製造物責任法(PL法)とは何か?適用されるケースや対象外のものなどを解説
製造物責任法とは
製造物責任法とは、製造物の欠陥により、人の生命、身体または財産にかかわる被害が生じた場合、その製造業者などが損害賠償の責任を負うとする法律です。
別名では、Product(製造物)のPと、Liability(責任)のLの頭文字をとり、PL法とも呼ばれています。
製造物責任法が適用されるケースとは
ここでは、製造物責任法はどんな時に使われる法律なのか、例を交えて、解説していきます。
たとえば、あなたが新しいスマートフォンを買ってきたとします。
しかしそのスマートフォンには欠陥があり、その欠陥のせいで何か被害を受けてしまったとします。そして、今回買ったスマートフォンのバッテリーが、熱くなって急に発火したとしましょう。
この発火のせいで、以下のような被害が起きたとします。
- 「身体にかかわる被害」として、やけどを負ってしまった
- 「財産にかかわる被害」として、家が火事になってしまった
- 「人の生命にかかわる被害」として、火事によって死んでしまった
そんな時の損害賠償について、製造業者などが負う責任を規定したのがこの「製造物責任法」です。
製造物責任法では、このように製造物の欠陥による損害が生じた場合、被害者が製造業者に対して損害賠償を請求することができると定めています。
製造物責任法の対象となる物、対象にならない物
製造物責任法では製造物とは「製造又は加工された動産」と定義しています。
つまり、以下のようなものは、製造物責任法の対象にはなりません。
- 土地などの不動産
- 電気、ソフトウェアやデータ、プログラムなど、手で触れる「形」がないもの
- 未加工の農林畜水産物
すなわち、これら対象外の物の欠陥によって何か損害を受けても、製造物責任法による損害賠償は請求することはできません。
プログラムが組み込まれた機器は対象になる
前述の通り、「ソフトウェアやデータ、プログラムなどは製造物責任法の対象外」です。
ただし、欠陥を持ったプログラムやソフトウェア、データを組み込んだ機器については、動産である機器に欠陥があるものとして扱われ、製造物責任法の対象となります。
つまり、プログラムに欠陥があり、そのプログラムが組み込まれた機器によって損害が出た場合は、機器の製造業者は損害賠償責任を負うことになります。
「製造業者など」とは
製造物責任法では、「製造業者など」とは以下の3つにあたると定義しています。
- 製造物を業として製造、加工又は輸入した者
- 自ら製造業者として製造物にその氏名等の表示をした者又は製造物にその製造業者と誤認させるような表示をした者
- 実質的な製造業者と認めることができる表示をした者
もし、外注で作られた部品が原因で製品の欠陥が起きた場合、製品を買って被害を受けた人に対して損害賠償の責任を負うのは、外注で部品を作った業者ではなく、上記3つにあたるその製品のメーカーとなります。
製造物責任法の適用範囲
製造物責任法に基づいて損害賠償請求をするには、「製造物の欠陥により損害が生じたこと」を証明する必要があります。
「買ったばかりのスマホが動かない!」など、ただ単に「製品が故障した」「不良品を買ってしまった」といったいわゆる「不具合」は、製造物責任法の適用範囲には入りません。
「生命、身体または財産にかかわる被害」が生じていないと、製造物責任法は適用されません。
製造物責任法の免責事由
欠陥によって被害が発生した場合でも、次のケースに該当すれば、製造業者等は賠償責任を免れることができます。
- 製造物を引き渡した時点における科学・技術知識の水準では、欠陥があることを認識できなかった場合
- 当該製造物が他の製造物の部品や原材料として使われた時に、その欠陥が他の製造物の製造業者の製造業者が行った設計に関する指示のみに起因し、自身に過失がなかった場合
製造物責任法の時効
製造物責任法の時効は、消費者側が損害を受けてから3年、または、製造業者が製造物を引き渡した時から10年です。この期間は中古品であっても、製造業者は自身の製造物に対して責任を負います。
この時効を過ぎると、製造物責任法による損害賠償の請求はできなくなるので注意してください。
もし製造物責任法に該当しそうな事故にあったら
万が一、製造物責任法に該当しそうな損害が起きた時は、以下のような対応をしておくと安心です。
- 損害の原因となった製品や周囲の様子を写真や動画に撮っておく
- 病院でケガの治療をした場合は、領収書や診断書をとっておく
- 損害の原因となった製品を製造業者や警察・消防署などに渡す時は、預かり証をもらう
まとめ
この記事では製造物責任法について解説しました。
- 製造物責任法とは、製造物の欠陥により、生命、身体、財産にかかわる被害が生じた場合に、製造業者が責任を負うとする法律
- ソフトウェアやデータ、プログラムなど、形がないものは製造物責任法の対象外
- 欠陥を持ったプログラムを組み込んだ機器などは、動産である機器に欠陥があるものとして製造物責任法の対象になる
- 製造物責任法に基づいて損害賠償請求をするには、「製造物の欠陥により損害が生じたこと」を証明する必要がある