問題解決ができない時の対処法 ―問題の影響を受けている人と、その欲求を把握しよう―

2021年6月9日

問題解決ができない時は

先日、1本の動画を投稿しました。

この話は『ライト、ついてますか ―問題発見の人類学』に書かれているたとえ話を、少し改変したものです[1]ドナルド・C・ゴース、G.M.ワインバーグ、木村泉(訳)『ライト、ついてますか ―問題発見の人間学』共立出版、1987年。
タイトルにあるように、この本は問題発見について書かれたもので、問題発見や問題解決についてさまざまなヒントを得られます。
今回は動画の内容をもとに、何かしらの要因で問題そのものの解決が難しい時の対処法をお話ししていきます。

問題の解決が難しければ、欲求を満たす

問題解決に取り組む際に重要なことは「発生した問題」を把握するだけでなく、その問題によって影響を受けている人と、彼らの欲求を把握することです。
「誰にとっての問題か?」「彼らの欲求は何か?」を把握することが、問題解決のスタートになります。

先ほどの動画では、会社に2つしかないエレベーターの内の1つが故障するという問題が発生しました。
この問題に影響されているのは、それを使用していた社員と、その社員からクレームを受けた社長です(もちろん、そのとばっちりを受けた2匹のビーバーもですが……)。

社員も社長も発生した問題は同じですが、要望している内容は異なります。
社員は、エレベーターが1台になり、なかなか来なくなったため、会社に不満を抱えています。

一方で、社長は社員が不満を言っていることにわずらわしさを感じ、社員のクレームを沈静化させたいと考えています。
これらの問題は当然エレベーターが直れば解消されます。
しかし、残念ながら復旧に時間がかかることがわかっています。

そうした時は、問題そのものの解決ではなく、欲求や要望を満たすことで上手く状況に対応できることがあります。

動画の例で言えば、後輩ビーバーがエレベーターにクイズや寄せ書きノートを置くことで、上手く話をそらすことができました。

社員にとっては、クイズや寄せ書きでエレベーターの待ち時間が気にならなくなったため、「エレベーターが来るのが遅い」という不満がなくなりました。
そして社員からクレームが来なくなったので、社長の不満も解消されました。

このように、問題そのものが解決されていなくても、その問題を抱えている人たちの欲求や要望を満たすことができれば、問題を解決したのと同程度の効果を得られる場合もあります。

上述の通り、問題の解決が困難な時だけでなく、その問題の影響を受けている人と、彼らの欲求を把握し、問題に取り組んでいきましょう。

さいごに

動画は、先輩ビーバーが社長からまた無茶ぶりをされて終わります。
エレベーターの故障は直ったものの、故障している時はもう片方のエレベーターに人が集まり、自販機の売り上げがよかったのに、エレベーターの故障が直ったために自販機の売り上げが下がってしまいました。

なんとも「人生万事塞翁が馬」というべき状態ですが、このように「何かの問題を解決したら、別の問題を生み出してしまった」ということはよくある話です。

こうした問題に取り組むのが「システム思考」ですが、また別の機会にこのお話ができればと思います。

1ドナルド・C・ゴース、G.M.ワインバーグ、木村泉(訳)『ライト、ついてますか ―問題発見の人間学』共立出版、1987年。