『失敗の科学』のクローズド・ループ現象とは何か?失敗を繰り返す組織に発生している現象とオープン・ループ現象に変える方法を紹介

2023年6月26日

クローズド・ループ現象とは

クローズド・ループ現象とは、失敗や欠陥が発生しても、それが組織の改善につながらない現象のことです。

「クローズド・ループ」とは、もともと制御工学で用いられる言葉で、人間の介入なしに自動的に調整する仕組みのことを指します。たとえば、最近の家庭用エアコンは、設定された温度と部屋の温度を比較し、冷風や温風を送ります。

一方で、マシュー・サイドの著作『失敗の科学』では、「失敗や欠陥にかかわる情報が放置されたり曲解されたりして、進歩につながらない現象」を「クローズド・ループ現象」と呼んでいます[1]マシュー・サイド(著)、有枝春(訳)『失敗の科学』ディスカヴァー・トゥエンティワン、2016年、26頁。
今回は、この『失敗の科学』で使われている意味での「クローズド・ループ現象」について解説していきます。

クローズド・ループ現象が発生する原因

クローズド・ループ現象は政治や医療、民間の会社までさまざまな組織で発生します。
クローズド・ループ現象が発生する最たる原因は失敗を隠蔽しようとする体質です。

たとえば、『失敗の科学』の著者であるマシュー・サイドは医療業界には「完璧でないことは無能に等しい」という考えが蔓延していると指摘しています[2]前掲『失敗の科学』29頁。
こうした雰囲気があると、その組織の人間は失敗を隠蔽しようとし、失敗や欠陥の調査を嫌がるようになります。

その結果、失敗や欠陥が組織の改善に活かされず、その組織は同じ失敗や欠陥を繰り返してしまいます。

失敗の報告を奨励し、オープン・ループに変える

マシュー・サイドは失敗が適切に対処され、学習の機会や進化がもたらされる仕組みを「オープン・ループ」と呼んでいます。
組織がクローズド・ループから抜け出し、オープン・ループに入るには、組織が失敗や欠陥を認め、改善につなげる仕組みを導入しなければなりません。失敗や欠陥が発生したら、その報告を奨励し、原因を徹底的に追及するという組織作りが大切です。

1マシュー・サイド(著)、有枝春(訳)『失敗の科学』ディスカヴァー・トゥエンティワン、2016年、26頁。
2前掲『失敗の科学』29頁。