ハイテク・ハイタッチ(High Tech / High Touch)とは何か?マーケティングにも使われるようになった用語を解説

2022年9月29日

ハイテク・ハイタッチとは

ハイテク・ハイタッチ(High Tech / High Touch)とはジョン・ネズビッツの著書『ハイテクハイタッチ』に由来する言葉で、ジョン自身は物事を眺めるときに必要な「人間らしさ」というレンズであると述べています[1]ジョン … Continue reading

現在、ハイテク・ハイタッチはテクノロジーだけでなく、信頼やコミュニケーションなどの人間的な部分との両立が大切だという意味で使用されます。

ハイテク・ハイタッチの様々な側面

ジョン・ネズビッツは冒頭で述べた定義以外にも、ハイテク・ハイタッチを様々な側面から解説しています。
その内容をまとめると、以下のようになります[2]『ハイテクハイタッチ』40~41頁。

  • 物事を眺めるときに必要な「人間らしさ」というレンズ
  • 人間らしさを失わせないテクノロジーを受け入れ、人間らしさを損なうテクノロジーを拒否すること
  • 芸術、物語、遊び、宗教、自然、時間なども、テクノロジーの発展と同じくらい重要であるのに気づくこと
  • テクノロジーを上手に取り入れながら、人間であるとはどういうことかを表現すること
  • テクノロジーを狂信することも敵視することも、同じくらい近視眼的な行為だと悟ること
  • 私たちの生活や社会の中で、テクノロジーをどう位置づけるべきかを考えること
  • 技術革新の成果を享受しながら、それを自分の宗教や信条とうまく調和させること

ハイテク・ハイタッチという言葉は、テクノロジーに偏りはじめた2000年代に生まれた言葉です。そのため、人間らしい部分を失わないようにと言う著者のメッセージが強く表れています。

マーケティングへの応用

今日、ハイテク・ハイタッチはマーケティングの分野でも取り入れられています。
例えばマーケティングの大家であるフィリップ・コトラーは「優れた顧客体験を提供するためには、ハイテック・インタラクションとハイタッチ・インタラクションの統合が必要不可欠なのだ」と述べています[3]フィリップコトラー+ヘルマワン『コトラーのマーケティング5.0 デジタル・テクノロジー時代の革新戦略』朝日新聞出版、2022年、124頁。

ただし、フィリップ・コトラーの「ハイテク・ハイタッチ」は、ジョン・ネズビッツが説いたような「技術だけでなく、人間味も忘れてはいけない」という意味に限定されません。コトラーはユーザーを満足させる顧客体験を実現するために、積極的にハイテクを取り入れようとしています。
例えば、低価値な事務作業を機械に任せることにより、スタッフが顧客対応に割く時間を増やしたり、AI支援のツールにより、顧客をサポートしたりすることが、コトラーの考える「ハイテク・ハイタッチ」です。

1ジョン ネズビッツ(著)、久保恵美子(訳)『ハイテクハイタッチ―ハイテクハイタッチとは物事を眺めるときに必要な『人間らしさ』というレンズ』ダイアモンド社、2001年。以下『ハイテクハイタッチ』と略記。
2『ハイテクハイタッチ』40~41頁。
3フィリップコトラー+ヘルマワン『コトラーのマーケティング5.0 デジタル・テクノロジー時代の革新戦略』朝日新聞出版、2022年、124頁。