カネヴィンフレームワークとは何か?問題解決のアプローチを考えるフレームワークを解説
カネヴィンフレームワークの概要
カネヴィンフレームワークは、デイブ・スノーデン(Dave Snowden)が開発した「問題解決へのアプローチを考える」フレームワークです。
このフレームワークでは、発生した問題や状況を4つのドメインに分類して考えます。
もともと「cynefin」は「生息地」という意味を持つウェールズ語で、日本語の場合「クネビン」と表記されることから、カネヴィンフレームワークを「クネビンフレームワーク」と呼ぶこともあります。
カネヴィンフレームワークは問題の原因をまず追及するのではなく、問題がどの領域に所属するか判別することで、「どのようなアプローチが必要か」を考えます。
カネヴィンフレームワークのドメイン(領域、分類)
カネヴィンフレームワークには以下の4つのドメインがあります。
- 単純(Simple)
- 煩雑(Complicated)
- 複雑(Complex)
- 混乱(Chaotic)
カネヴィンフレームワークは問題解決をテーマとしたフレームワークであるため、それぞれのドメインでどのような対処行動がふさわしいかも提示されています。
ここからは、先ほどの4つのドメインについて詳しく内容を見ていきます。
単純(Simple)
1つ目のドメインは「単純(Simple)」です。
問題の因果関係や構造が明確であり、問題の発生が予測可能とされています。
「単純」の対処行動
「単純」の対処行動は専門知識が必要なく、誰でも対応可能なものになります。
対処行動は以下の3つの行動で構成されます。
- 気づく(Sense)
- 原因を分類する(Categorize)
- 対応する(Respond)
煩雑(Complicated)
2つ目のドメインは「煩雑(Complicated)」です。
少々問題の分析が必要ですが、知識があれば因果関係の判別が可能であり、対処行動もそれほど複雑ではありません。「単純」と同じく問題の発生が予測可能とされます。
「煩雑」の対処行動
「煩雑」の対処行動は専門的知識が必要とされます。
専門的知識によって問題を分析し、対応するのが「単純」との違いです。
以下の3つの行動で構成されます。
- 気づく(Sense)
- 分析する(Analyse)
- 対応する(Respond)
複雑(Complex)
3つ目のドメインは「複雑(Complex)」です。
込み入った問題で、少々の分析だけでは因果関係を割り出すことができません。問題を把握するための調査・探索が余儀なくされます。
「単純」「煩雑」とは異なり、問題発生の予測が不可能とされています。
「複雑」の対処行動
「複雑」のドメインは不確実性が高く、予測可能性が低いものとされています。
そのため「複雑」の対処には、問題の分析から更に踏み込んだ調査が必要です。
対処行動として、以下の3つを繰り返すことが想定されます。
- 調査、探索する(Probe)
- 気づく(Sense)
- 対応する(Respond)
「単純」「煩雑」とは異なり、「気づく(Sense)」が行動の2つ目に位置します。
「複雑」のドメインでは、最初に行動することで原因を判断できるようになります。出来事に対し実験を繰り返して、正解パターンを探し出すというスタンスです。
混乱(Chaotic)
4つ目のドメインは「混乱(Chaotic)」です。
問題の因果関係が不明確であり、状況の理解にも困難が伴います。
「複雑」と同様に問題発生の予測が不可能とされています。突発的に発生した事件・事故なども「混乱」に多く分類されます。
混乱(Chaotic)「早急な対応が必要」
「混乱」は問題の原因も結果も不明な状態で、とにかく早急な対応・行動が要求されます。
先に問題に対して手を打ち、手を打った結果問題の原因に気づくのが「混乱」の対処行動の特徴であり、原因追及型と大きく異なる点です。
- 行動する(Act)
- 気づく(Sense)
- 対応する(Respond)
「混乱」のドメインでは、はじめの「行動する」が問題に対する対抗措置に値します。
実行した対抗措置に効果があった場合、問題の因果関係が推測できる(=「気づく」ことができる)ようになります。
カネヴィンフレームワークの作者であるデイブ・スノーデンは、「混乱」はまず「複雑」のドメインに落とし込むことが重要だとしています。
「無秩序(Disorder)」
上記4つのいずれにも分類できないものが「無秩序(Disorder)」です。
「無秩序」のドメインは問題に対する適切な解決策が存在しません。
「無秩序」に分類される状況は、上記4つのドメインのいずれかに分類できるよう変化させる必要があります。
カネヴィンフレームワークが必要とされる背景
現代社会は知的労働の割合が多くなりつつあります。
知的労働には多くの問題がつきまといますが、そのほとんどは「完璧な正解」が存在せず、既存の「原因を追及し、最も正しい問題解決法を探る」手法では対処しきれないことがあります。
「問題に対しどのようなアプローチが必要か」を考えるカネヴィンフレームワークは、「完璧な正解」のない知的労働に適した考え方の一つといえるでしょう。