【2020年4月施行の改正民法対応】請負契約・準委任契約・派遣契約の違いを1から解説

2020年8月18日

外部のリソースを活かす、アウトソーシングと人材派遣

ビジネスの現場では、自社が不得意な分野や人材を多く割けない分野については、どうしても外部のリソースに頼らざるをえない場面が出てきます。
その場合、企業には、アウトソーシングや人材派遣を活用するという選択肢があります。
アウトソーシングとは、「請負契約」「準委任契約」によって業務を外部に委託する方法であり、人材派遣とは、「派遣契約」によって必要な人材を外部から調達する方法です。
いずれも、必要とするリソースを外部に求めるという点では共通していますが、どういう場面でどの契約手法を用いるのが適切なのでしょうか。
また、請負契約も準委任契約も、実務的には「業務委託契約書」として契約することが大多数ですが、自社が現在結んでいる契約がどちらなのかをはっきりさせる必要があります。
それらを判断できるようにするために、このページでは、請負契約・準委任契約・派遣契約の特徴を説明するとともに、各契約に適用される法令についても解説します。

請負・準委任・派遣各契約の特徴まとめ

各契約の義務と依頼人の指揮権の有無

請負・準委任・派遣各契約の特徴の画像

請負契約・準委任契約・派遣契約の特徴をあらかじめ簡単にまとめると、以下のようになります。

請負契約準委任契約派遣契約
・成果物を完成させる義務を負う
・依頼人に指揮命令する権利はない
・成果物を完成させる義務を負わない
・依頼人に指揮命令する権利はない
・成果物を完成させる義務を負わない
・依頼人は指揮命令する権利を有する

ソフトウェア開発のフェーズと契約形態の関係

ソフトウェア開発の各フェーズでアウトソーシングを活用する場合、請負契約にするのか準委任契約にするのかを選択する必要があります。
このソフトウェア開発の各フェーズの契約についても、推奨されている契約形態があります。

請負契約は、成果物を完成させることを目的としているので、依頼人と請負業者が成果物の完成形をイメージできていなければいけません。
そのため、完成形が決まっているシステム方式設計やソフトウェア設計などのフェーズでは、請負契約を選択するのが適切と言えます。
一方、準委任契約は、成果物の完成を目的としていないので、依頼人と受託業者が成果物の完成形を具体的にイメージできていない場合に選択されます。
したがって、完成形が決まっていないシステム化計画や要件定義などのフェーズでは、準委任契約を選択するのが適切と言えます。
これらの内容を踏まえると、フェーズごとの適切な契約形態は以下のようになります。

フェーズ内容推奨契約形態
企画段階システム化の方向性準委任
システム化計画準委任
要件定義準委任
開発段階システム方式設計(システム内部設計) 準委任・請負
ソフトウェア設計請負
プログラミング請負
ソフトウェアテスト請負
システム結合請負
システムテスト準委任・請負
受入導入支援請負
運用段階運用テスト準委任
運用準委任・請負
保守段階保守準委任・請負
出典:「モデル契約におけるフェーズの分類と契約類型」 (「情報システムモデル取引契約書(受託開発(一部企画を含む)、保守運用)〈民法改正を踏まえた、第一版の見直し整理反映版〉」2019年12月、14頁)

請負契約とは

ここからは各契約形態の内容を詳しく見ていきましょう。
請負契約・準委任契約・派遣契約のうち、請負契約とは、完成した成果物に対して対価を支払うことを約束する契約です。
ポイントは、請負業者が成果物を完成させる義務を負うという点にあります。
請負業者は、当初約束したとおりの成果物を完成させ、依頼人に納品します。
依頼人は、納品された成果物に対して、約束どおり請負業者に対価を支払います。
分かりやすい例として、注文住宅の契約や洋服の仕立て契約が挙げられます。
このほか、建設工事やホームページ製作などが請負契約にあたります。

