ステークホルダー・エンゲージメントの計画とは何か?PMBOKの用語を解説

ステークホルダー・エンゲージメントの計画の概要

ステークホルダー・エンゲージメントの計画とは、PMBOKで用いられるプロセスの1つで、プロジェクトのステークホルダーの関与を促す手法を決定するプロセスです。
ステークホルダー・エンゲージメントの計画では、ステークホルダーのニーズや期待、関心事や影響度に基づき、ステークホルダー・エンゲージメント計画書を作成していきます。

ステークホルダー・エンゲージメントの計画はなぜ必要なのか?

「日本のITプロジェクトはメテオフォール型だ」というジョークを耳にすることがあります。
これはウォーターフォール型の開発モデルをもじった造語で、どんなにがんばってプロジェクトを進めていても、ステークホルダーの1人であるクライアント側のお偉いさんの一言でプロジェクトがひっくり返されてしまう現象を皮肉ったジョークです。
たしかにこのジョークのような現象はプロジェクトのよくあるトラブルかもしれませんが、このようなトラブルを未然に防ぐために「どのような方針でステークホルダーと協力しながらプロジェクトを進めればよいのか」を考えるのがステークホルダー・エンゲージメントの計画です。

ステークホルダー・エンゲージメントの計画のアウトプット

ステークホルダー・エンゲージメントの計画の目標はステークホルダー・エンゲージメント計画書を作成することです。
PMBOKにはステークホルダー・エンゲージメント計画書に掲載する内容を詳細に紹介はしていませんが、以下のような内容を掲載するのが一般的です。

ステークホルダー登録簿

ステークホルダー登録簿とは、プロジェクトのステークホルダーを特定し、その役割や影響度を査定し、分類したプロジェクト文書の1つです。
つまり、このプロジェクトにどのような人物たちが関わっており、どのような役割と影響力をもっているのかをまとめた文書です。

ステークホルダー関与度評価マトリックス

ステークホルダー関与度評価マトリックスとはステークホルダーと関与度をマトリックス状に視覚化したデータの表現方法です。
主にコミュニケーション・マネジメントの計画のプロセスやステークホルダー・エンゲージメントの計画のプロセスで使われるデータ表現です。

ステークホルダーとの関与方法

ステークホルダー登録簿とステークホルダー関与度評価マトリックスの情報をもとに、ステークホルダーとの関与方法を考えていきます。
例えば、「どの程度の頻度で報告を行うか」「どのような周期で計画を見直すのか」を策定していきます。

ステークホルダー・エンゲージメントの計画のインプット

ステークホルダー・エンゲージメントの計画のインプット、つまり、このプロセスを進めていく上での判断材料は以下の通りです[1]PMBOK第6版、518~520頁。

ここからは、これらのインプットから何を確認していけばよいのかを解説していきます。

ステークホルダーは誰か

ステークホルダー・エンゲージメントの計画で何よりも大切なのは「このプロジェクトのステークホルダーは誰か」を特定することです。
ステークホルダーには、プロジェクト・メンバーの上司や最終的なプロダクトを使用するユーザーのようにプロジェクトの開始直後から明らかになっているものもあれば、資源マネジメントの計画リスク・マネジメントの計画の中でステークホルダーに加わるものもあります。
例えば、資源マネジメントの計画の中で、これまでプロジェクトに参加しなかったある部署のスタッフが参画するようになれば、その部署のスタッフもステークホルダーになることがあります。
このように、ステークホルダーはプロジェクトの進行とともに見いだされることもあるため、作成した資料や文書を見ながら、「ステークホルダーは誰か」を考えていく必要があります。

ステークホルダーは何を求めているのか

ステークホルダーを特定することができたら、次はそれらのステークホルダーが何を求めているのか(ニーズ)を考えていきます。
プロジェクトを依頼したステークホルダーのニーズについては、プロジェクト憲章に記載されています。
一方で、途中から加わったステークホルダーについては情報が不十分であるため、別途情報を収集し、現在進行しているプロジェクトにどのような関心・期待を寄せているのかを把握していく必要があります。

ステークホルダー・エンゲージメントの計画のツールと技法

ステークホルダー・エンゲージメントの計画を進めていくのに際し、以下のようなツールと技法が使用されます[2]PMBOK第6版、520~522頁。

ここでも大切なのは、これらのツールと技法を使って「ステークホルダーは誰か」「どのような関心・期待を寄せているのか」、そして「ステークホルダーとどのようなコミュニケーションをとっていけばよいのか」を明らかにしていくことです。
例えば、専門家の判断では組織の環境や文化から、ステークホルダーを特定していったり、関心・期待を分析していくほか、どのようなコミュニケーションをとっていけばよいのかを考えていきます。
また、マインドマップを使って組織の情報を整理したり、整理されたステークホルダーの情報を使ってステークホルダー関与度評価マトリックスを作成していったりします。

参考

1PMBOK第6版、518~520頁。
2PMBOK第6版、520~522頁。