一貫性の原理とは何か?人の一貫性の心理を利用したマーケティング方法を解説(『影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか』より)

一貫性の原理とは

一貫性の原理とは、行動や意思決定の際に、自分の過去の言動との一貫性を保とうとする心理的な傾向です。
人は無意識のうちに、自分がとった行動や発言に矛盾が生じないようにしようとします。
一貫性を持たせようとする理由には、考えていることや言っていることが、一貫していないのは一般的に望ましくないと考えられているためです。

過去の言動との一貫性を保とうとして自動的に反応してしまうのは、「考え続ける」という苦難を避ける故の行動で、考えることによって厳しい結果が生じるのを避けている側面もあります。

一貫性を保つ欲求の3要素

私たちの「一貫性を保ちたい」という欲求は非常に強く、それに逆らうことは難しく感じられます。一貫性にこだわってしまう要因としては、以下の3つが挙げられます。

社会から高評価が得られる

一貫性のないことをしていると、周囲からの信頼が得られません。逆に一貫性を保っていると、裏表がない好人物と受け取られ、知能的にも高い評価が得られます。

日常生活において有益

日常生活においても同じで、自分の立場を決定しておけば、それに沿った言動をすればよいため、問題について頭を悩ませなくともよくなり、精神的に楽で便利です。

複雑な情報処理に縛られない

過去にあった経験と同じような状況がおとずれた時に、以前の決定を思い出して、同じように処理できます。新たに、膨大な情報を処理する必要はありません。

一貫性のスイッチが押されるメカニズム

立場を明確にすると、それに合った一貫した行動をとるようになります。さらに、他人に見える形で自分の立場を表明した時にそれは強く起こります。このように、自分以外の人に表明すると、より一層一貫した言動をとるようになるのは、一貫した人間に見せようとする意識が強く働くためです。

一貫性の原理が使われる場面

ここからは、身近で具体的な活用例を紹介しましょう。

自分の利益に合致した行動を相手から引き出す

エジプトの元大統領であるサダト氏は、国際交渉の前に、交渉相手国の国民を褒めていました。「国民たちは協調性が高く、公正である」と最初に告げられて、評判を高められた相手国の代表者は、無意識のうちに、その評判に見合った言動をしようと考えます。サダト氏の発言は、彼の求める利益に合った言動を相手から引き出す効果がありました。

自ら書かせる

クーリングオフの制度ができてから、契約破棄が増えた訪問販売会社は、制度に対抗する手段を考えました。その方法は非常に単純で、「顧客に自ら契約書を書かせる」というものでした。
一貫性の原理により、客は自分が書いた内容に見合った行動をとろうとするため、契約を破棄しようとは思わなくなります。

参考

  • ロバート・B・チャルディーニ(著)、社会行動研究会(翻訳)『影響力の武器[第三版]―なぜ、人は動かされるのか』誠信書房、2014年