フローとは何か?8つの構成要素とフローに入る具体的な方法を解説
フローとは

フローとは心理学者のM.チクセントミハイ(Mihaly Csikszentmihalyi)が提唱した概念で、「物事に熱中し、時間や周囲をも忘れて行動している状態」のことを指します。
たとえば、以下のような状態が、「フローに入った」と言われる状態です。
- 本を読んでいたら、いつの間にか数時間経っていた
- リフティングの練習をしていたら日が暮れていた
- 仕事に集中していて、声をかけられても気づかなかった
このように集中した状態で物事に取り組むと、パフォーマンスが上がり、成果につながります。
今回は、どのようにすればフローに入ることができて、仕事のパフォーマンスを向上させられるのかをご紹介します。
フローの8つの構成要素
チクセントミハイによればフローの構成要素は、次の8つがあります。
達成できる見通しのある課題 | 自分の能力より少し高い難易度で、達成の可能性のある目標があるとき、フローに入りやすくなります。 |
集中 | 自分の今していること以外に注意を向けることなく、現在の行動のみに集中している状態です。 |
明確な目標 | なんのためにしているのかの目標を明確に持っている状態です。 |
フィードバックの速さ | 自分の行動に対する結果がすぐに見えることで、フロー状態に入りやすくなります。 |
没入状態 | 今していること以外の雑念を排除し、完全に現在の行動に夢中になっている状態です。 |
自分の行為をコントロールしている感覚 | 物事を自分の思う通りに進め、コントロールできていると感じられる状態です。 |
自意識の低下 | 作業に没頭し、周囲のことが目に入らなくなっている状態です。 |
時間感覚の変化 | 集中しているときに時間が短く感じられる状態です。 |
フローに入るポイントは「楽しい」「好き」の気持ち
好きなことをしているときは、楽しいですし、比較的簡単にフローに入ることができます。これは誰しも経験があると思います。
「なんだ、だったら仕事はやらなければいけないことで、好きなことじゃないから無理だ」と諦める必要はありません。
8つの構成要素、すべてを満たさなくても構いません。そのうちのいくつかを満たすことでフローに入ることは充分可能です。
ご紹介した8つの構成要素を工夫して活用する方法を、次から見ていきましょう。
仕事でフローに入る具体的な方法
得意な作業を見つける
みなさんにも、仕事の中で「好き」とまではいかなくとも、「これは得意」という作業があるのではないでしょうか。まずはそれに気づき、工夫を重ねてどんどん短時間で処理できるようになりましょう。そうすることで、成功体験が積め、「好き」につながっていきます。
スモールゴールを設定する
これは、フローの構成要素のうちの「フィードバックの速さ」に関連します。
自分のやったことに対してすぐに成果が出ると、達成感が味わえて、もっとやろうという気持ちになります。しかし、仕事ですぐに成果が出るとは限りません。
そのため、自分で「今日は5件営業する」など、意識的に短期の目標を設定します。これがスモールゴールです。日々小さな達成感を得られ、楽しさを感じられるようになります。
少しレベルの高い仕事に挑戦する
これは、フローの構成要素の「達成できる見込みのある課題」に関連します。
仕事だけではありませんが、物事に取り組む際、私たちは簡単すぎると退屈になってしまいますし、難しすぎてもやる気が起きません。
「少しだけ自分の能力よりもレベルが高い」と思われるものに、挑戦するのがおすすめです。それは仕事のすべてではなく、一部で構いません。それだけで新鮮な気持ちになりますし、高いパフォーマンスが望めます。
モチベーションを高めるちょうどいいレベルの仕事を、チクセントミハイは「ゴルディロックスの仕事」と呼んでいます。
ゴルディロックスの仕事については、下記の記事もご参照ください。
外発的動機を内発的動機へ
「会社や上司から言われたからする」というのは、外発的動機(外的動機づけ)です。おそらく多くの方が、このように仕事をしていると思います。
しかしこれでは主体性がなく、目標や目的が自分の中で明確でないため、フローには入れません。
これを内発的動機(内的動機づけ)、つまり自分自身の内から出る動機に変えるのです。
たとえば、上司に資料作成を指示されたとしたら、ただ作るのではなく、「誰が見ても分かりやすい、見やすい資料を作る」など自分の目標を設定しましょう。これだけで意識が変わって、フローに入りやすくなります。
外発的動機づけと内発的動機づけについては、下記の記事もご参照ください。
まとめ
今回は、仕事のパフォーマンスを上げるフロー体験についてご紹介しました。
無意識に入るフローですが、それを少しの工夫で、意識的にフローに入りやすくすることはできます。
まずは得意な作業を見つけ、目標を明確にし、スモールゴールを設定してみましょう。
参考
書籍
- メンタリストDaiGo『「好き」を「お金」に変える心理学』PHP研究所、2017年
- M. チクセントミハイ(著)、今村浩明(訳)『フロー体験 喜びの現象学』世界思想社、1996年
- 井上裕之『なぜ、あの人の仕事はいつも早く終わるのか? 最高のパフォーマンスを発揮する「超・集中状態」』きずな出版、2017年