請負契約の特徴

請負契約は、成果物を完成させることを目的としています。
原則として、請負業者は、成果物を完成させることで対価を請求できます。
請負業者がどのように仕事を遂行するのかは問題になりません。
依頼人には、請負業者に対して指揮命令する権利はありません。
そのため、請負業者は、契約に別段の定めがない限り、作業場所は特定されず、下請けすることも可能です。
また、請負業者は、仕事の進捗を依頼人に知らせる義務もありません。
完成した成果物の著作権は、契約に別段の定めがない限り、請負業者に帰属します。

偽装請負に注意

請負契約では、依頼人が請負業者に指揮命令する権利はありません。
しかし、現実には、依頼人が法律で認められた権限を超えた指示や管理を行い、請負業者が労働者を派遣しているかのような状態になっていることがあります。
このように、請負契約であるにもかかわらず依頼人が請負業者に違法な権限を行使している行為は、「偽装請負」と呼ばれています。
三菱UFJ銀行やキヤノンなどの大手企業も偽装請負を行っているとして摘発されたことがあり、社会的に問題となりました[1]偽装請負 – Wikipedia
グレーゾーンが広く、偽装請負かどうかの判断が難しい場合も多いですが、少なくとも依頼人が請負業者に直接命令することはNGと認識しておきましょう。

請負契約のトラブル解決策

請負契約では、契約の履行にあたり、さまざまなトラブルが発生することがあります。
依頼人の視点に立つと、次のような問題が起こりえます。

  • 想定していた成果物と違ったものが納品されてきた。
  • 納品されてきた成果物に欠陥が多かった。

また、請負業者の視点に立つと、次のような問題が起こりえます。

  • 成果物を引き渡したのに、成果物の欠陥を理由に対価を支払ってもらえない。
  • 成果物の完成を納期に間に合わせられなかった。

依頼人と請負業者の間のトラブルを解決するため、民法にはいろいろな規定が存在します。

依頼人側の権利:契約不適合責任の追及(民法559条・562条)

契約不適合責任とは、納品された成果物が契約内容と違ったり契約内容を満たしていなかったりする場合に、依頼人が請負業者に対して追及できる責任のことです。
依頼人は請負業者に対して、以下の対応をとることができます。

① 追完請求(民法559条・562条)
  • 欠陥がある部分を補修してほしい
  • 個数が不足しているので追加で納品してほしい

このような請求を請負業者に行うことを、追完請求と言います。
請負業者に落ち度がなくても、契約不適合があれば請求できます。
ただし、欠陥が重大なものであっても費用が過大になる場合には、請負業者は、依頼人が請求する方法とは別の方法で追完しても構いません。

② 報酬減額請求(民法559条・563条)

報酬減額請求とは、契約不適合の内容や程度の割合に応じて、支払う予定の対価を減額するように請負業者に対して請求することです。
追完請求しても請負業者が応じない場合や追完できないほどの欠陥がある場合に、請求することができます。
追完請求と同じく、請負業者に落ち度がなくても請求できます。

③ 契約解除(民法541条・542条・559条・564条)

契約解除とは、文字どおり契約を解除することです。
請負業者が追完請求に応じない場合は報酬減額請求をすることができますが、依頼人の目的によっては報酬を減額されても意味がないこともあるでしょう。
このような場合に、契約を解除することができます。
ただし、この程度であれば解除する必要はないだろうと常識的に認められる場合には、契約を解除することはできません。

④ 損害賠償請求(民法415条・559条・564条)

損害賠償請求とは、請負業者に落ち度がある場合に、依頼人が被った損害を賠償するように請求することです。
逆に言えば、請負業者に落ち度がなければ損害賠償を請求することはできません。
賠償請求できる損害の内容は、以下のとおりです。

  • 成果物が納品されることを前提に行動して被った損失
  • 契約どおり納品されていれば得られたはずの利益

このような損害に対して、賠償請求することが可能です。

契約不適合責任の追及期間(民法166条・637条)

