チームメンバーが育休!いつ戻ってくる? ~産休と育休の期間について解説~

2023年5月1日

はじめに

今日、産休・育休には従業員に給付金が出るため、時期によっては働いている時期とほぼ同等の手取り金額を得ることができます。会社員からすると、まさに育休は取った方が得な制度になっています。

一方で、プロジェクトチームのメンバーが産休や育休に入る場合、「いつ戻ってくるのだろう?」と復帰の時期が気になるケースは多いでしょう。メンバーが戻ってくるタイミングによって、プロジェクトの進捗が変わったり、仕事の調整などが必要になったりする場面は、育休が一般的になる昨今においてよく発生しています。

この記事では、チームメンバーが育休からいつ戻ってくるかの参考にできるよう、産休・育休制度のポイントについてまとめていきます。

産休(産前6週~産後8週)について(女性のみ)

産休(産前産後休業)の期間

労働基準法では、産休期間について以下のように定められています。

産休の期間
  • 6週間(双子などの多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合は、就業させてはならない。
  • 産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし産後6週間を経過した女性が請求した場合において、医師が支障がないと認めた業務に就かせることは差し支えない。

つまり、産前の休暇は従業員が請求しなければ出産日まで就業させても差支えありません
一方、産後については、8週間(医師が認めた場合は6週間)は、従業員が働きたがったとしても働かせると法律違反になります。

なお、産休は女性のみの制度です。
男性従業員が「妻が出産したので休みたい」という場合は、「育児休業制度」もしくは「出生時育児休業(産後パパ育休)制度」を利用します。

出産手当金

出産手当金は産休中に健康保険から支給される手当金です。
細かい計算式は省略しますが、おおよそ平均給与の3分の2相当の額が支給されます。

ちなみに計算の元となる給与には、会社から支給されている通勤手当なども含みます。
また、毎月の給料から天引きされている健康保険や厚生年金の保険料も、産休中は支払いが免除となります。

これらのことから、平均給与の3分の2相当といえど、実際には通常の給与とほとんど変わらない額を受給できる方も多いです。

育休について(男女両方)

育休(育児休業)期間(原則)

育児介護休業法では「1歳に満たない子を養育する労働者は、申し出ることにより育児休業をすることができる」と定められています。
すなわち、子どもが産まれてから1歳になる誕生日の前日まで、女性だけではなく男性従業員も育休を取ることができます
また、配偶者が専業主婦(主夫)の場合でも、育児休業は取ることができます。

女性の場合は産休(~産後8週)終了後、育休に切り替わります。
男性の場合は産休がないため、子どもが産まれてから育休に入ることになります。

育児休業給付金

育児休業給付金は雇用保険から支給される給付金です。
金額は、細かい計算式は省略しますが、時期によって以下の2段階に設定されています。

育休開始から180日目まで

産休期間中とほぼ同額(平均給与の3分の2相当の額)が支給されます。

181日目以降

おおよそ平均給与の2分の1相当の額が支給されます。

育休期間中は、産休と同様、給料天引きの保険料の支払いが免除となり、給付金の計算の元になる賃金額には通勤手当なども含まれます。
そのため、育休開始6カ月(すなわち、女性の場合は産休を合わせて産後8カ月)までは働かなくても、働いていた頃とほぼ同額の手取り額を得ることができる方も多いです。

両親ともに育児休業をする場合の特例(パパ・ママ育休プラス)

育児休業は、原則として、子が1歳に達する日までの休業とされていますが、両親ともに育児休業を取る場合で、要件に該当する場合は子が1歳2カ月に達するまでの育児休業を取ることができます。

両親それぞれの育児休業期間が1年以内(母親の場合は産休と併せた期間が1年以内)であるという条件があるため、一人が取れる育休は1年までです。
ただし、この特例を用いると、以下のような育休の取り方が可能になります。

特例による育休
  • 1歳になる日の前日まで母親が育休、1歳の誕生日から1歳2カ月になるまでは父親が育休
  • 1歳になる日の前日まで母親が育休、生後2カ月頃から1歳2カ月になるまで父親が育休
    (生後2カ月頃~1歳までは両親ともに育休)

保育園に入れない場合、育休は延長

1歳(上記の特例を用いる場合は1歳2カ月)の段階で、希望する保育園に入れない場合は、育休は1歳6カ月までに延長できます。
1歳6カ月の時点でも保育園に入れない場合は、さらに育休を2歳まで延長できます。

この延長制度は「希望する園に入れなかった」という証明を提出すればよいので、たとえば既に定員に達している園1つのみに入園を申し込み、「保育園に落ちた」通知をもらった場合であっても、育休延長をすることができます。

この1歳6カ月、または2歳までの育休延長期間中においても、育児休業給付金(平均給与の半額相当)は支給され続けます。

保育園が決まって職場復帰可能か分かるのは、復帰の直前になる

年度途中に入園を希望する場合は、「保育園の入園許可が出た」または「保育園に落ちた」という通知は、仕事復帰予定日の前月の下旬に各家庭に届きます。
そのため、「従業員の職場復帰予定日が急に半年延びた」というケースはよくあります。
マネージャー側はメンバーの育休復帰が必ずしも1年後になるとは限らないことを念頭に入れて準備をしておく必要があります。 一方、年度初め(4月)入園を希望する場合は、1~2月頃に通知が届くため、比較的時間に余裕が出ます。

結局、育休はいつまで取るのがベスト?

