報酬制度の注意点!報酬制度は仕事から創造性や楽しさを奪ってしまう

2021年9月17日

報酬制度は創造性や楽しさを奪ってしまう

報酬制度は企業をはじめ、さまざまな組織で導入されていますが、使い方を誤ると、罰則と同じ効力を持ち、さらに人間関係を悪化させる可能性もあります(詳しくはこちらの記事をご参照ください)。
今回は報酬の『創造性を奪う』という一面について考えます。
報酬が創造性を奪う理由は以下の4つです。

1.報酬により簡単なことしかしなくなるため
2.報酬が次々とコントロールを得るため
3.報酬にないことをしなくなるため
4.報酬が楽しさを奪ってしまうため

それではこれから詳しく見ていきましょう。

報酬は簡単な仕事の誘因となる

「若者の活字離れ」と言われて久しくなりましたが、学生の読書を促すべく、

「本を一冊読めば、アメを一つあげよう」

という報酬制度を採り入れた小学校があったとしましょう。
Web上で様々な情報が得られるようになった昨今でも本から学ぶことが多く、幅広く読書することで、子供たちに広い見識を培ってほしいという学校側の目的から設立されました。

この制度によって子供はアメを求めて本を読むようになりました。一見してこの報酬制度は成功しているように思えます。

しかし、多くのアメが欲しい子供はページ数の少ない本を読み、冊数を稼いでくるでしょう。
そしてそれはルール違反でもなんでもなく、ある意味効率よくアメという成果を得るための常とう手段と言えます。

一方、学校側の目論見としては学生に様々な本を読んでもらい、見識を広げてもらうことだったはずです。

このように報酬制度を設けたことにより、学生は簡単に成果が得られる方法を選ぶようになりました。
このたとえ話で見られた現象は、会社であっても同じことです。
報酬制度により、社員は簡単な業務にだけ取り組むようになり、難しいやりがいのある仕事に打ち込もうとしなくなるでしょう。

報酬は次々と制限・統制を呼ぶ

さて、先ほどの学校の制度に対してこのような反論がでてくるかもしれません。

「冊数に応じて報酬のアメが与えられたから楽なほうを選ぶようになったのだ。ページ数に応じて報酬を出せばよいのではないか」

しかし、これも冊数と大差ない結果になり、難しい本を避けて、文字数の少ない本ばかりが読まれてしまうでしょう。

「それでは文字数の少ない本は対象外にしたらどうか」「文字数で報酬を出したらどうだ」という案が次々とでてくるかもしれません。どの案についてもそれぞれ楽に成果を出す抜け道があります。

おそらく、この報酬制度の最終的な形は

「学校の先生が選んだ本を読めばアメをあげる」

というものになるでしょう。

「我々が選んだ本であれば十分に意義のある本だろうし、その中で学生が冊数をこなしていってくれれば大きな成果があがるだろう」

このように学校側は考えるでしょう。しかし、これでは学校側が難しい本を選出しがちになったりと、本を読む習慣を持たない子にはこの制度に見向きもしなくなってしまいます。
さらに問題なのは、学校側が本を指定していることです。広い見識を得るために読書を奨励しようとしていたにも拘らず、本を指定することにより学生の視野の広さを学校側が制限することになってしまうのです。
このように報酬制度というのは、コントロールの一種であるがゆえに、一度何かに報酬をかけようとすると次々に他の分野も制限・統制しなければならなくなります。
コントロールはコントロールを呼び、いつしか制度はがんじがらめになります。
そしてその制度に参加している人の行動に強い制約がかかり、自発性や創造性を奪っていくのです。

報酬がないことはしなくなる

報酬が出ないことはしなくなるという状況は、先ほどの読書に対する報酬制度からも容易に想像がつく話です。
読む本も学校の先生が決める報酬制度では、それ以外の本を読むことが損な行動となってしまいます。

この負の効果は会社の制度として取り入れた時、さらに影響を強めてしまいます。例えば営業マンが営業活動の中で「自社は他社に比べてWebを活用できていない」と感じたとしましょう。

しかし、その営業マンに目標と報酬が設定されていた場合、貴重な時間をWeb活用の企画などに費やすというのはその営業マンにとって損な行動となってしまいます。結局その企画は十分に考えられることなく終わるのですが、これはその営業マンの自発性の低下を示しているだけでなく、新しいことにチャレンジしない社員を増やすことにより、会社全体の競争力を低下させることにもつながっていると分かります。

報酬制度が競争を促すことはすでに見てきましたが、皮肉なことに報酬制度によって競争力は減退していくのです。

報酬は楽しみを奪ってしまう

これまで報酬制度が個人の自発性を奪い、型にはめられた行動のみを促されることを見てきたため、「報酬が楽しみを奪う」といっても大きな不思議はないと思います。
ダニエル・ピンクが言うように、「自律性」がモチベーションを構成する主要な要因であるのであれば、報酬が自律性を奪い、やる気を損ねることは明らかです[1]ダニエル・ピンク『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか 』(大前研一訳)、講談社+α文庫、150頁。。さらに報酬にはもともと楽しみを見出していた人の気持ちまで変えてしまう可能性があります。
例えば、絵を描くことが好きな子供を集め、2つのチームに分けたとします。一方は絵をかいたら賞がもらえるAチーム、もう一方は何ももらえないBチームです[2]ダニエル・ピンク『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか 』(大前研一訳)、講談社+α文庫、81~82頁。
Bチームはただ絵を描くことが楽しく、絵を描き続けました。一方で、Aチームは賞がもらえる時であってもBチームほどの絵を描かず、賞がもらえる期間が終わってしまうと、絵への関心も低下してしまいました。

このように報酬を与えるとものごとを「これをやればこれがもらえる」という仕事にさせてしまい、楽しさを消してしまいます。

まとめ

今回は報酬が創造性を奪うという負の効果を見てきました。
報酬制度はそもそもが人の行動をコントロールしようという目的があるため、制限下の中で人の創造性は次第に失われていきます。こうした報酬制度を会社に安易に採り入れると、仕事の面白さも減退していき、成果は上がらず、離職者も増えていき、めぐりめぐっては会社の競争力を失わせてしまうのです。

1ダニエル・ピンク『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか 』(大前研一訳)、講談社+α文庫、150頁。
2ダニエル・ピンク『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか 』(大前研一訳)、講談社+α文庫、81~82頁。