では、この契約不適合責任はいつまで請求できるものなのでしょうか。
この追及期間に関しては、請求内容によって変わってきます。

  • 欠陥がある部分を補修してほしい(品質・種類の問題)
  • 個数が不足しているので追加で納品してほしい(個数の問題)

上記2つの請求内容は、どちらも契約不適合にもとづく追完請求ですが、請求内容の性質が異なっています。
責任追及できる期間は、品質・種類の問題か個数の問題かで変わります。
品質・種類の問題である場合は、依頼人が契約不適合であることを知った時から1年以内に、請負業者に通知する必要があります。
ただし、請負業者が契約不適合であることを知っていた場合、または、きちんと確認していなかったなどの重大な過失によって知らなかった場合には、期間制限はありません
個数の問題の場合は、一般の消滅時効が適用され、依頼人が契約不適合であることを知った時から5年、または、成果物の引き渡しから10年以内が時効になっています。

請負業者側の権利:報酬の請求(民法634条)

請負業者が成果物を完成させられなくても、依頼人が完成途中の成果物によって利益を受けた場合、請負業者はその利益に応じた報酬の支払いを請求できます。
請負業者に落ち度があった場合でも、契約が解除された場合でも、請求できます。
そのため、依頼人は、請負業者の仕事によって何らかの利益を得られれば、請負業者にその分の対価を支払う必要があります。
ただし、当然ではありますが、成果物が完成していないということは契約不適合に該当するので、請負業者は、依頼人から契約不適合責任を追及される可能性があります。

準委任契約とは

準委任契約とは、業務の提供に対して対価を支払うことを約束する契約です。
請負契約と違い、請負業者が成果物を完成させる義務がないという点がポイントです。
分かりやすい例として、ハウスクリーニングや介護サービスが挙げられます。
ハウスクリーニングを依頼すると、「部屋をきれいにする」というサービスが受けられますが、具体的に何をするかは明確に決められていません。
「○○を完了させる」から対価が発生するというよりも、「○○時間サービスを提供するから料金が発生する」という形の料金体系になっています。
このような契約形態が準委任契約といいます。

このほか、医師による患者診察やIT業界のSES契約などが準委任契約にあたります。
なお、委任契約という言葉もありますが、準委任契約とは明確に意味が異なります。
弁護士に弁護を依頼するなど、法律行為を委任する契約のことを委任契約と言い、法律行為以外の行為を委任する契約のことを準委任契約と言います。

準委任契約の特徴

準委任契約は、成果物の完成を目的としていません。
成果物の完成を目的とする契約も可能ですが、仮に完成させられなくても善管注意義務を果たせば、受託業者は契約を履行したことになります。
善管注意義務とは、正式には「善良なる管理者の注意義務」と言い、受託業者の地位や能力からして通常期待される注意義務のことです。
依頼人が受託業者に指揮命令する権利はありませんが、依頼人は受託業者の能力に期待して委任するので、再委任や下請けは原則認められていません。
ただし、依頼人が許可した場合や止むを得ない場合には認められています。
また、受託業者は説明を求められれば、仕事の進捗を依頼人に知らせる必要があります。
完成した成果物の著作権は、契約に別段の定めがない限り、受託業者に帰属します。

トラブル解決策

準委任契約でも、請負契約と同じく様々なトラブルが起こりえるので、依頼人と受託業者の間のトラブルを解決するために、民法にはさまざまな規定が存在します。
主な内容は、以下のとおりです。

依頼人側の権利:損害賠償請求(民法415条)

準委任契約では、請負契約独自の制度である契約不適合責任を追及できませんが、依頼人が受託業者に対して、債務不履行にもとづく損害賠償請求を行うことができます。
受託業者は善管注意義務を負うので、依頼人は、通常期待される仕事を果たさない受託業者に対して損害賠償を請求することができます。

また、準委任契約では、依頼人と受託業者のどちらからでも契約を解除できますが、一方が損するタイミングで中途解約した場合、もう一方の側は損害賠償を請求できます。

受託業者側の権利:報酬の請求(民法648条)