育休中は給付金の受給が続く

育休期間中は育児休業給付金を受給し続けることができるので、労働者にとって育休はなるべく取った方がお得な制度です。
特に育休開始6カ月(女性の場合は産休を合わせて産後8カ月)までに関しては金銭的な心配はほぼないと言えます。

保育料によっては働き損になる

子どもを保育園に預けて働く場合、0歳~2歳児に関してはほとんどの自治体で保育料がかかり、年齢が低いほど高額になります。
認可保育園の場合、保育料は世帯収入によって決まります。大体月あたり数万円が相場ですが、高収入世帯や、複数の子を預ける場合は月10万円近い保育料になるケースもあります。
そのため、子どもを預けて働くよりも育休を取った方が金銭的にお得になるケースもよくあります

育休を早めに切り上げるケース

育休期間は必ず1年間というわけではありません。従業員の希望で期間を短く設定することができます。

保育園の入所は学年が変わる年度初め(4月)が最も定員の空きが多く、その後、月を経るごとに枠が埋まっていきます。保育園に入りにくい地域や人気が高い園の場合は、4月や5月に定員が埋まってしまうことも珍しくありません。
また、多くの園が0歳児のクラスが最も入りやすく、1歳児以降になると前の学年からの持ち上がりがあることから、子どもの年齢が上がるほど保育園に入りにくくなります。

そのため、「育児休業給付金を受け取るよりも、確実に仕事に復帰したい」と考える女性の場合、子どもが1歳になる前であっても育休を切り上げ、4月に保育園に入園させることを選択する方もいます。

育児休業の留意事項

育休満了後そのまま退職(転職)しても、従業員側にデメリットはない

育休を最大限の2歳まで延長した上で、そのまま退職をしても、従業員には給付金の返還などのペナルティは全くありません。

実際のところ、育休延長の場合、1歳でも1歳6カ月でも入れなかった保育園に、更に定員が減る2歳から入園できる可能性は高くないでしょう。
育休延長を複数回使われている従業員は、「もしかしたら退職や転職を考えているのかも」という可能性も念頭に入れておいた方がよいかもしれません。

会社の就業規則に育休の規程がなくても、育休は取れる

産休・育休は、私傷病による休職とは違い、会社の就業規則に育児休業の規程がなくても取ることができます。
従業員から産休・育休の申し出があった場合、事業主は拒むことができません。
うっかり「会社の規則にないので無理」「前例がないので難しい」などと言ってしまわないように注意しましょう。

結局、育休からいつ戻ってくるのか?

結局のところ、プロジェクト・マネジャーとして、育休に入ったプロジェクト・メンバーはどのくらいの期間不在にすると考えたほうがよいのでしょうか?
最終的に本人の意思に沿うことになりますが、短くて6カ月は不在になると見ておいたほうがよいでしょう。

育休からいつ戻るのかは従業員本人の自由になります。しかし、これまで見てきたように、金銭面を考えると、育休開始6カ月(女性の場合は産休を合わせて産後8カ月)の期間は、従業員側に戻ってくるメリットが少ないです。
そのため、プロジェクト・メンバーが育休によってプロジェクトを離れた場合、少なくとも6カ月はプロジェクトを離れると考えておいた方がよいでしょう。

育休開始6カ月以降~1歳(延長の場合は1歳2カ月、1歳6カ月、2歳)の期間に関しては給付金の額は減りますが、子どもを保育園に預けて働くとしても保育料がかかるため、育休か仕事復帰かどちらにメリットがあるかは、人それぞれの期間であると言えます。

一方、育休を2歳まで最大限に延長後、子どもを預ける保育園がなく、その他子どもを保育する環境を用意できない場合は退職という流れになります。
そのため、離脱したプロジェクト・メンバーも、仕事に戻る意志が強い場合は、子どもが2歳になるまでには復帰する可能性が高くなります
仕事の継続に思い入れがあり、将来的に退職だけは避けたいと考える場合は、早めに育休を切り上げ、枠のあるうちに子どもを保育園に預けて仕事復帰をするという考え方もあります。

とはいえ、半年以上離脱する場合は、プロジェクトそのものが終了している可能性もあります。
そのため、プロジェクト・マネジャーとしては、育休に入るメンバーが出た場合は、復帰しない場合も想定し、代わりのメンバーを見つけることが大切です。

参考

  • https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r311/(2023年4月17日)
  • https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/20140122-01.html(2023年4月17日)
  • https://jsite.mhlw.go.jp/hyogo-roudoukyoku/content/contents/202209ikukaisetsumei.pdf(2023年4月17日)