スニーカーネットとは何か?その採用理由と近年の事例を解説

スニーカーネットとは

スニーカーネット(Sneakernet)とは、複数のコンピュータ間のデータのやり取りを、ネットワークを介してではなく、人間が運ぶ外部記憶媒体を介して物理的に行う状態を指した用語です。

人間がデータを持ち運ぶ様子から「スニーカー(を履いた人を媒介にした)ネット(ワーク)」と呼ばれます。
通信ネットワークが整備されていないなどの理由から、ネットワーク上でデータのやり取りができない状況を揶揄する言葉として主に使われます。
スニーカーネットで使用する外部記憶媒体は、フロッピーディスク、MO、CD-R、DVD-R、USBフラッシュメモリ、ハードディスクなどです。

スニーカーネットの採用理由

通信ネットワークが整備された状況でも、次のような理由から敢えてスニーカーネットを利用することがあります。

インターネットへのアクセス状況

インターネットやその他のネットワークへアクセスできない状況下では、データのやり取りには外部記録媒体を使用します。

今日のように、どこでもインターネットに接続できる環境になる以前は、データを運ぶ手段が限られており、電子データを人が運ぶことは珍しくありませんでした。

データ転送の効率性

大容量のデータを転送する際、スニーカーネットはインターネットよりも効率的に転送できる場合があります。
オンライン上での転送には、アップロードとダウンロード両方に時間がかかります。
ダウンロードが終わるまでに数時間必要なデータでも、外部記録媒体にコピーして別のコンピュータに移動させれば数分で作業が完了します。

プロバイダーの帯域幅とデータ転送量規制

データの転送にかかる時間は、インターネットサービスプロバイダーの帯域幅によって決まります。
帯域幅が狭いと一度に送れるデータ量が少なく、通信速度は遅くなりデータの転送に時間がかかります。
また、一般的な大手インターネットサービスプロバイダーは、データ転送量の上り(アップロード)や下り(ダウンロード)に制限を設けているといわれています。
多くの場合、転送量規制は速度制限がかかります。
使用できる帯域幅が制限されるとデータ転送速度が遅くなります。
このような制限を避ける目的でスニーカーネットは選択されています。

セキュリティ

スニーカーネットは、非常に機密性の高いデータを安全に転送する際の手段として使用されます。
ネットワーク上には第三者にデータの内容を傍受される危険性が潜んでいます。
スニーカーネットでデータを手渡しすることで、データを傍受されるリスクを回避できます。

スニーカーネットの問題点

一見、人がデータを運ぶスニーカーネットは、盗聴やハッキングの心配がないため、セキュリティが高いように見えます。しかし、スニーカーネットにもセキュリティ上の問題点はあります。

たとえばデータを保存したUSBフラッシュメモリなどを紛失してしまい、情報漏洩に発展する事件が起きています。
そのため、機密情報や個人情報をスニーカーネットで扱う際には細心の注意を払う必要があります。

スニーカーネットを使用した具体例

南アフリカUnlimited ITの伝書鳩

2009年9月、南アフリカのIT企業である Unlimited ITは80km離れた場所へデータを転送するために伝書鳩を使い、国内のインターネット回線との速さを比較しました。
伝書鳩は1時間8分で到着し、鳩の脚に着けられていたデータカードからデータを転送するのに1時間かかりました。
同じ2時間の間に国内通信大手のテルコムを使って転送されたデータ量は全体の約4% で、伝書鳩の方が速い結果となりました。

SETI@homeプロジェクト

SETI@homeはカリフォルニア大学バークレー校 Space Sciences Laboratory が運営していたボランティア・コンピューティングプロジェクトです。
SETI(Search for Extra-Terrestrial Intelligence:地球外知的生命体探査)では、プエルトリコのアレシボ天文台にある電波望遠鏡で記録されたデータを磁気テープに保存して、カリフォルニア州バークレーのSETI@homeの施設に郵送しました。
大容量のデータのため帯域幅の制限がかかる可能性がありましたが、郵送することで問題を克服しました。

参考