鉄道のパラドックスとは何か?マーケット調査の失敗要因
鉄道のパラドックスの解説
鉄道のパラドックスとは、潜在的ユーザーが使用しないことを理由に、要求を否定してしまうという調査の失敗を意味しています。
潜在的ユーザーとは、今は必須ではないがそれがあれば利用するという、潜在的なユーザーのことを指します。
これはソフトウェア開発の社会学者と呼ばれるG.M.ワインバーグの本に出てくるたとえ話です。
ある駅に電車が停車する回数を増やしてほしいという要求が客からあったとします。
鉄道会社は客の声をもとに調査をはじめますが、要望されている時刻に駅へ行っても、客は誰もいません。
時刻表に載っていない時刻に駅に行っても、客が誰もいないのは当然ですが、鉄道会社は需要がないと思い、要求を却下しました。
このように、要求があった時点で調査をしたとしてもユーザーがいないにもかかわらず、ユーザーがいないことを理由に要求を却下する調査の誤りを鉄道のパラドックスと呼びます。
再度この話を整理すると以下のようになります[1]D.C. ゴーズ(著)、G.M. … Continue reading。
- 製品は不満足である
- そのため、潜在的ユーザーはその製品を使用しない
- 潜在的ユーザーはもっと良い製品をもとめる
- しかし、潜在的ユーザーが使用しないことを理由に、要求は否定される
マーケット調査や要件定義などでは、この鉄道のパラドックスに陥らないようにしなければなりません。
注
↑1 | D.C. ゴーズ(著)、G.M. ワインバーグ(著)、黒田純一郎(監訳)、栁川志津子(訳)『要求仕様の探検学―設計に先立つ品質の作り込み』共立出版、1993年、79頁。 |
---|