JIS X 0160とは何か?

JIS X 0160とは

JIS X 0160とは大きなシステムの一部であるソフトウェアや単独のソフトウェア製品、ソフトウェアサービスに対して、包括的な一連のライフサイクルプロセス、アクティビティ及びタスクを規定する規格です。

日本版ISO/IEC 12207

JIS X 0160は国際標準化機構 (ISO) と国際電気標準会議 (IEC) の合同技術委員会 (JTC 1) が策定したISO/IEC 12207を基に、技術的内容と構成を変えることなく翻訳され、作成されたものです。

共通フレームの底本

このJIS X 0160は規格であるため、このままでは実際の業務に採り入れにくいものですが、これを情報処理推進機構(以下、IPA)が「共通フレーム」という形にまとめています。
実際にどのような手順を踏んでシステム開発を行えばよいのかを知りたい場合は、「共通フレーム」で学んでいったほうがよいでしょう。

JIS X 0160の目的

概要

JIS X 0160の目的は、ソフトウェア製品のライフサイクルにおける、取得者、供給者及び他の利害関係者の間で円滑にコミュニケーションを行う場合に必要な定義されたプロセスの集合を提供することだとされています。
ソフトウェア開発のプロジェクトは開発業者だけで話は完結せず、その開発を依頼した会社など、さまざまな人たちとコミュニケーションをとって進めなければなりません。
そのコミュニケーションを円滑に行うために、JIS X 0160で何をすべきかやそれぞれの用語を定めています。

用語の定義

例えば、このJIS X 0160を「ソフトウェアライフサイクルの規格」と一言で表すこともありますが、そもそも「ライフサイクル」という言葉の意味は何なのでしょうか。
JIS X 0160ではライフサイクルを以下のように定義しています。

ライフサイクル(life cycle)システム,製品,サービス,プロジェクト又は他の人工実体の,概念から廃止までの漸進的な変化

JIS X 0160:2012 ソフトウェアライフサイクルプロセス

このように用語を定めることで、プロジェクトに参加している人たちの間で「言葉の認識が違った」というトラブルが発生するのを防ぎます。

プロセスの定義

さらにJIS X 0160ではソフトウェアシステムのライフサイクルで実行するアクティビティを7つのプロセスグループに分けています。つまりソフトウェアの開発プロジェクトがどのような手順で進められるべきか、何をすべかを定義しています。
なお、JIS X 0160の定義によると、アクティビティとは「プロセスの構成要素で、関連の強いタスクの集合」のことであり、プロセスとは「インプットをアウトプットに変換する、相互に関連する又は相互に作用する一連の活動」のことを指します。

7つのプロセスグループ

ここからはJIS X 0160で紹介されている7つのプロセスグループについてより詳しく見ていきましょう。
7つのプロセスグループは以下の通りです。

  1. 合意プロセス
  2. 組織のプロジェクトイネーブリングプロセス
  3. プロジェクトプロセス
  4. テクニカルプロセス
  5. ソフトウェア実装プロセス
  6. ソフトウェア支援プロセス
  7. ソフトウェア再利用プロセス

以下、簡単に7つのプロセスグループの中身を見ていきましょう。

合意プロセス

合意プロセスでは、2つの組織の間の合意を確立するために必要なアクティビティを定義します。

組織のプロジェクトイネーブリングプロセス

組織のプロジェクトイネーブリングプロセスではプロジェクトの開始、支援及び制御によって、製品又はサービスを取得及び供給するための組織の能力を管理します。

プロジェクトプロセス

プロジェクトプロセスはさらに「プロジェクト管理プロセス」「プロジェクト支援プロセス」に分けられます。プロジェクト管理プロセスはプロジェクトの進捗を計画し、実行し、アセスメントし、制御するために使用されます。他方プロジェクト支援プロセスは、特化した管理目標を支援します。

テクニカルプロセス

テクニカルプロセスでは組織及びプロジェクトの担当部門が技術的な決定及び行動の結果生じる利益を最適化し、リスクを軽減できるようにするアクティビティを定義します。

ソフトウェア実装プロセス

ソフトウェア実装プロセスは、ソフトウェアの中に実装することになった、仕様で指定されたシステム要素(ソフトウェア品目)を作り出すのに使用されます。
このソフトウェア実装プロセスについては、以下の記事もご参照ください。

ソフトウェア支援プロセス

ソフトウェア支援プロセスでは、特化したソフトウェアプロセスを実行するためのアクティビティの特定の絞り込んだ集合を提供します。

ソフトウェア再利用プロセス

ソフトウェア再利用プロセスグループは、プロジェクトの境界を越えてソフトウェア品目を再利用する組織の能力を支援するプロセスです。

まとめ

今回はJIS X 0160について見てきました。
JIS X 0160はシステム開発の際にプロジェクト参加者が円滑にコミュニケーションをとるために、プロジェクトの進行手順や用語を定めたものです。
このJIS X 0160を読んで学ぶことも多いのですが、よりプロジェクトに照らし合わせて何ができるかを知りたければ、IPAが発行している「共通フレーム」を利用したほうがよいでしょう。