ビジネスモデルキャンバスとは何か?ビジネスで重要となる9つの要素を視覚的にまとめる手法

2022年3月2日

ビジネスモデルキャンバスとは

ビジネスモデルキャンバス(Business Model Canvas)は、経営学者のイヴ・ピニュールとアレックス・オスターワルダーによる著書『ビジネスモデル・ジェネレーション』によって発表されたビジネスモデルを可視化するためのフレームワークであり、ビジネスモデル全体をシンプルな図として視覚化することで、アイデアの効率化や整理を行うことが可能となります。

ビジネスモデルキャンバスでは、ビジネスで重要となる9つの要素を視覚的に分類します。9つの要素はそれぞれ独立して存在しているのではなく相互に影響し合って存在しており、様々な視点から検討しているプランを考察することが可能です。

ビジネスモデルキャンバスの9つの要素

ビジネスモデルキャンパスのイメージ

ビジネスモデルキャンバスは、9つの要素から構成された一つのシートであることが特徴であり、以下の構成で形成されています。

  • 顧客セグメント(CS:Customer Segments)
  • 価値提案(VP:Value Propositions)
  • チャネル(CH:Channels)
  • 顧客との関係(CR:Customer Relationships)
  • 収益の流れ(RS:Revenue Streams)
  • 主要リソース(KR:Key Resources)
  • 主要活動(KA:Key Activities)
  • 主要パートナー(KP:Key Partners)
  • コスト構造(CS:Cost Structure)

顧客セグメント(CS:Customer Segments)

顧客セグメントでは、自社のビジネスが対象とする顧客の具体的なイメージを形成します。「誰に価値を提供するのか」「最も重要な顧客は誰なのか」を記述し、市場全体を複数のセグメントに細分化した上で、自社がターゲットとする顧客のニーズや属性を具体化することで、ビジネスモデルを設計しやすくしていきます。

価値提案(VP:Value Propositions)

価値提案では、特定の顧客セグメントに対して「どんな価値を提供するのか」「どういったニーズを満たすのか」を記述します。企業が提供する製品・サービスの内容を指しており、顧客の生活を便利にするためのものか、コスト削減に寄与するものなのか、これまでなかった新しいサービス提供を行うのかといった、顧客との関係・チャネルと合わせてユーザーエクスペリエンス(ユーザー体験)を考慮していく場所でもあります。

チャネル(CH:Channels)

チャネルでは、特定の顧客セグメントに対して「どのように価値を提供するのか」といったサービスの届け方を記述します。どんなに優れたビジネスプラン、サービスであっても、顧客に認知してもらえなければ意味がありません。営業や広告方法など、顧客にビジネスの価値を提供する経路、またはその価値を宣伝する経路として、購入前後の流れを含めて考慮することが重要となります。

顧客との関係(CR:Customer Relationships)

顧客との関係では、特定の顧客セグメントと「どのような関係を構築するのか」を記述します。顧客とどのような関係性をもつのかも重要な要素となり、継続的な関係なのか、一時的な関係なのかといった継続性についても考慮していきます。
関係性を構築する方法として、対面、電話、オンラインなどがあり、フェーズや目的によって適切なアプローチが異なります。チャネルと混同しやすいものとなりますが、チャネルでは顧客とのタッチポイントや媒体、場所を指しており、顧客との関係では構築を行うための手段を指しています。手厚いサポート体制や利便性のあるコミュニティを提供するなど、顧客との深い関係を築く仕組みを考えることで、差別化された商品やサービスを提供することも重要です。

収益の流れ(RS:Revenue Streams)

収益の流れでは、顧客が「どのような価値にお金を払うのか」「どのようにお金を払っているか」を決定します。固定価格、オークション、サブスクリプション、ライセンス料といった課金形態や課金メニューを検討し、提供したサービスへの対価は何になるのかを記述します。
ビジネスの収入源を記載する項目となり、毎月、毎年などの期間でどの程度の収益が見込めるのかといった具体的な数字を見積もっていきます。

