【システム思考入門】システム思考とは何か?システム思考の基本を解説

2022年5月17日

なぜ今システム思考なのか?

今日、問題解決のシステム思考が注目されています。
システム思考の定義についてドネラ・H・メドウズは「問題の根本原因が何かを見いだし、新たな機会を見つける自由を与えてくれる思考法」と説明しています。

今回は『世界はシステムで動く』の内容を中心に、システム思考の基本を解説していきます。

システムの骨組み

システムの骨組みのイメージ

システムとは何かの目標に対して、様々な要素や機能が集まってできたものです。システム思考では、集まった要素と、それらの動きと影響に注目して、問題の根本原因を見いだしていきます。
システム思考で注目するのは以下の3つの要素です。

  • ストック
  • フロー
  • フィードバック・ループ

ここからは、これら3つの要素について説明していきます。

ストック

ストックは直訳すると「在庫」や「在荷」となりますが、システム思考で使うストックは蓄積された情報やものを意味する言葉として使われます。
往々にして、システム思考で分析しようとしている現象が目に見える結果として出力しているのがこのストックです。
たとえば会社であれば、「売上」や「利益」などがストックにあたります。『世界はシステムで動く』の例を借りれば、お風呂にお湯を入れて、溜まったお湯の量がストックです。

フロー

フローとは、ストックに影響をあたえる動きのことです。先ほどのお風呂の例でいえば、お風呂を入れることがフローにあたります。
フローには量や数を増やすインフローと、量や数を減らすアウトフローがあります。たとえば、お風呂にお湯を入れるのはインフロー、お風呂の栓を抜いてお湯を流すのがアウトフローです。

フィードバック・ループ

システム思考では、これまで紹介したストックとフロー、そして両者の間で機能しているフィードバック・ループに注目します。
フィードバックは「反応」と訳されますが、システム思考でも同じような意味で使われます。
たとえばお風呂に入るために、お風呂にお湯を入れ始めたとします。お湯はバスタブに注がれていきますが、そのまま溢れるほど入れるということはあまりありません。お湯が一定量溜まれば、人や機械がお湯を入れるのを止めます。こうした反応をフィードバックと呼びます。

お風呂の例は、「バスタブのお湯の量」というストックの状況が、「お湯を止める」というフィードバックを生み、「お湯を注ぐ」というフローに影響を与えていました。
ものごとや環境によっては、フィードバックを受けたフローがストックに影響を与え、そのストックの結果が再度フローに影響を与えることがあります。
このフィードバックの循環を「フィードバック・ループ」と呼びます。

フィードバック・ループの種類

ここからはフィードバック・ループの種類について解説していきます。
フィードバック・ループには以下の種類があります。

  • バランス型フィードバック
  • 自己強化型フィードバック

バランス型フィードバック

バランス型フィードバックは、ストックがある水準を保つように調整しようとします。
たとえば部屋の温度の調整はバランス型フィードバックに属しています。部屋の温度が低ければ部屋を暖め、部屋の温度が求める水準を超えると暖房を切り、暖めすぎた場合には冷房をつけます。

自己強化型フィードバック

自己強化型フィードバックは、フィードバック・ループにより、量や数が増加し続けたり、逆に減少し続けたりする循環です。好循環や悪循環と呼ばれるのがこの自己強化型フィードバックです。
たとえばギャンブルに負けた人間が、その負けを帳消しにするためにさらに大きな賭けに出て負けを繰り返すという現象は自己強化型フィードバックです。

フィードバック・ループの特徴

フィードバック・ループにはいくつかの特徴があります。
ここからはフィードバック・ループの特徴を説明していきます。

  • フィードバックには常に時間的な遅れがある
  • 破綻点がある
  • フローとストックは1対1の関係とは限らない

フィードバックには常に時間的な遅れがある

フィードバック・ループの特徴としてまず挙げられるのが、フィードバックには常に時間的な遅れがあるということです。
お風呂に溜まったお湯を見て注ぐ量を調整する場合、お湯を見た時点とフィードバックとして注ぐ量を変える時点では、後者が時間的に後になります。

破綻点がある

自己強化型フィードバックのフィードバック・ループであっても、無限にループが続くわけではありません。
悪循環の例として挙げたギャンブルであれば、いつかは手持ちのお金が無くなるという破綻点があります。

フローとストックは1対1の関係とは限らない

フローとストックの関係は1対1の関係とは限りません。
たとえば石油などの資源を採掘するというフローは、資本のストックと資源のストックに影響を与えます。さらにこの採掘の結果が資源の価格と採掘のペースに影響を与えます。

