コールドスタンバイ、ウォームスタンバイ、ホットスタンバイとは何か?システムの復旧の仕方を解説

2020年12月11日

コールドスタンバイ、ウォームスタンバイ、ホットスタンバイの概要

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システムを復旧させる方法はいくつかありますが、コールドスタンバイウォームスタンバイホットスタンバイが有名です。
今回はコールドスタンバイ、ウォームスタンバイ、ホットスタンバイについて解説していきます。

コールドスタンバイ

コールドスタンバイはシステムの障害対策として、電源をオフにした状態の予備機を用意しておく方式です。段階的復旧とも呼ばれます。
必要になるまで電源をつけないため、3つの方式のうち最も維持費が安価です。

コールドスタンバイで予備のサーバーを用意する場合は、予備のサーバーに必要なデータや機材は用意されているものの、本番機と同じ設定がほとんどされていない状態です。本番機がダウンして初めて稼働させるため、アプリケーションのインストールや設定が必要になります。そのため、システムが復旧するまでに数日~数週間の時間がかかり、一時的なダウンタイムを要します。

このようにコールドスタンバイでは復旧に時間を必要とするため、復旧に時間がかかっても問題ないシステムに用いられます

ウォームスタンバイ

ウォームスタンバイとはシステムの障害対策として、起動させればすぐに稼働する予備機を用意しておく方式です。中間的復旧とも呼ばれます。
予備のパソコンやサーバーの電源はオフの状態ですが、バックアップを取得するなどして、本番機と同じデータを保有し、同じ設定がなされています。

本番機がダウンした後でアプリケーションを起動するなどの作業が発生するため、ホットスタンバイよりはシステムの復旧に時間がかかります。一般的に数分~数時間で予備機に切り替えることが可能ですので、コールドスタンバイよりは切り替えの時間はかかりません。

このように、コールド(冷たい)スタンバイとホット(熱い)スタンバイの中間に位置するため、ウォーム(あたたかい)スタンバイと呼ばれています。

ホットスタンバイ

ホットスタンバイとはシステムの障害対策として、電源をオンにした予備機を用意しておき、即時に切り替えができるようにする方式です。高速復旧即時的復旧とも呼ばれます。

政府や金融機関など、ごくわずかなダウンも許されない重要なシステムに用いられます。3つの方式のうち最もコストがかかりますが、障害時の損害が小さいのがメリットです。

予備機は本番機のデータがリアルタイムで同期されており、アプリケーションやOSなどもすべて本番機と同じ設定が入っています。本番機がダウンすると瞬時に予備機に切り替わるため、業務停止時間が最小限に抑えられます。

コールドスタンバイ、ウォームスタンバイ、ホットスタンバイの必要性

コールドスタンバイ、ウォームスタンバイ、ホットスタンバイは復旧の時だけでなく、サーバーやネットワークの「冗長化」にも用いられる手法です。

冗長化とは、ハードウェアが故障したりシステムに障害が発生したりといった事態に備え、同じ機能を持つ機器を2台以上用意しておくことです。
冗長化で耐障害性を高め、安全性が確保された状態を「冗長性がある」と言います。

現代ではビジネスとITシステムは密接な関係にあり、綿密なシステム構成や障害対策が必須になっています。システムが一時停止すると業務に影響するだけでなく、ユーザーの利用環境にも直接関わることが多いため、サービスの質や信頼の低下に繋がります。突然の自然災害や火災といった緊急時にも継続できる状態にしなければなりません。

そのため、冗長化によりできるだけシステムの停止時間を短縮し、安定したサービス提供を実現可能にするのです。

システムにアクセスが集中し、サーバーに大きな負荷がかかった場合にも冗長化が有効です。
複数のサーバーに負荷を分散するため、サーバーダウンを防ぎ、システムを円滑に稼働させられます。

冗長化のデメリットは、同じ機能をもつサーバーを複数台用意するので、コストがかかる点です。
そのため、どんなシステムにも行えばよいわけではなく、システムの重要性や緊急性を見極めたうえで導入する必要があります。

情報処理技術者試験でも頻出のテーマ

コールドスタンバイ、ウォームスタンバイ、ホットスタンバイの3つの手法は、IPAが運営する情報処理技術者試験でも頻出のテーマです。
例えば、平成31年度春の応用情報技術者試験では以下のような問題が出題されています。

ITIL 2011 editionによれば,ITサービス継続性管理における復旧オプションのうち,段階的復旧(コールド・スタンバイ)はどれか。

ア)遠隔地のデータセンタに機器を設置できる場所を確保しておき、災害時にはコンピュータ機器を設置し、ソフトウェアのセットアップやデータの復元を行って、ITサービスを復旧させる。
イ)遠隔地のデータセンタに本稼働システムと同一構成の機器を準備するとともに、本稼働システムのデータをバックアップしておき、災害時にはその遠隔地のデータセンタに切り替えてITサービスを復旧させる。
ウ)災害時のIT資源の相互利用について他の組織と合意しておき、災害時には他の組織のIT資源を利用してITサービスを復旧させる。
エ)同時に被災する可能性がほとんどない複数のデータセンタにシステムを分散して稼働させることによって、一部のデータセンタが被災しても顧客に対するサービスの深刻な停止を引き起こすことなく、ITサービスを即時に復旧させる。

応用情報技術者試験 平成31年度春午前問55

この問題の選択肢アは機器の設置や切り替えができる準備だけしているので、正解のコールドスタンバイに関する記述であることがわかります。
選択肢イはバックアップデータを取得するウォームスタンバイ、選択肢エは即座に切り替えられるようにするホットスタンバイであることがわかります(ウは障害復旧の手法とは関係ありません)。

補足:冗長化と二重化の違い

冗長化と混同しやすい用語に「二重化」があります。
二重化も機器やシステムなどの耐障害性や信頼性を高める手法の一つです。冗長化と異なるのは、「予備機が1つだけある」点です。予備機が2つ以上になると「冗長化」と呼ばれるようになります。

参考