主要リソース(KR:Key Resources)

主要リソースでは、「価値を提供するのに必要なリソースは何か」といったビジネスモデルの実行に必要となる資産を記述します。経営における4つの資源「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」として、どのような従業員がいるのか、強みとなる原材料は何か、資金源はどこなのかといった経営資源を整理します。資材や機械といった物理的な資産以外にも、知的財産や人的リソースなども含めて整理を行っていきます。

主要活動(KA:Key Activities)

主要活動では、「価値を提供するために必要な主要となる活動は何か」といった、ビジネスモデルの実行のための重要な活動を記述します。事業内容や販促活動といったビジネスモデルを実行するために取り組まなければならない活動を整理し、製造、サプライチェーンマネジメント、市場調査、人材採用といった、価値提案の差別化として最も重要となる要因にフォーカスした活動内容を明確にしていきます。

主要パートナー(KP:Key Partners)

主要パートナーでは、取引先、仕入先、小売先、委託業者、資源提供者といった、ビジネスを行う上で重要となるパートナーについて記述します。1つのビジネスプロセスを全て自社のみで行うことは難しく、ビジネスモデルを実現するために協力してくれるパートナーを整理することが必要です。顧客とパートナーが重複する場合もありますが、お金を支払う相手はパートナーに、お金を頂く場合は顧客セグメントに記述します。

コスト構造(CS:Cost Structure)

コスト構造では、ビジネスモデルを運営するにあたって発生するコストを記述します。人件費、外注費、宣伝費、設備費用といった、ビジネスで必要となるコストを明確にしていき、収益の流れの数字と比較しながら、赤字とならないビジネスモデルを計画する必要があります。固定費と変動費を分けて記載すると分かりやすくなります。また、規模を拡大した場合や多角化した場合のコストも合わせて検討していきます。

ビジネスモデルキャンバスの見方

ビジネスモデルキャンバスは左側にあるものが自社やパートナーとしてのまとまり、右側にあるものが顧客、市場としてのまとまりとなります。それぞれの要素の位置に意味があり、隣接する要素と要素には密接な関係があります。

ビジネスモデルキャンバスの見方のイメージ

商品、サービスの価値となる「価値提案」を中心とし、左側(自社・パートナー)の要素にて価値を提供する活動(事業内容)、その活動を実現するためのリソース、パートナーを記述します。右側(顧客・市場)の要素には、価値を提供する先や提供方法を整理していき、価値提供に必要となる自社のコストと顧客からの収入の流れを左右に分けることでビジネスモデルの全体を視覚化します。

ビジネスモデルキャンバスを書くためのコツ

ビジネスモデルキャンバスを書くためには以下の3つのプロセスを中心に考えていくと整理しやすくなります。

ビジネスモデルの軸を整理する

最初に考えるべき項目は「価値提案」「顧客セグメント」「主要活動」となります。この3項目はビジネスモデルの軸となることが多く、誰にどのような商品、サービスによって、どのような価値を与えるのかを把握することができれば、事業のイメージを整理することができます。また、強みとしている技術や重要なパートナー等、すでに決まっている項目があれば先に埋めていきます。

記述した項目との関連性を整理する

最初の3項目と決まっている項目を埋めた後は、記述した項目との関連性を考慮していきます。「顧客との関係」は「顧客セグメント」「価値提案」から利便性や顧客満足度を意識して整理し、「チャネル」は「顧客セグメント」「主要パートナー」を参考にします。「主要リソース」は「価値提案」「主要活動」を満たすものを整理します。

お金の流れを整理する

最後にお金の流れを可視化していきます。「コスト構造」は自社側の項目と「チャネル」を参考に整理していき、「収益の流れ」は顧客側の項目と「主要パートナー」を参考に整理していくとスムーズに記載することができます。

参考