職務モチベーションとは何か?職務モチベーションが従業員の職務行動や業績に影響を与える

2021年11月19日

注目を集めている職務モチベーション

職務モチベーション(work motivation)は、会社組織における従業員の職務行動や業績に大きな影響を与えることから、学術的にも実用的にも高い関心が寄せられてきた概念で、昨今の労働環境問題からも特に注目を浴びています。

職務モチベーションは固定的で安定的な性質を持つ動機付けとは異なり、状況や成功・失敗などの様々な経験を経て変動する性質を持っています。

理論的にも職務モチベーションは「目標に向けて行動を方向づけ、強化し、そして維持する心理的なプロセス」と定義され、「方向性」「強度」「持続性」の3次元の特性を備えた概念として考えることが定着しています[1]Barrick, M. R., Stewart, G. L, & Piotrowski, M. (2002) “Personality and job performance: Test of the mediating effects of motivation among sales representatives". Journal of Applied … Continue reading

3つの次元で考えるモチベーション

「方向性」「強度」「持続性」の3つの次元でモチベーションを考えることは、職務モチベーションの課題を正確に捉え、解決に導く上で重要なスタンスといえるでしょう。それが与える効果はことのほか大きく、これまで見えていなかった側面が発見され、問題の抜本的な解決につながるということがあります。

3つの次元でモチベーションを考えるときに注意すべきは、3つそれぞれの次元は独立した存在ではないということです。モチベーションにおいては一般的にそれぞれが互いに影響し合うことが確認されています。

つまりそれは、1つの次元のみに注力した場合は求める効果が得られないということを意味しています。

モチベーションの「方向性」

モチベーションの「方向性」とは、「今から何のためにどうするのか」を見ることであり、職務に取り組む上でベースとなる次元です。

方向性は企業でいうところのビジョンや経営方針、行動規範といったものをさし、「強度」と「持続性」に強く影響を与えるため、最も重視すべき次元です。

特に昨今の若者は働くことの意義について高いレベルを要求する傾向にあるため、多くの企業がこの方向性について慎重な配慮を行っています。

方向性は一旦浸透すれば長期にわたってその効果を発揮するため、多少時間がかかっても丁寧に取り組んでいくことが望まれます。

モチベーションの「強度」

モチベーションの「強度」とは、「どれくらいのレベル、頻度で取り組むか」を見ることで、職務上の困難な状況に際してその効果を強く発揮します。強度に関しては個人の内面性が強く作用すると言われており、個人差が出やすい次元です。

この次元を外側から高める上で有効なのが、与えられた職務において不明な点(役割、権限、ルール等)を無くすことです。強度は業務にあたるなかで徐々に失われていくもので、その障害となっているものを排除する必要があります。強度はある1つの要因で高められているのではなく、実際は様々な実務上の制約がそれを引き下げることに一役買っていることに配慮しなければなりません。

モチベーションの「継続性」

モチベーションの「継続性」とは、「いつまで続けるか」を見ることであり、職務に対する粘り強さや恒常性を高める上で重要な次元です。継続性を高めるにはプロジェクトごとの納期を明示したり、定期的な配置転換などが有効です。つまり特定の課題に取り組むときは「はじめ」と「終わり」を明示し、しっかりと意識させることが継続性を高めることにつながるのです。

これは納期効果とも類似している部分があり、「人はゴールが見えて(把握して)いるときに初めて、持っている持久力を最大限に発揮することができる」と言われています。

まとめ

ここまでモチベーションを3つの次元から考えてきましたが、何より大事なのはこの3つの次元がそれぞれに影響し合うということです。1つずつ分断して取り組むのではなく、全体的な視点から俯瞰して問題にあたることが必要です。

場合によっては今取り組んでいるものがどの次元に属するものなのかわからなくなることもあるでしょう。しかし、最も大切なのは、3つの異なる次元とその意味を理解しているということ、そして、その視点からモチベーションへ働きかけようとする姿勢なのです。

1Barrick, M. R., Stewart, G. L, & Piotrowski, M. (2002) “Personality and job performance: Test of the mediating effects of motivation among sales representatives". Journal of Applied Psychology, 87(1), pp.43-51.