普通の育休より気軽?出生時育児休業(産後パパ育休)制度について解説

2023年5月2日

出生時育児休業(産後パパ育休)制度とは

出生時育児休業(産後パパ育休)制度とは、「妻の産後は少し仕事を休んでサポートしたいが、ガッツリ育休を取ってしまうと仕事に影響が出るので不安」という男性をターゲットにした、育児休業をより気軽に取りやすくする制度です。
普通の育休よりも期間が短く、就労に関する制限が少ないのが特徴です。

出生時育児休業(産後パパ育休)制度の利用対象

出生時育児休業は、子の出生後8週間以内で4週間を限度に、通常の育児休業とは別に取得できる休業制度です。2022年10月に施行された比較的新しい育休制度になります。

女性でも利用できる?

「子の出生後8週間以内」の期間は、出産した女性の場合、産前産後休業制度(産前6週間~産後8週間)を利用することになるため、出生時育児休業制度の利用対象とはなりません。
ただし女性であっても、生後間もない子どもと養子縁組をした場合など、一定の要件を満たす場合であれば、女性でも出生時育児休業の対象になります。

妻が産休中でなくても利用できる?

出生時育児休業の対象となる期間と女性の産休期間が重複しているため、出生時育児休業は「男性版の産休」という認識で語られることも多い制度です。
ただし、配偶者が産後休業を取得している場合はもちろんのこと、配偶者が専業主婦(主夫)の場合であっても、出生時育児休業は取得することができます。

出生時育児休業(産後パパ育休)制度と、育児休業制度(通常の育休)の違い

育児休業制度(通常の育休)の方が期間は長い

育児休業(通常の育休)は、原則、子どもが産まれてから1歳になる誕生日の前日まで取得することができます。
女性だけではなく男性従業員も育休を取ることができ、また配偶者が専業主婦(主夫)の場合でも、育児休業は取ることができます。

出生時育児休業制度は「子の出生後8週間以内に4週間以内の期間」である一方、通常の育休は原則上限1年間(状況によっては1年6カ月、2年の延長が可能:前記事参照)となります。

出生時育児休業制度では、休業中の就業が可能

通常の育休よりも期間が短い出生時育児休業ですが、通常の育休にはない特徴として「休業中の就労が可能」という点があります。

通常の育児休業では原則、休業中の就業は不可になります。
一方、出生時育児休業は労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲内で休業中の勤務が可能となります。

ただし、出生時育児休業中の就業日数・就業時間については、以下の制限があります

  • 休業期間中の所定労働日・所定労働時間の2分の1
    (休業開始日や終了予定日を就業日とする場合は、当該日の所定労働時間数未満とすること)

出生時育児休業制度と、通常の育休で同様となる点

休業中の給付金受給

通常の育休の場合は「育児休業給付金」が、出生時育児休業の場合は「出生時育児休業給付金」が雇用保険から支給されます。どちらも金額の計算方法は同じです。(金額については前記事参照)

ただし、休業中に賃金が支払われた場合は、以下のような給付金の減額調整が行われます。
(休業日数が180日までの間の数値)

  • 支払われた賃金額が休業開始時賃金月額の13%以下の場合、減額されない
  • 支払われた賃金額が休業開始時賃金月額の13%~80%の場合、休業開始時賃金月額の80%と支払われた賃金額の差額のみ支給される
  • 支払われた賃金額が休業開始時賃金月額の80%以上の場合、給付金は支給されない

出生時育児休業制度を利用しながら休業中に就業する場合、給付金の減額調整も考慮して就労時間を考えるとよいでしょう。

2回に分割が可能

出生時出生時育児休業も通常の育児休業も、2回に分割して取得することができます。
出生時出生時育児休業の場合、「子の出生後8週間以内で4週間を限度」の範囲内なら、例えば「子どもが産まれて2週間は休業し、その後4週間は仕事復帰。その後、母親が里帰りから帰ってくるのでサポートのために、また2週間休業」という形を取ることも可能です。

出生時育児休業と通常の育休の両方を取ることもできる

出生時育児休業を取得後、「やっぱり通常の育休も取りたい」という考えになった場合、原則、通常の育休開始1か月前までに申し出る必要があります。
通常の育休は原則「子が1歳に到達するまで」が限度のため、両方取ることによって育休期間を延ばすようなことはできません。

ただし前の項目で述べた通り、通常の育休も出生時育児休業と同様、2回の分割が可能です。
すなわち、出生時育児休業と通常の育休の両方を取る場合、合計で4回の分割が可能になります。
仕事や家庭の都合で、仕事復帰と休業を複数回繰り返したいような場合は、両方を取ることで実現可能です。

普通の育休より気軽な(産後パパ育休)制度

出生時育児休業(産後パパ育休)制度は、通常の育休と比較すると休業期間や給付金の金銭的な側面からはお得な制度とは言い難いです。
ただし、「あまり仕事に穴を開けたくない」と考える男性にとっては、休業中の就労が可能で短期間の育児休業を取得できる有用な制度といえるでしょう。

出産環境等にもよりますが、一般的に女性は出産後1週間ほど、病院に入院することになります。子どもの出生の手続きや入退院時の対応、また他に子どもがいる場合は、母親入院中における子どもの世話なども必要になるため、父親が休暇を取らずに全てをこなすことは現実的に難しいといえます。
また、産後8週間は一般的に新生児に対して夜間も含めて約3時間おきの授乳が必要になるため、母親が家事や他の子どもの育児に時間を費やすことは難しくなります。
その期間、父親が気軽に育休を取れる「出生時育児休業(産後パパ育休)制度」は、現代社会において有用な制度であるといえるでしょう。