コントロール幻想(人間の迷信的行動)とは何か?迷信に騙される人の心理
コントロール幻想とは
ジェンキンスとウォードの研究から
コントロール幻想とは、心理学用語で、「自分でコントロールできないことを、自分の行いで影響を与えられると錯覚してしまう」現象です。この現象は「人間の迷信的行動」と呼ばれることもあります。
この現象については、ジェンキンスとウォードの2人の研究者が、1965年にスイッチの実験によって証明しました[1]Ward, W. & Jenkins, J. (1965) The display of information and the judgment of contingency. Canadian Journal of Psychology, 19, 231-241.。
この実験は、スイッチと電球を用意し、スイッチを押した時に被験者に電球がつくタイミングを当ててもらうという単純な内容でした。
実際は電球がつくタイミングは、実験を行った研究者が設定していて、スイッチと連動する時もあればしない時もありました。
しかし、被験者は少しタイミングがずれたとしても、電球がついたのは自分がスイッチを押したからだ、と思っていました。
この実験から、ジェンキンスとウォードは人間がコントロール幻想を持つことに気が付きました。
コントロール幻想のさまざまな事例
カジノの事例
ジェンキンスとウォードの実験以外にも、コントロール幻想の事例は多く存在します。たとえば、カジノの事例もその1つです。
カジノなどでサイコロを振る時、大きな目を出したいと思うと強くサイコロを振り、小さな目を出したいと思うとそっと転がすといったことが、よくあるそうです。
強く振ろうがそっと振ろうが目の出る確率は6つとも同じですが、なぜか人はそのようにしてしまいます。
宝くじの事例
他にも宝くじを買う時に、高額当選が出たと大きく宣伝している売り場で買いたいと思うことがあります。本来はどこの売り場でも当選確率は同じですが、高額当選が出た実績のある売り場の方が、当たりやすいのではないかと錯覚した結果です。
験を担いだり、ジンクスを信じたりするのもこれに似たようなものがあります。
コントロール幻想の利用
このようにコントロール幻想は、誤った判断を人にさせることがありますが、それを活用することもできます。
アメリカでは、横断歩道の横に機能しないボタンがついている信号機があるそうです。
機能しないのにボタンを設けている理由は、信号待ちをしている人に「ボタンを押せば信号が変わる」と錯覚させるためです。
横断歩道を渡りたい人たちは、自分がボタンを押すことで信号が変わると信じているので、次に信号が変わった時に「自分がボタンを押したから変わった」と思います。すると不思議なことに、待ち時間のストレスが減少したとの実験結果が出ています。
コントロール幻想があることを知る
このようにコントロール幻想は人の判断や、気持ちまで変えてしまいます。そのため、まずは「コントロール幻想がある」と知っておくことが大事です。知っていれば、誤った判断をする前に少し立ち止まって考えることができます。感情だけでなく、確率や数字もきちんと踏まえた判断をしましょう。
参考
- ロルフ・ドベリ(著)、中村智子(訳)『なぜ、間違えたのか? 』サンマーク出版、2013年
- 津田泰弘、嶋崎恒雄、今田寛「随伴性の判断 : I: 随伴性の概念と実験事態の分類」『人文論究』38巻2号(1988年)、47-66頁
注
↑1 | Ward, W. & Jenkins, J. (1965) The display of information and the judgment of contingency. Canadian Journal of Psychology, 19, 231-241. |
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