LTVとCACを初心者向けに徹底解説|マーケティングで成功するための羅針盤

マーケティングの世界には、一見すると難解な専門用語がたくさん存在します。
その中で「LTV(顧客生涯価値)」「CAC(顧客獲得単価)」は、ビジネスの成長を考える上で非常に重要な指標です。
たとえるなら、LTVとCACは航海における羅針盤のようなもので、どちらの方向に進むべきか、今いる場所は安全かを示してくれます

この記事では、マーケティング初心者の方でも安心して読み進められるよう、LTVとCACの基本的な考え方から、それらがビジネスにどのように役立つのかまでを、具体的な例を交えながらわかりやすく解説していきます。

LTVとは?顧客との長いお付き合いが生む価値を知る

LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは、一人の顧客が、ある企業と取引を開始してから終了するまでの間に、その企業にもたらす利益の総額を示す指標です。
これは、顧客が最初に商品やサービスを購入した際の金額だけでなく、その後の継続的な購入や利用によってもたらされる利益も全て含めて考えます。

たとえるなら、あなたが長年通っているお気に入りのカフェで、毎日のようにコーヒーを一杯購入するとします。カフェのオーナーにとって、あなたが生涯にわたって支払うであろうコーヒー代の合計が、あなたという顧客のLTVです。

LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)
  • 一人の顧客が、ある企業と取引を開始してから終了するまでの間に、その企業にもたらす利益の総額を示す指標
  • (例)とあるカフェで、あなたが生涯にわたって支払うであろうコーヒー代の合計

では、なぜこのLTVという考え方が重要なのでしょうか?
それは、企業が短期的な売上だけでなく、長期的な顧客との関係性を重視するようになったからです。

新規顧客を獲得するには、既存顧客を維持するよりも一般的に多くのコストがかかると言われています。
そのため、一人ひとりの顧客との関係を大切にし、長く付き合ってもらうことで、結果的に企業の利益を最大化できるという考え方が広まっています。
LTVを意識することで、企業は目先の売上にとらわれず、顧客満足度を高め、長期的な視点でビジネスを成長させるための戦略を立てることができます。

LTVの基本的な計算式はいくつかありますが、初心者の方には以下のものが理解しやすいでしょう。

LTVの計算式

LTV = 平均顧客単価 × 購買頻度 × 継続期間

たとえば、あるオンラインショップで、一人の顧客が平均して5,000円の商品を年に3回購入し、5年間継続して購入してくれるとします。
この場合、その顧客のLTVは、5,000円 × 3回 × 5年 = 75,000円となります。
このように計算することで、一人ひとりの顧客がどれくらいの価値をもたらしてくれるのかを把握することができます。

CACとは?新規顧客獲得にかかるコストを把握する

CAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得単価)とは、一人の新しい顧客を獲得するためにかかったコストの平均額を示す指標です。
これは、広告費用、マーケティングキャンペーン費用、営業活動にかかる費用など、新規顧客を獲得するために費やした全てのコストを、その期間に獲得できた新規顧客数で割って算出します。
たとえば、ある会社が1ヶ月に100万円の広告費用をかけ、その結果として100人の新しい顧客を獲得できた場合、その月のCACは100万円 ÷ 100人 = 1万円となります。

CAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得単価)
  • 一人の新しい顧客を獲得するためにかかったコストの平均額を示す指標
  • (例)ある会社が1ヶ月に100万円の広告費用をかけ、その結果として100人の新しい顧客を獲得できた場合、その月のCACは1万円

CACを把握することは、企業がマーケティング活動の効率性を評価するために非常に重要です。
新規顧客を獲得するためにどれくらいの費用がかかっているのかを知ることで、その費用対効果が高いのか低いのかを判断することができます。
もし、CACが非常に高い場合、その顧客が将来的にどれだけの利益をもたらしてくれるか(LTV)を考慮する必要があります。

CACの基本的な計算式は以下の通りです。

CACの計算式

CAC = 総顧客獲得費用 ÷ 新規顧客数

例えば、ある企業が新しい顧客を獲得するために、オンライン広告に50万円、チラシ作成と配布に10万円、営業担当者の人件費として30万円を費やしたとします。その結果、100人の新規顧客を獲得できた場合、CACは(50万円 + 10万円 + 30万円)÷ 100人 = 9,000円となります。

LTV/CAC比率とは?マーケティングの健全性を測る重要な指標

LTVとCACをそれぞれ理解した上で、次に重要なのが「LTV/CAC比率」です。
これは、一人の顧客が生涯にわたって企業にもたらす価値(LTV)が、その顧客を獲得するためにかかったコスト(CAC)の何倍であるかを示すものです。
この比率を見ることで、企業のマーケティング活動がどれだけ効率的で、将来的に持続可能であるかを判断することができます。

一般的に、LTV/CAC比率が高いほど、マーケティング活動がうまくいっていると判断できます。
理想的な比率としては、3:1以上が目安と言われています。これは、顧客一人の獲得にかかったコストに対して、その顧客が生涯にわたって3倍以上の利益をもたらしてくれる状態を示しています。  

