿を作っていない、あるいは活用されていないとどうなるでしょうか。失敗事例やノウハウは属人化されてしまい、組織内で十分共有されません。そのため複数の方が同じ失敗を繰り返す事態になってしまいます。
その結果、顧客や外部からは「組織知の蓄積が不十分」「同じ失敗を何度も繰り返すプロジェクト」などという悪い評価を受けてしまいます。
組織として成長するためにも、教訓登録簿の活用は必須です。
教訓登録簿はどのように作成し使用するのか
プロジェクトマネジメントにおいて、教訓リポジトリはデータベースとして記録し、活用する方法が有効です。一方で教訓登録簿は教訓リポジトリの元になるデータであるため、文書化する必要があります。しかし、どのように作成すべきか明確に定められているわけではありません。
このため、プロジェクトで管理しやすい方法を用いるとよいでしょう。プロジェクトの人数が少ないならば、Excelの活用も1つの方法です。一方で人数の多いプロジェクトでは、専用のシステムを作ってしまうことも選択肢に挙げられます。
とはいえフォーマットにこだわるあまり、教訓登録簿を運用できない、操作が難しいというのでは本末転倒です。まずは教訓を記録することを第一に考え、気軽に入力してもらうことを重視し運用しましょう。
教訓リポジトリについては下記の記事もご参照ください。