マフィアオファーとは何か?MVPの開発に先立つアプローチを解説
マフィアオファーとは
マフィアオファーとは、顧客が断る理由がないような魅力的な提案をすることです[1]Ash Maurya(著)、角 征典(翻訳)『Running … Continue reading。映画『ゴッドファーザー』の登場人物であるヴィトー・コルレオーネの「断りきれんオファーを出す」という台詞からついた呼び名です。[2]台詞の訳文は『Running Lean』261頁より。
なぜマフィアオファーが必要なのか?
マフィアオファーは『Running Lean』で紹介されている製品開発のアプローチで、重要な役割を果たします。
従来、製品開発はMVP(実用最小限の製品)を開発し、「開発 → 計測 → 学び」というサイクルを回していくリーン・スタートアップの手法が注目されていました。
しかし、競合も多く、MVPの開発にも時間がかかる現在では、何も情報がないままMVPを生み出すことは、時間的にも金銭的にもリスクが大きくなります。
そのため、『Running Lean』では、まずマフィアオファーを作成し、そのオファーが受け入れられたらMVPを開発し、受け入れられなければ、マフィアオファーの作成に戻るという開発アプローチをとっています。
マフィアオファーの提案までのステップ
では、マフィアオファーはどのように作成したらよいのでしょうか。
マフィアオファーを構築する際は、次の3つを意識して、説得力のある提案を作成しましょう。
- 顧客の課題を示す
- 課題を解決する方法を提示する
- 課題解消の第一歩を踏み出す明確な方法を提供する
それでは、具体的にどのようにマフィアオファーを構築するのか、提供までのステップを解説します。
課題を見つける
マフィアオファーを作成する時は、まず顧客の抱える課題を理解することが重要です。
課題を発見するためには、単にWebサイトを公開したり、そのアクセスを分析したりするだけでは足りません。
直接顧客と会って話を聞くことが、一番の早道です。直接話を聞いて、既存の商品やサービスの課題を明確にしましょう。
製品を設計する
課題が明確になったら、既存製品からのスイッチ、つまり自分たちの製品への乗り換えを引き起こすために、どのようなソリューション(課題解決法)を提供するのか、設計・改良を行います。
オファーを提供する
ソリューションの設計ができたら、いよいよオファーを提供する段階です。ワークショップや講演、先行予約キャンペーンなどを設定して、提供する場をつくりましょう。
事例:iPadのマフィアオファー
スティーブ・ジョブズのiPadのプレゼンテーションは、マフィアオファーのよい事例です。
ジョブズはiPadの基調講演で、ラップトップとスマートフォンの間に新しい製品が必要だと述べました。新しい製品は、既存の代替品よりも優れている必要があります。彼は、既存製品であるラップトップに言及し、その課題について語りました。さらに、iPadの性能と使い勝手をラップトップと比較し、その優位性を示しました。
そして、価格について話し始め、評論家たちが予想していた価格「999ドル」をスクリーンに大きく映します。その後、彼はiPadの価格を、評論家たちの予想を大きく下回る「499ドル」と発表しました。この価格設定は、顧客が手放しで購入できる魅力的な要素となりました。
このiPadの基調講演は、既存製品のラップトップの課題を見つけ、製品を設計し、オファーを提供するというマフィアオファーの典型例です。
参考
- Ash Maurya(著)、角 征典(翻訳)『Running Lean[第三版]―リーンキャンバスから始める継続的イノベーションフレームワーク』オライリー・ジャパン、2023年