ライト、ついてますか? シンプルな問題解決の方法

2021年6月16日

頭のライト、ついてますか?

先日1本の動画を公開しました。

これはエンジニアリングの名著『ライト、ついてますか ―問題発見の人間学』のタイトルにもなっている小話を動画にしたものです[1]ドナルド・C・ゴース、G.M.ワインバーグ、木村泉(訳)『ライト、ついてますか ―問題発見の人間学』共立出版、1987年。

今回はこの動画の話をもとに、人に説明する時のシンプルな方法を解説していきます。

相手がコンピュータであれば

あまりにも長すぎるテキストの看板

今回の話は展望台を訪れる人たちのクルマがバッテリー上がりしないようにビーバーたちが苦心します。

トンネルの前に「ライトつけてください」という看板があったから、ライトをつけっぱなしにしてしまってバッテリー上がりを起こしてしまったというクレームに対して、ビーバーたちはトンネルの出口に看板を建て、注意喚起をしようとします。

しかし「ライトを消してください」と書くと、夜でもライトを消してしまう人がでてきそうですし、「昼間ならライトを消してください」と書いてしまうと、天候によっては昼間でも暗いときが心配です。

困ったビーバーたちは、最終的に以下のような文言を書こうとします。

もし今が昼間でライトがついているなら、ライトを消してください。
もし今が昼間でも暗く、ライトがついていないなら、ライトをつけてください。
もし今が昼間でライトがついていないなら、ライトはそのままの状態を維持してください。
もし今が昼間でも暗く、ライトがついているなら、ライトはそのままの状態を維持してください。

これはコンピュータに命令する文章であれば、それなりに正しいのかもしれません。
しかし、相手が人間で、なおかつクルマを運転しながら読む看板となれば使い物になりませんね。

多くの場合、最終的に使うのは人間である

ライト、ついてますか?の看板

最終的にビーバーたちはお巡りさんの言葉をヒントにし、「ライト、ついてますか?」という言葉を看板に書きます。

この言葉であれば、トンネルを抜けた後にライトがつけっぱなしであればライトを消そうと思いますし、もし暗くてライトをつけないといけないのであればライトをつけることを思い出します。
文章もだいぶ簡潔になり、看板におさまるようになりました。

このように、相手は人間なのでコンピュータに命令をするように事細かに条件を設定しなくとも、注意するものを思い出させるだけで解決することがあります。

今回の話の引用元である『ライト、ついてますか ―問題発見の人間学』ではこの小話を以下のように締めくくっています[2]ドナルド・C・ゴース、G.M.ワインバーグ、木村泉(訳)『ライト、ついてますか ―問題発見の人間学』共立出版、1987年、104頁。

もし人々の頭の中にライトがついているなら、
ちょっと思い出させてやる方が
ごちゃごちゃいうより有効なのだ

『ライト、ついてますか ―問題発見の人間学』

ソフトウェア開発をしていると、コンピュータを相手にすることが多いため、複雑に考えがちですが、時には相手が人間であることに立ち返り、人間相手の対応を考えることが大切ですね。

1ドナルド・C・ゴース、G.M.ワインバーグ、木村泉(訳)『ライト、ついてますか ―問題発見の人間学』共立出版、1987年。
2ドナルド・C・ゴース、G.M.ワインバーグ、木村泉(訳)『ライト、ついてますか ―問題発見の人間学』共立出版、1987年、104頁。