フローとは何か?8つの構成要素とフローに入る具体的な方法を解説

2023年2月7日

フローとは

M.チクセントミハイ(写真はWikipediaより)

フローとは心理学者のM.チクセントミハイ(Mihaly Csikszentmihalyi)が提唱した概念で、「物事に熱中し、時間や周囲をも忘れて行動している状態」のことを指します。

たとえば、以下のような状態が、「フローに入った」と言われる状態です。

  • 本を読んでいたら、いつの間にか数時間経っていた
  • リフティングの練習をしていたら日が暮れていた
  • 仕事に集中していて、声をかけられても気づかなかった

このように集中した状態で物事に取り組むと、パフォーマンスが上がり、成果につながります。
今回は、どのようにすればフローに入ることができて、仕事のパフォーマンスを向上させられるのかをご紹介します。

フローの8つの構成要素

チクセントミハイによればフローの構成要素は、次の8つがあります。

達成できる見通しのある課題自分の能力より少し高い難易度で、達成の可能性のある目標があるとき、フローに入りやすくなります。
集中自分の今していること以外に注意を向けることなく、現在の行動のみに集中している状態です。
明確な目標なんのためにしているのかの目標を明確に持っている状態です。
フィードバックの速さ自分の行動に対する結果がすぐに見えることで、フロー状態に入りやすくなります。
没入状態今していること以外の雑念を排除し、完全に現在の行動に夢中になっている状態です。
自分の行為をコントロールしている感覚物事を自分の思う通りに進め、コントロールできていると感じられる状態です。
自意識の低下作業に没頭し、周囲のことが目に入らなくなっている状態です。
時間感覚の変化集中しているときに時間が短く感じられる状態です。

フローに入るポイントは「楽しい」「好き」の気持ち

好きなことをしているときは、楽しいですし、比較的簡単にフローに入ることができます。これは誰しも経験があると思います。

「なんだ、だったら仕事はやらなければいけないことで、好きなことじゃないから無理だ」と諦める必要はありません。

8つの構成要素、すべてを満たさなくても構いません。そのうちのいくつかを満たすことでフローに入ることは充分可能です。
ご紹介した8つの構成要素を工夫して活用する方法を、次から見ていきましょう。

仕事でフローに入る具体的な方法

得意な作業を見つける

みなさんにも、仕事の中で「好き」とまではいかなくとも、「これは得意」という作業があるのではないでしょうか。まずはそれに気づき、工夫を重ねてどんどん短時間で処理できるようになりましょう。そうすることで、成功体験が積め、「好き」につながっていきます。

スモールゴールを設定する

これは、フローの構成要素のうちの「フィードバックの速さ」に関連します。
自分のやったことに対してすぐに成果が出ると、達成感が味わえて、もっとやろうという気持ちになります。しかし、仕事ですぐに成果が出るとは限りません。

そのため、自分で「今日は5件営業する」など、意識的に短期の目標を設定します。これがスモールゴールです。日々小さな達成感を得られ、楽しさを感じられるようになります。

少しレベルの高い仕事に挑戦する

これは、フローの構成要素の「達成できる見込みのある課題」に関連します。
仕事だけではありませんが、物事に取り組む際、私たちは簡単すぎると退屈になってしまいますし、難しすぎてもやる気が起きません。

「少しだけ自分の能力よりもレベルが高い」と思われるものに、挑戦するのがおすすめです。それは仕事のすべてではなく、一部で構いません。それだけで新鮮な気持ちになりますし、高いパフォーマンスが望めます。

モチベーションを高めるちょうどいいレベルの仕事を、チクセントミハイは「ゴルディロックスの仕事」と呼んでいます。
ゴルディロックスの仕事については、下記の記事もご参照ください。

外発的動機を内発的動機へ

「会社や上司から言われたからする」というのは、外発的動機(外的動機づけ)です。おそらく多くの方が、このように仕事をしていると思います。
しかしこれでは主体性がなく、目標や目的が自分の中で明確でないため、フローには入れません。
これを内発的動機(内的動機づけ)、つまり自分自身の内から出る動機に変えるのです。

たとえば、上司に資料作成を指示されたとしたら、ただ作るのではなく、「誰が見ても分かりやすい、見やすい資料を作る」など自分の目標を設定しましょう。これだけで意識が変わって、フローに入りやすくなります。

外発的動機づけと内発的動機づけについては、下記の記事もご参照ください。

まとめ

今回は、仕事のパフォーマンスを上げるフロー体験についてご紹介しました。
無意識に入るフローですが、それを少しの工夫で、意識的にフローに入りやすくすることはできます。

まずは得意な作業を見つけ、目標を明確にし、スモールゴールを設定してみましょう。

参考

書籍

  • メンタリストDaiGo『「好き」を「お金」に変える心理学』PHP研究所、2017年
  • M. チクセントミハイ(著)、今村浩明(訳)『フロー体験 喜びの現象学』世界思想社、1996年
  • 井上裕之『なぜ、あの人の仕事はいつも早く終わるのか? 最高のパフォーマンスを発揮する「超・集中状態」』きずな出版、2017年

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