内外製分析とは何か?アウトソーシングをするかどうかを判断する

2020年12月3日

内外製分析の概要

内外製分析(Make-or buy analysis)は、内製と外製の双方のメリット・デメリットを比較して意思決定を行う分析手法で、プロジェクトマネジメントでは調達マネジメントを考える際に用いられます。
ソフトウェア開発などを組織内で対応することを「内製」、組織外に依頼することを「外製」と呼び、それらのどちらを選択するかを考えることから内外製分析と呼ばれます。

内外製分析の着眼点

内外製分析は決められた分析の手法などはなく、いくつかのポイントで内製した場合と外製した場合の効果を比較し、総合的に判断していきます。
内外製分析で検討されるポイントは以下の通りです。

  • コア・コンピタンス
  • 必要とされる専門知識
  • 組織内の資源の状況
  • 外製した際のコスト

ここからはこれらの内容を解説していきます。

コア・コンピタンス

内外製分析をする際に一番に考えなければならないことが、組織の競争力の源泉であるコア・コンピタンスとの兼ね合いです。
検討しているプロダクトがコア・コンピタンスに関わる内容であれば、内製する方が外製するよりもコストが割高になったとしても、内製した方がよいことが多々あります。

必要とされる専門知識

内製するか外製するかを判断する上で必要とされる専門知識も重要な判断軸になります。
例えば、本業がまったくIT業界と関係ない会社が、自社内だけで会計システムを構築するというのは至難の業です。
しかし、社内にデザイナーが存在し、ある程度HTML・CSSが分かる人間がいれば、Webサイト構築を内製することは難しくないかもしれません。
このように、必要とされる専門知識の内容によって、内製するか外製するかは分かれてきます。

組織内の資源の状況

内外製分析では組織内の資源の状況も大切な確認事項です。
先ほどの必要とされる専門知識も、「必要とされる専門知識に対して組織内の状況はどうか?」を考えていきましたが、組織内の資源の状況は重要な判断軸です。

技術的に組織内で対応できるかだけでなく、プロジェクトを進める時期にその資源が使用可能な状況になるのかも確認しなければなりません。
例えば、社内の広報のデザイナーがデザインもでき、Webサイトを作るのに必要なHTML・CSSの知識があっても、Webサイトのリニューアルを考えている時期に別件で忙しくなることが予想されるのであれば、Webサイトのリニューアルは外製した方がよいでしょう。

組織の資源を考える上で、内外製分析をする際にノウハウの蓄積にも注目した方がよいでしょう。
コスト削減を理由に外製を選択することは多いですが、外製は自社にノウハウを獲得する機会の損失を招きます。
組織内にノウハウを蓄積することは、組織の長期戦略に欠かすことができません。目先の利益にとらわれて判断を誤らないようにしましょう。そのため、差別化要因に関係ないかどうかを確認した上でアウトソーシング(外製)を選ぶ必要があります。
IT業界は、他の業界と比較するとアウトソーシングが発達しています。そのため、アウトソーシングを利用する企業も増えていますが、外製化するほど技術力が落ちてしまうという皮肉な結果に陥ってしまうことも少なくありません。
上述のコア・コンピタンスも踏まえながら、内製するか、外製するかを考えていきましょう。

外製した際のコスト

内外製分析で最も定量的に比較できるのが、コストの分析です。
主に以下の点に注目し、内製した場合と外製した場合のコストを比較していきます。

  • 回収期間
  • 投資収益率(ROI)
  • 内部収益率(IRR)
  • 割引キャッシュフロー
  • 正味現在価値(NPV)

ソフトウェア開発などを内外製分析した結果、外製の方がコスト削減できると判断されることは少なくありません。
しかし、重要なのは保守費用や運用費などのランニング・コストが含まれているかどうかを確認しておかなければ、最終的には割高になることもあるということです。
そのため、ソフトウェア開発というイニシャル・コストだけでなく、ランニング・コストも含めたトータル・コストで判断した方がよいでしょう。

また、外製でも「購入」「レンタル」「リース」などの選択肢があります。使用期間によって、どちらがお得になるかが変わってきます。レンタルとリースは会計面で大きく異なるため、それぞれの違いを良く理解して適切な方法を選びましょう。

内外製分析のメリット

内外製分析のメリットは、組織内で対応すべきか、それとも外部に依頼するかを定量的・論理的に判断できるようになることです。
内外製分析を導入しない場合、内製するか外製するかはコストのみで判断されがちになります。
その結果、競争力を失ったり、ノウハウを蓄積する機会を失ったりします。

このように、内外製分析を用いると、プロジェクトという範囲を超えて、マネジメントのレベルで物事を判断することができるようになります。

より広い視点で判断が行えるようになるとともに、プロジェクトの目標と意義が改めて明確になり、プロジェクト・メンバーのモチベーションの向上にもつながるでしょう。