システムが上手く機能する理由

望ましい結果であろうとなかろうと、システムは上手く機能します。つまり人の手を加えなくても、バランス型フィードバックであればある一定の水準のストックに帰結し、自己強化型フィードバックであればますますストックの変化を強めていきます。
その理由を「レジリエンス」「自己組織化」「ヒエラルキー」から紐解いていきます。

レジリエンス

レジリエンスは分野によって定義が異なる言葉ですが、システム思考で用いる場合は「弾力性」という訳が最も適しています。
人間の体が多少傷ついても元の姿に戻るように、システムもレジリエンスによってもとの姿に戻ります。
そのため、システムを変えようと少々の変化を試みたところで、状況は変わりません。

自己組織化

自己組織化とは、自身のシステムをより複雑にしていく働きのことです。
これは自然界の雪の結晶や蜘蛛の巣などをイメージするとよいでしょう。これらは自ら複雑な構造にしていき、システムの強化をしていきます。
システム思考で扱うシステムも同様に、複雑化し、強化していく傾向にあります。

ヒエラルキー

自己組織化したシステムは、様々なサブシステムを作りながらヒエラルキーを作っていきます。これは人間社会のシステムを思い出せば容易にイメージできるでしょう。
たとえば、ある土地に人が集まって小さな村が誕生したとします。さらに人が集まっていくと、それを管理する役場ができ、その役場のなかでも財務係や戸籍係など、様々な機能をもつ集団が生まれます。
こうした役場や、その中の財務係や戸籍係は、村というシステムを構成するサブシステムです。
自己組織化し、自身を強化していくシステムは、いくつものサブシステムを作りながら、円滑にシステムが働くように自身を作り変えていきます。

システム思考の難しいところ

システム思考を取り入れることで、いままで把握できなかった問題や課題の新たな側面を知ることができます。
しかし、システムには難しい点がいくつかあるため、それらの点には注意する必要があります。
ここからはシステムの難しい点を紹介し、システム思考を使う時の落とし穴を解説していきます。

システムは非線形である

システムが非線形であることは、システムの把握を難しくします。線形というのは、一次関数で表せるような、単純な増加・減少の状態のことです。
お風呂にお湯を入れる場合、時間とともにお湯の量は増えていきますが、ある一定の湯量になった後はお湯を注ぐのを人為的に止めたり、お湯がお風呂から溢れたりします。
つまり、お風呂の湯量ひとつ取ってみても、単純な直線のグラフでは表現できないことが分かります。
人間社会のシステムも同様で、線形であるシステムはほとんど存在せず、非線形の状態になっています。

見えないシステムが隠れている

システム思考でものごとを把握する時に厄介なことは、すべてのシステムが見えるわけではないということです。
たとえば会社を例にすると、「売上」や「費用」という数字で補足できるシステムは把握できますが、数字で表せないスタッフの感情によって作られているシステムを捉えることは容易ではありません。
システム思考で考えるときは、あらゆる可能性を模索し、働いているシステムを知ろうとしていかなければなりません。

フィードバックの時間的遅れ

フィードバックの時間的遅れもシステムの把握を難しくしています。先述したとおり、フィードバックには必ず時間の遅れが発生します。その時間の遅れは「お湯を注ぐ」というフローと「湯量」というストックの関係のように直ちに影響が見て取れるものもあります。しかし、システムによっては「社員の待遇改善」というフローと「離職率」というストックのように、影響がゆっくり出てくるものもあります。
フィードバックが遅れると、そこにシステムがあるのに、存在に気づかないこともあります。つまり、フィードバックの時間的遅れが、システムの把握を難しくしています。

限定合理性(部分最適化)

限定合理性とは、部分最適化とも呼ばれる現象で、システムの一部分だけが最適化され、システム全体としては最適な状態ではなかったり、悪化してしまったりすることです。
たとえば、ある学校で生徒の国語の成績を上げるために、国語の宿題を増やしたとします。こうすることによって、その学校の生徒の国語の成績は上がるかもしれませんが、国語の宿題が増えたことによって、他の科目の勉強の時間が少なくなってしまい、総合的には学力が低下してしまうかもしれません。
このように、部分的な改善だけを考えると、システム全体の悪化を招いてしまうことがあります。こうした限定合理性にならないように、システム全体を鳥瞰する力が必要です。

参考

  • ドネラ・H・メドウズ(著)、枝廣淳子(訳)『世界はシステムで動く ―― いま起きていることの本質をつかむ考え方』英治出版、2015年