アンゾフの成長マトリクスとは何か?4つの成長戦略を解説
アンゾフの成長マトリクスとは
アンゾフの成長マトリクス(Ansoff Matrix)は、事業の成長について考える際に効果的とされるフレームワークです。
アンゾフの成長マトリクスは「製品」と「市場」を軸として、それをさらに「既存」と「新規」に分けた2×2のマトリクス図で表現します。
アンゾフの成長マトリクスの発案者は「経営戦略の父」と呼ばれるイゴール・アンゾフ(Igor Ansoff)です。
アンゾフは物理学で修士号を、数学で博士号を取得した研究者でした。
第二次世界大戦中に軍の仕事をした後、1957年に航空機メーカーであるロッキードに経営企画部門として加わったアンゾフは組織管理の分野に進出します。
そして、アンゾフがロッキードに移った年にハーバード・ビジネス・レビューで発表されたのが、アンゾフの成長マトリクスです。
4つの成長戦略
ここからは、アンゾフの成長マトリクスで表される4つの成長戦略を解説していきます。
市場浸透戦略(既存製品×既存市場)
市場浸透戦略は今までの市場に既存の製品・サービスを投入する戦略です。
具体的には、価格の引き下げや流通ネットワークの改善、マーケティングへの投資などによって、製品をより多く販売しようとします。
たとえばコカ・コーラは、多額の費用をマーケティングに費やして製品を市場に浸透させることで知られています。
他の戦略に比べると、ローリスク・ローリターンな戦略です。
新製品開発戦略(新規製品×既存市場)
新製品開発戦略は今までの市場に新しい製品・サービスを投入する戦略です。
既存の製品に関連した新製品やグレードアップモデルの販売などにより、既存顧客からの売上を増やすことを目標とします。
たとえば、30代の女性にヘアケアの商品を提供していた化粧品会社が、スキンケアの新商品を展開する場合は、この新製品開発戦略に当てはまります。
新市場開拓戦略(既存製品×新規市場)
新市場開拓戦略は既存の製品・サービスを新しい市場に投入する戦略です。
ある企業の製品が 1 つの市場で非常にうまくいっている場合、同じ製品で新しい市場に参入することを検討します。
既存製品の海外進出・海外展開や新たな顧客層の獲得などが該当します。
IKEA は母国スウェーデンと文化的に比較的近い市場への進出から開始し、それからアジア圏に進出する戦略を取りました。
多角化戦略(新規製品×新規市場)
多角化は新しい市場に新しい製品・サービスを投入する戦略です。
既存のビジネスとは異なる方法で収益を得ようとすることになるため、アンゾフは多角化戦略を最もハイリスク・ハイリターンの成長戦略としています。
多角化戦略は4つに分類されます。
水平型多角化
水平型多角化は、自社の技術やノウハウを活かした新商品で今までの市場と類似した市場に新規参入することです。
本田宗一郎のもと、バイク事業で成功した本田技研工業(ホンダ)が自動車事業へ進出したことは、水平型多角化の例として挙げられます。
自動車はバイクと同じではないものの、類似した部分が多く、ホンダが培ったノウハウが活かせる市場でした。
垂直型多角化
垂直型多角化は、今までの市場と似た市場(バリューチェーンの川上や川下)に新製品で新規参入することです。
たとえば、小売りイオンによる原材料の生産や製品の製造(プライベートブランド)は垂直型多角化に分類することができます。
集中型多角化
集中型多角化は、今までの技術・ノウハウと関連のある新製品で新しい市場に新規参入することです。
たとえば、体重計などの製品を展開していたタニタが設立したタニタ食堂や、スポーツゲームで有名なKONAMIのスポーツクラブは集中型多角化に該当します。
集成型多角化
集成型多角化とは、今までの技術やノウハウ、市場と全く関係のない事業に進出することです。たとえば、清掃サービスを展開するダスキンの飲食事業(ミスタードーナツ)は集成型多角化に該当します。
この集成型多角化は「非関連多角化」とも呼ばれ、他の3つの多角化(関連多角化)に比べ、ハイリスクとされています。
アンゾフの成長マトリクスのポイント
アンゾフの成長マトリクスのポイントは、製品と市場に分けて考えることで、自社の強みを再認識できることです。
市場の中で自分たちが築き上げた地位や自社だけが察知した市場の変化に対応して戦略を打ち立てるのか、それとも製品のノウハウを使って成長していくのかを、アンゾフの成長マトリクスを使って考えることができます。
成長戦略は定期的に見直すことも大切です。戦略の見直しの際もアンゾフの成長マトリクスを使えば、市場や製品に変化がでていないかを把握しやすくなります。