【Running Lean】90日間サイクルで実現する継続的イノベーションとは?
継続的イノベーションとは、新しいアイデアや技術を創造し、それをさらに改善、発展させるプロセスのことを指しています。
顧客が真に望むものを提供し続けることが、継続的イノベーションの核心と言えるでしょう。
市場は常に変化し、顧客のニーズも多様化しています。 継続的イノベーションは、こうした変化に柔軟に対応し、競争力を維持するための重要な手段となります。
新しいアイデアを製品やサービスに組み込むだけでなく、顧客からのフィードバックを収集し、改善を続けることによって、組織や企業は持続的な成長を遂げることができます。
継続的イノベーションフレームワークとは?3つの活動【Running Lean】
継続的イノベーションフレームワークでは、90日間サイクル で 「モデルの作成」「優先順位付け」「テスト」 を行います。
最初の2週間で「モデルの作成」と「優先順位付け」を行い、残りの10週間で「テスト」を実施します。 そして、サイクルの終わりには、「何をしたのか」「何を学んだのか」 を振り返り、次の行動を決定します。
これを繰り返すことで、継続的なイノベーションを実現していきます。
モデルの作成
継続的イノベーションフレームワークでは、以下の2つのモデルを使用します。
リーンキャンバス
- リーンキャンバスとは、ビジネスモデルを1ページにまとめる手法です。
- 数十ページにも及ぶ従来の事業計画書とは異なり、簡潔で要点が整理されている ため、投資家や関係者にとって理解しやすくなっています。
- 特に、スタートアップのように、まだ不確定な要素が多い段階では、リーンキャンバスを使って 仮説を明確化し、共有する ことが重要になります。
顧客ファクトリー
- 顧客ファクトリーとは、顧客を獲得し、維持するための仕組み を可視化したものです。
- 「獲得」「活性化」「定着」「収益化」「紹介」 の5つのステップで構成され、顧客との関係性を構築し、ビジネスを成長させるための道筋を示します。
- トラクション (顧客獲得の勢い) を測定し、顧客ファクトリーを改善していくことが重要になります。
優先順位付け
モデルを作成したら、次に リスクの高い項目 を特定し、優先順位を付けます。
リスクの高い項目とは、 「不確実性が高い項目」 や 「影響が大きい項目」 です。
これらの項目を早期に検証し、対策を講じることで、ビジネス全体のリスクを軽減することができます。
テスト
テストの段階では、モデルの内容を実際に検証し、改良していきます。
「どの戦略が有効なのか」「顧客は本当に求めているのか」 を検証し、「仮説」 を 「事実」 に変えていく作業です。
最初から大きなリスクを取らず、小さな実験を繰り返し、有効な戦略を見極めていくことが重要になります。
なぜ継続的イノベーションフレームワークが必要なのか?
現代のビジネス環境は、かつてないほど 変化が激しく、競争が激化 しています。
- テクノロジーの進化
- グローバリゼーションの進展
- 顧客ニーズの多様化
など、企業を取り巻く環境は常に変化しており、それに対応していくためには、継続的なイノベーションが不可欠です。
特に、スタートアップ企業は、限られたリソースの中で、いかに効率的に顧客を獲得し、成長していくか が課題となります。
継続的イノベーションフレームワークは、限られた時間とリソースを最大限に活用 し、無駄な開発を避け、顧客に価値を提供し続ける ための強力なツールと言えるでしょう。
新たなマインドセットが必要
継続的イノベーションを成功させるためには、従来の考え方にとらわれず、新たなマインドセット を持つことが重要です。
『Running Lean』では、継続的イノベーションフレームワークの3つの活動を強化するための 10個のマインドセット が紹介されています。
モデルの作成
- ビジネスモデルが製品である
- 顧客に提供する価値は、製品やサービスだけでなく、ビジネスモデル全体 であるという考え方。
- ビジネスモデルを 「顧客に価値を提供し、収益を上げる仕組み」 として捉え、その仕組み自体を改善していくことが重要になります。
- ソリューションではなく課題を愛せ
- 顧客は、「製品」 そのものではなく、「製品によって解決される課題」 を求めているという考え方。
- 顧客の課題を深く理解し、その解決に焦点を当てることで、真に顧客に求められる製品やサービスを提供することができます。
- トラクションが目標である
- トラクションとは、顧客獲得の勢い を示す指標です。
- トラクションを向上させることこそが、ビジネスの成長に繋がるという考え方。
- Facebookの例では、ユーザー数が増加することで、広告主が集まり、収益化が可能になりました。
優先順位付け
- 適切な行動を適切な時期に
- 「今、何をすべきか」 を明確にし、適切なタイミングで適切な行動をとるという考え方。
- 長期的な計画も重要ですが、まずは 「目の前の課題」 に集中し、「小さな成功」 を積み重ねていくことが重要になります。
- 最もリスクの高い仮定に段階的に取り組む
- ビジネスモデルには、必ず 「不確実な要素」 が含まれています。
- これらの不確実な要素を 「仮説」 として捉え、優先順位 を付けて検証していくという考え方。
- 最もリスクの高い仮説から検証することで、「手戻り」 や 「無駄な開発」 を防ぐことができます。
- 制約は贈り物である
- 制約があるからこそ、創造性 が発揮され、新たなアイデア が生まれるという考え方。
- 制約を 「問題」 と捉えるのではなく、「チャンス」 と捉えることで、イノベーションが加速します。
- 外部に対する説明責任を担う
- 顧客や投資家など、外部のステークホルダーに対して、透明性 を高く保ち、説明責任 を果たすという考え方。
- 信頼関係を構築することで、長期的なビジネスの成功に繋がります。
テスト
- 小さな賭けを何度もやる
- 大きなリスクを一度に取るのではなく、小さな実験を繰り返し、「試行錯誤」 を 통해 最適な解決策 を見つけていくという考え方。
- 失敗から学び、「改善」 を続けることが重要になります。
- エビデンスに基づいた意思決定をする
- 「勘」 や 「経験」 ではなく、データや事実 に基づいて意思決定を行うという考え方。
- 客観的なデータ分析を通じて、より 精度の高い意思決定 を行うことができます。
- ブレイクスルーには想定していなかった結果が伴う
- 真のイノベーションは、「想定外の結果」 から生まれることが多いという考え方。
- 失敗を恐れず、「実験」 と 「学習」 を繰り返すことで、「予期せぬ発見」 に繋がる可能性があります。
これらのマインドセットを意識することで、顧客が真に望むものを継続的に提供し、ビジネスの成功へと導くことができるでしょう。
参考
Ash Maurya(著)、角 征典(翻訳)『Running Lean[第三版]―リーンキャンバスから始める継続的イノベーションフレームワーク』オライリー・ジャパン、2023年