受託業者は、途中で契約を履行できなくなった場合、依頼人に落ち度がなくても、すでに履行した内容に応じて依頼人に報酬を請求できます。
また、成果物の完成を目的とした契約であっても、依頼人が完成途中の成果物によって利益を受けた場合、受託業者はその利益に応じた報酬の支払いを請求できます。

請負契約や準委任契約を締結する際の注意点

請負契約も準委任契約も、契約の締結にあたって、当事者間で民法の規定とは異なる内容を定めることが可能です。
注意したいのは、民法の規定よりも契約書の内容が優先されるということです。
それぞれの当事者は、締結した契約内容に縛られることになり、仮にトラブルが発生した際には、契約書に記載された解決策が適用されることになります。
契約内容だけでは解決にいたらない場合、はじめて民法の規定が適用されるわけです。
そのため、契約を締結する際には、契約内容が民法の規定よりも不利になっていないかをしっかりと確認しなければいけません。
また、当然ではありますが、自社にとって都合が悪い契約内容になっていないか、自社の目的を達成できる契約内容になっているのかも、きちんと確認する必要があります。

派遣契約とは

派遣元企業に雇用されている労働者が、派遣先企業で労働するという契約です。
派遣元企業と派遣先企業の間で労働者派遣契約が締結され、労働者が派遣されます。
請負契約や準委任契約では作業場所の特定はありませんでしたが、派遣契約では基本的に派遣先企業で作業することになり、労働者は派遣先企業の指揮命令に従う必要があります。
派遣労働者をさらに別の企業に派遣すること、すなわち二重派遣は禁止されています。
また、同一組織の同一部署への派遣期間は、原則3年が上限となります。
派遣労働者は、成果物の完成は求められませんが、善管注意義務を負います。
完成した成果物の著作権は、派遣先企業に帰属します。

派遣元企業・派遣先企業の責任

派遣労働者をめぐっては、派遣元企業に雇用されている一方、派遣先企業の指揮命令に従うという特殊な契約形態となっています。
そのため、派遣元企業・派遣先企業のそれぞれが派遣労働者の何に責任を負うのかが分かりづらくなっています。
そこで、派遣労働者を保護する観点から、派遣元企業・派遣先企業が負う責任については、労働者派遣法などの法律で明確に規定されています。
派遣元企業・派遣先企業、また、双方が負う責任のうち主なものを以下にまとめました。

派遣元企業の責任派遣先企業の責任派遣元・派遣先双方の責任
労働契約
賃金
年次有給休暇
災害補償
社会保険や労働保険の加入
個人情報の管理
派遣元責任者の選任
労働時間
休憩・休日
時間外・休日労働
安全管理の徹底
生理休暇
派遣先責任者の選任
強制労働の禁止
ハラスメントに関する配慮

派遣労働者が不正を行った場合

自社が受け入れた派遣労働者が不正を行った場合、自社は派遣先企業に何を求めることができるのか、逆に言えば、派遣元企業はどのような責任を負うのでしょうか。
派遣元企業は、大きく2つの責任を負う可能性があります。

① 債務不履行責任(民法415条)

派遣元企業は、債務不履行責任にもとづき派遣先企業が負った損害を賠償する必要があります。
ただし、派遣労働者に対する注意を怠っていたなど派遣先企業にも落ち度がある場合は、その程度に応じて派遣元企業の責任を減らす過失相殺が認められることもあります。

② 使用者責任(民法715条)

派遣労働者が派遣先企業の顧客など第三者に損害を与えたとき、派遣元企業は使用者としての責任を負います。
債務不履行責任と同じく、派遣元企業は、損害を賠償する必要があります。
しかし、派遣元企業が派遣労働者にきちんと注意をしていたり、注意をしても損害を避けられなかったりした場合には、派遣元企業の責任は問われないこともあります。
また、派遣先企業にも落ち度がある場合は、過失相殺が認められることもあります。

参考文献