プロジェクトの成功率は30%!?『企業IT動向調査報告書2021』からその真偽を考える
今回の内容は動画でも説明していますので、よろしければご覧ください。
プロジェクトの成功率は30%!?
「プロジェクトの成功率は30%」という、プロマネ界でまことしやかにささやかれている、神話のようなものがあります。
経験あるプロジェクト・マネジャーであっても、「30%」という低い成功率を聞いて、「もっと高いだろう」とは思わないでしょう。「だいたいそのくらいかな」「もっと低いんじゃないかな」と思う人がほとんどではないでしょうか?
この30%という数値はどの程度の信ぴょう性があるものなのでしょうか?
それを詳しく考えていく前に、まずは何をもって「プロジェクトの成功」と呼べるのか、言葉の定義をしておきましょう。
プロジェクトの成功の定義
プロジェクトの成功の定義については、人によって違いますし、プロジェクトごとに設定することもありますが、本Webサイト・Promapediaでは、「プロジェクトの成功」とは、「プロジェクトに求められている納期・予算・品質が1つも損なわれることなく完了すること」とします。
逆に、「プロジェクトの失敗」は「プロジェクトに求められている納期・予算・品質のいずれかが損なわれること」とします。
納期・予算・品質は、プロジェクトの健康状態を示す三大要素です。これら3つの要素がすべて問題ない状態を「プロジェクトの成功」と呼ぶことにしましょう。
『企業IT動向調査報告書2021』による数値
言葉の定義を終えたところで「プロジェクトの成功率30%」の信ぴょう性を考えていきます。
東証一部上場企業とそれに準じる企業の計4508社のIT部門長にアンケートをとった『企業IT動向調査報告書2021』から、100人月未満のプロジェクトの工期・予算・品質の遵守状況を見ていきましょう[1]一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)『企業IT動向調査報告書2021』。
- 一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)『企業IT動向調査報告書2021』、247~248頁より。
2020年度の回答では、予定通りの工期で終わったプロジェクトは39.1%、予定通りの予算でおさまったが52.6%、品質に満足しているという回答は28.9%です。
2020年度はコロナ禍の影響もあるとはいえ、工期・予算・品質をすべて遵守するということがいかに難しいかがわかります。
仮に2019年度の数値を利用したとしても、工期・予算・品質をすべて遵守できた割合は「工期(45.6%)×予算(56.9%)×品質(39.7%)」から約10%という数値になります。
そして、この工期・予算・品質の遵守状況は、プロジェクトの規模が大きくなれば、それに比例して下がっていきます。
こうしたことから、「プロジェクトの成功率30%」というのは、データの裏打ちなくプロジェクト・マネジャーの間でささやかれている話ではありますが、現実離れした数値ではないことがわかります。
まとめ
今回は「プロジェクトの成功率は30%」の信ぴょう性について考えてきました。プロジェクトの成功を「プロジェクトに求められている納期・予算・品質が1つも損なわれることなく完了すること」とするのであれば、『企業IT動向調査報告書2021』のデータから、そこまで現実離れした数値ではないことがわかります。
では、なぜこのようにプロジェクトの成功率は低いのでしょうか。
その点については、また稿を改めてお話ししたいと思います。