ワークエンゲージメントとワークモチベーションとは何か?
仕事のやる気の原動力
人が生き生きと前向きに働くためには、そのやる気の原動力となるものが必要です。それを「ワークモチベーション」と呼びます。
ワークモチベーションは「組織や仕事に関連した目標に向かい高い水準で努力することの意思や心理的プロセスであり、それにより働く人が何らかの欲求を満たそうとすること」と定義されています。
そして「ワークエンゲージメント」とは「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられるもの」と定義されています。
すなわち、ワークエンゲージメントが高い状態とは「ワークモチベーションを高める準備状態である」ということもできるのです。
- ワークモチベーション
組織や仕事に関連した目標に向かい高い水準で努力することの意思や心理的プロセスであり、それにより働く人が何らかの欲求を満たそうとすること - ワークエンゲージメント
仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられるもの
今回はワークモチベーションを高めるために必要なワークエンゲージメントについて考えていきます。
ワークモチベーションを高める要因
ワークモチベーションについての代表的な理論には、目標設定理論(ロック・ラザム 1984)、社会的認知理論(バンデュラ 1979)、組織的公正理論(グリーンバーグ、フォルジャー 1983)などが挙げられます。
これらの理論はいずれも、組織において従業員が何らかの行動を起こし、それを推し進め、継続していくプロセスについて説明しています。
つまりワークモチベーションを高めるうえでは、仕事に対する「前向きな姿勢を反映すること」と考えられているのが一般的なのです。
しかしながら、ワークモチベーションのなかには「仕事をしたい」という前向きな気持ちよりも「仕事をしなければならない」という強迫的な観念によって行動がとられるケースもあります。
そして、そのような必ずしも前向きな要素を持たないワークモチベーションを従業員が持ち続けていると、個人のみならず組織のパフォーマンスや生産性など、さまざまな場面で不利益をもたらす可能性があるのです。
それを「ワーカホリズム」と呼びます。このワーカホリズムについても見ていきましょう。
ワーカホリズムの弊害
ワーカホリズムとは「どうしてもこの仕事をしなければならない」という、自身ではコントロールできない内的な衝動により、必要以上に仕事をし続けてしまう状態を指します。
また、業務量の過剰な多さなどの外的な要因によって、プライベートを犠牲にして働かなければならない状態も同様にワーカホリズムと呼ぶことができます。
ワーカホリズムの傾向を持つ労働者は仕事に没頭しているため、一見ワークエンゲージメントが得られている労働者と同様の高い成果が見込まれるでしょう。
しかし、必要以上に仕事にのめり込んでしまう弊害として、自分自身の心身の健康を害することにつながりやすい点が問題として挙げられます。
このワーカホリズムは「やりがい搾取」の状態にも似ています。やりがい搾取については、以下の記事もご参照ください。
ワークエンゲージメントによるモチベーション向上
最後にワークエンゲージメントについて考えていきましょう。ワークエンゲージメントにおいては、その状態にあるときの特徴として「活力」「熱意」「没頭」が挙げられました。
「活力」は身体的にも精神的にもエネルギッシュであり、ストレスからの回復力があり、疲弊しにくく、粘り強いなどの特徴がある状態を指します。
そして「熱意」は仕事に対する高いコミットメント、誇り、有意義感などを自覚している状態を指し、「没頭」は仕事に集中してのめり込んでいる状態を指します。
つまりこれらの要素が高められたときにワークモチベーションが高まる下地ができあがる、と言っても過言ではありません。
マネージャーはストレッサーのコントロールが肝心
ワークエンゲージメントを高めるためには、仕事上のさまざまなストレッサー(job stressors)を低減させる必要があります。ストレッサーとは「ストレスの原因となる刺激」のことを指しますので、ストレスそのものではないという点に注意しましょう。
心理的ストレス反応を低減させるためには、主に仕事のストレッサーを低減させることが必要とされています。
つまりは業務に求められるレベルや量といった部分をコントロールすることです。
人によっては今与えられている仕事が自身の能力を超えていると感じているかもしれません。そしてそれは他人ではなく本人しか知りえないと考えるべきで、それをいち早く知る努力をすることが管理者には求められるでしょう。