【テンプレートあり】リーンキャンバスとは何か?構成要素を解説

2023年8月23日

リーンキャンバスの概要

リーンキャンバス(Lean Canvas)は、新しいビジネスアイデアやプロジェクトのコンセプトを簡潔に整理し、検討するためのツールです。スタートアップや新しいプロジェクトの立ち上げ時に役立ちます。

ビジネスモデルキャンバスについて

リーンキャンバスは、アレックス・オスターワルダーのビジネスモデルキャンバス(Business Model Canvas)というツールのアプローチに影響を受けています。

ビジネスモデルキャンバスについては下記の記事をご参照ください。

このリーンキャンバスは『Running Lean』に詳しい内容がまとめられています。
今回は『Running Lean』の内容をもとに、リーンキャンバスについて解説していきます。

リーンキャンバスの9つの領域

リーンキャンバスはビジネスの9つの領域に注目し、1つの図にまとめる手法です。
これらの内容は必ずしもキャンバスにまとめる必要はありませんが、テンプレートが必要な場合は、下記画像を印刷してお使いくださいませ。

リーンキャンバス
出典)Ash Maurya(著)、角 征典(翻訳)『Running Lean[第三版]―リーンキャンバスから始める継続的イノベーションフレームワーク』オライリー・ジャパン、2023年、32頁より作成。

リーンキャンバスは以下の9つの領域に分かれています。

リーンキャンバスの9つの領域
  1. 顧客セグメント
    • アーリーアダプター
  2. 課題
    • 既存の代替品
  3. 独自の価値提案
  4. ソリューション
  5. チャネル
  6. 収益の流れ
  7. コスト構造
  8. 主要指標
  9. 圧倒的な優位性

ここからは、これら9つの領域について解説していきます。

顧客セグメント

顧客セグメントでは、顧客を特定していきます。
顧客を特定する時に大切なことは、顧客とユーザーの区別をつけることです。
顧客とは、製品やサービスにお金を支払う存在で、ユーザーはお金を支払いません。
つまり、顧客の特定とは、「誰がお金を支払うのか」を明確にすることです。

顧客の中でとくに大切なのがアーリーアダプターです。誰がいち早く製品を購入するかを考えることで、起業の成功確率が高まります。

課題

『Running Lean』では、「イノベーションの可能性を生み出すのは、ソリューションではなく課題です」と書かれています[1]Ash Maurya(著)、角 征典(翻訳)『Running … Continue reading
そのため、リーンキャンバスでも課題に集中していきます。
課題を考える際はターゲットとしている顧客の上位1~3の課題は何かを考えていきます。

その課題を考える時に役立つのが既存の代替品の存在です。つまり、これから世に出そうとしている製品のライバル品のことです。
これらの代替品にはどのようなものがあり、どのような不満を顧客が抱いているかを考えることによって、課題が見えてきます。

独自の価値提案

独自の価値提案とは、あなたの製品を顧客がわざわざ購入する理由のことです。
UVP(Unique Value Proposition)とも呼ばれます。
この独自の価値提案が事業の中心であるため、リーンキャンバスでも中心に位置しています。

ソリューション

ソリューションとは、課題に対しての解決策のことです。
つまり、どのような製品やサービスを提供することで、顧客の課題を解決するのかを考えていきます。

チャネル

チャネルとは、製品が顧客に到達するための道筋のことです。
広告もチャネルの1つですし、紹介もチャネルの1つです。

収益の流れ

収益の流れでは、どのように収益を獲得していくか考えていきます。
たとえば、あるITツールを売り切りの形で販売することもありますが、サブスクリプション型の販売にして、毎月の使用権の対価として課金をしてもらうこともあります。

このように、収益の流れも多様ですので、どのように収益をあげていくのかを考える必要があります。

コスト構造

コスト構造は、製品やサービスのイニシャルコストやランニングコストのことです。
つまり、製品やサービスができるまでどのくらいのコストがかかり、それを世に出した後はどのくらいのコストが必要かを考えていきます。

圧倒的な優位性

圧倒的な優位性とは、簡単にコピーしたり、購入したりできない強みのことを意味しています[2]Ash Maurya(著)、角 征典(翻訳)『Running … Continue reading

圧倒的な優位性の具体例としては、以下のものが挙げられます。

圧倒的な優位性の具体例
  • 企業内部情報
  • 専門家からの支持
  • ドリームチーム
  • 個人の信頼性
  • ネットワーク効果
  • プラットフォーム効果
  • コミュニティ
  • 既存顧客
  • SEOのランキング

リーンキャンバスを書く時の注意点

『Running Lean』ではリーンキャンバスのガイドラインとして、以下の6つの注意点を紹介しています[3]出典)Ash Maurya(著)、角 征典(翻訳)『Running … Continue reading

リーンキャンバスの注意点
  • 一気にスケッチする
  • 集団思考を避ける
  • 空欄があっても構わない
  • 1ページの制約を受け入れる
  • 現在のことを考える
  • 正しい順序はない

一気にスケッチする

リーンキャンバスの作成時間の理想は20分未満です。
リーンキャンバスは作成して終わりではなく、現在のスナップショットを撮ることです。そのため、完璧を目指す必要はありません。

集団思考を避ける

リーンキャンバスを複数人で作成する際は、みんなで1つのキャンバスを作るのではなく、一人ひとりがキャンバスを作成し、その内容をまとめます。
このような手法を採ることにより、集団思考を避けることができます。

集団思考については、下記の記事もご参照ください。

空欄があっても構わない

上述のとおり、リーンキャンバスは現在のスナップショットであり、完璧を目指すものではありません。
たとえば、現時点で「独自の価値提案」がなくても、その点は空欄にします。

1ページの制約を受け入れる

リーンキャンバスを作成する際は1ページの制約を受け入れて、簡潔に記述していきます。
1ページ以上になる場合は、そのビジネスが複雑すぎる可能性があるため、注意が必要です。

現在のことを考える

リーンキャンバスを作成する際は、すでにわかっていることを踏まえて、製品やサービスを前進するために何が必要かを考えていきます。

正しい順序はない

リーンキャンバスの書き方に正しい順序はありません。わかっている部分から書いていっても問題ありません。
よくわからない場合や、目安がほしい場合は、「リーンキャンバスの9つの領域」に記載した順番で書いていくことをおすすめします。

1Ash Maurya(著)、角 征典(翻訳)『Running Lean[第三版]―リーンキャンバスから始める継続的イノベーションフレームワーク』オライリー・ジャパン、2023年、39頁。
2Ash Maurya(著)、角 征典(翻訳)『Running Lean[第三版]―リーンキャンバスから始める継続的イノベーションフレームワーク』オライリー・ジャパン、2023年、52頁。
3出典)Ash Maurya(著)、角 征典(翻訳)『Running Lean[第三版]―リーンキャンバスから始める継続的イノベーションフレームワーク』オライリー・ジャパン、2023年、36~37頁。