ジョン・コッターの変革を導くための8つのプロセスとは何か?
ジョン・コッターの変革を導くための8つのプロセスの概要
リーダーシップ論を研究するジョン・コッター(John P. Kotter)は変革を導くための8つのプロセスを提唱しています。その8つのプロセスは以下のとおりです。
- 危機意識を高める
- 変革推進のための連帯チームを築く
- ビジョンと戦略を生み出す
- 変革のためのビジョンを周知徹底する
- 従業員の自発を促す
- 短期的成果を実現する
- 成果を生かして、さらなる変革を推進する
- 新しい方法を企業文化に定着させる
ジョン・コッターのリーダーシップ論とは
ジョン・コッターは、数々のビジネス書を世に送り出したリーダーシップ論の権威です。
マサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学を卒業した後、1972年からハーバード・ビジネス・スクールで教鞭を執り、多くの企業が変革に失敗している点に着目し、理由を解明するとともにいかにその成功率を高めるかということを研究しています。
外部環境の変化が激しい現代では、変化に伴って企業側も変革していなければ生き残ることはできません。しかし、その変革を導くリーダーが不足しているとジョン・コッターは主張しています。そこで提唱された改革のためのプロセスが「変革を導くための8つのプロセス」です。
変革を導くための8つのプロセス
ここからは実際に変革を導くための8つのプロセスを解説していきます。
危機意識を高める
第1段階目のプロセスとして「危機意識を高める」ことをジョン・コッターは提唱しています。人を動かすのは「現状への危機感」と「未来への希望」といった考え方がありますが、未来への希望を感じることで人は行動を継続し、現状に危機感を感じることで対処に向けて動き出すことができます。変革の研究対象となった企業の過半数が危機感に対して人を導くことができず失敗に終わっており、変革を導くために「リーダーシップ」が必要不可欠であることをジョン・コッターは提唱しています。
危機意識として常に緊張感を持って対処することが重要となるため、仕事が好調なときも不調なときも、常に問題意識と向上心を持って行動していきましょう。
変革推進のための連帯チームを築く
第2段階目のプロセスとしては「変革推進のために連帯チームを築く」こととなります。組織の変革を成功させるためにはメンバー間のチームワークが必要です。そして、そのためのメンバーには、スキルや人脈、権限などを持ち合わせた優秀な人材を集める必要があります。変革が成功するケースでは、組織の中で変革の必要性が認識され、危機感の醸成が働くことで変革推進のためのチームメンバーが増えていきます。
ビジョンと戦略を生み出す
第3段階目のプロセスとしては「ビジョンと戦略を生み出す」ことです。ビジョンとは組織が求める将来のあるべき姿のことです。チームがなぜビジョンに向かって進んでいくのかをリーダーは全員に認識させる必要があります。
成功する変革推進のチームは、短い時間で説明できるビジョンを持っています。「短い時間で説明できる」というのがポイントで、長い時間をかけて話さないと伝わらないものはビジョンとは呼べません。ビジョンに説得性を持たせるためにも、実現可能な方向性を見出すとともに、不測の事態に備えて変えていける柔軟性も必要となります。
変革のためのビジョンを周知徹底する
第4段階目のプロセスとしては「変革のためのビジョンを周知徹底させる」ことです。魅力的なビジョンがあったとしても社員に伝わらなければ変革は成功しません。そして、社員にビジョンを伝え認識させるためには、メッセージとしてシンプルで分かりやすいものである必要があります。また、周知徹底のアクションとして、社内説明会で1度だけ話すことや朝礼で変革に向けた説明に触れた程度で変革が成功すると考えている企業が多く、第4段階で失敗してしまいます。成功を収めた変革では、役員がビジョンを広く認知させるためにあらゆる既存のコミュニケーション手段を利用します。役員たちが「歩く広告塔」としてビジョンの普及を行うことが大切です。
従業員の自発を促す
第5段階目のプロセスとしては「従業員の自発を促す」こととなります。ジョン・コッターは、従業員の自発を促すためには障害を取り除く必要があることを提唱しています。組織改革の障害とは、組織構造そのものやシステムの上にある業務を妨げる存在のことを指します。企業規模にもよりますが、少なからず抵抗勢力は存在し、表面上では改革に賛成してもビジョンに沿った行動をとらない勢力もいるのです。それらを取り除くことで従業員の自発を促すことができるとジョン・コッターは提唱しています。
短期的成果を実現する
第6段階目のプロセスとしては「短期的成果を実現する」ことです。短期的成果の実現とは、小さな成功の積み重ねのことをいい、達成感を持続させます。
変革は進んでも業務上の成果が変わらなければ組織変革のプロジェクトは頓挫してしまいます。成果が伴わない変革は抵抗勢力を勢いづかせることにも繋がるため、変革の障害を黙らせるためにも計画的に短期的な成果のあがる「仕込み」をしておくことが大切です。
成果を生かして、さらなる変革を推進する
第7段階目のプロセスとしては「成果を生かしてさらなる変革を推進する」ことです。ジョン・コッターは、さまざまな変化が企業文化に深く根付くためには5年から10年は必要と主張しています。変革を成功に導くリーダーは、短期間で結果を出したことで得られた信頼感を追い風とし、より大きな問題に立ち向かうことで当初の組織変革の計画を定着させながらよりよい変革となるように微調整していく必要があります。
新しい方法を企業文化に定着させる
第8段階目のプロセスとしては「新しい方法を企業文化に定着させる」ことです。組織変革が成功した後、自分たちの成功をモデルとして社内全体に組織変革を定着させる必要があります。
優れたリーダーとその後継者を育て、組織変革を企業文化として定着させます。組織変革の成功を5年から10年の長期スパンが必要と考えるジョン・コッターの思想は、いかに変革の成果を企業組織に根付かせるかを重要視しています。そのためには、変革の因果関係を社員にアピールして認識させ、変革を理解した次世代のリーダー育成が必要不可欠となります。