逆に、LTV/CAC比率が低い場合、例えば1:1を下回るような状況は、顧客を獲得するためにかけたコストが、その顧客から得られる生涯価値よりも高いことを意味します。
これは、ビジネスの持続可能性に問題がある可能性を示唆しており、マーケティング戦略の見直しや改善が必要となるでしょう 。  

具体的な計算例として、先ほどのオンラインショップの例(LTV = 75,000円)と、Facebook広告で獲得した顧客のCACが5,000円だった場合を考えてみましょう。この場合のLTV/CAC比率は、75,000円 ÷ 5,000円 = 15となります。これは非常に高い比率であり、このオンラインショップの顧客獲得戦略が非常に効率的であることがわかります。

一方、もしこのオンラインショップのCACが80,000円だった場合、LTV/CAC比率は75,000円 ÷ 80,000円 = 0.9375となり、1を下回ってしまいます。
これは、顧客一人を獲得するのにかけた費用よりも、その顧客から生涯にわたって得られる利益の方が少ないということを示しており、マーケティング戦略の改善が急務となります。

LTV/CAC比率解釈潜在的な影響
1:1未満顧客獲得コストが顧客生涯価値を上回っている。長期的にビジネスが成り立たない可能性。CACの削減やLTVの向上が必要。
1:1顧客獲得コストと顧客生涯価値がほぼ同じ。利益が出ていない状態。マーケティング効率の改善が求められる。
1:1~3:1顧客獲得コストに対して顧客生涯価値が上回っているが、まだ改善の余地がある。マーケティング戦略は機能しているが、さらなる効率化や顧客ロイヤルティ向上が期待できる。
3:1以上顧客獲得コストに対して顧客生涯価値が非常に高い。効率的なマーケティング活動が行えている。積極的にマーケティング投資を増やし、さらなる成長を目指せる。

LTV/CAC比率をマーケティング戦略に活かす

LTV/CAC比率を理解し、定期的に計測することで、企業は様々なマーケティング上の意思決定に役立てることができます。

たとえば、どのマーケティングチャネルからの顧客獲得が最も効率が良いのかを比較検討することができます。
ある広告媒体AではCACが低いもののLTVも低い場合と、別の広告媒体BではCACは高いもののLTVも高い場合では、どちらに注力すべきかの判断材料となります。
一般的には、LTV/CAC比率が高いチャネルに積極的に投資することが望ましいと言えるでしょう。  

また、LTV/CAC比率を向上させるためには、CACを下げる施策とLTVを上げる施策の両面から取り組む必要があります。
CACを下げるためには、広告のターゲティングを最適化したり、より費用対効果の高いマーケティング手法を取り入れたりするなどの方法が考えられます。
一方、LTVを上げるためには、顧客満足度を高めてリピート購入を促進したり、より高単価の商品やサービスを提案したり(アップセル・クロスセル)、顧客との関係性を強化して継続利用を促したりするなどの施策が有効です。

身近な例で考えるLTVとCAC

マーケティングの専門用語であるLTVとCACですが、実は私たちの日常生活にも似たような考え方が存在します。

LTVの例:近所のパン屋さん

あなたが近所のパン屋さんの大ファンで、毎週必ず1,000円分のパンを購入しているとします。
もしあなたがこのパン屋さんに10年間通い続けるとしたら、このパン屋さんにとってのあなたのLTVは、1,000円/週 × 52週/年 × 10年 = 520,000円となります。
パン屋さんは、あなたのような常連客を大切にすることで、安定した収益を得ることができるのです。

CACの例:新しいカフェのチラシ

新しいカフェがオープンし、近隣の住民にカフェを知ってもらうために、10万円かけて2,000枚のチラシを作成し配布しました。
その結果、チラシを見た50人の新しいお客さんが来店してくれたとします。
この場合、このカフェがチラシによって新しいお客さん一人を獲得するのにかかったコスト(CAC)は、10万円 ÷ 50人 = 2,000円となります。カフェのオーナーは、このCACと、これらの新しいお客さんが今後どれくらいの頻度で利用してくれるか(LTV)を比較して、チラシの効果を評価することができます。

まとめ:LTVとCACを理解してマーケティングを成功に導こう

この記事では、マーケティングにおける重要な指標であるLTV(顧客生涯価値)とCAC(顧客獲得単価)について、初心者の方にもわかりやすく解説してきました。LTVは顧客との長期的な関係が生み出す価値を、CACは新しい顧客を獲得するためにかかるコストを示します。そして、この二つの指標を組み合わせたLTV/CAC比率は、マーケティング活動の効率性と健全性を測る上で非常に重要な役割を果たします。

これらの指標を理解し、自身のビジネスやマーケティング活動において意識することで、より効果的な戦略を立て、持続的な成長へと繋げることができるでしょう。マーケティングの世界は奥深いですが、基本的な考え方をしっかりと身につけることが、成功への第一歩となります。

参考